ルノー新体制で日産との経営統合へまっしぐらか

2019年01月26日 11:30

ルノーはカルロス・ゴーンの会長および最高経営責任者(CEO)辞任を受け、ジャンドミニク・スナール(65)を会長、ティエリー・ボロレ(55)をCEOに指名したと24日発表した。

スナール新会長(左)とボロレ新CEO(ルノープレスリリース:編集部)

ルノーの会長になったスナールは、パリ郊外の高級住宅地ヌイーイ生まれの外交官(エジプト、オランダ、イタリア大使)の息子で貴族。HEC(パリ高等商業学院。ビジネススクールで、日本における慶應大学の経済学部か一橋大学といったところ)の出身。トタルの関連会社、サンゴバン、ペシネー、ミシュランで勤務。あたりはソフトだがかなりの辣腕で西川社長にとって楽な相手のはずなし。ゴーンよりやりにくいと思う。ティエリー・ボロレは、ミシュラン出身で日本駐在経験もある。

ゴーン排除に西川社長らが動いたのは、マクロン大統領から経営統合を指示され、それをゴーンが呑んだからだといわれる。しかし、そういう報道そのものが歪曲されたものだ。マクロンがゴーンに出した宿題は、ゴーンが自分がいなくなったらルノー・日産・三菱グループが立ちゆかなくなるような経営をしていたので、3社連合をゴーンがいなくても安定的に継続できるようにすることと、後継者を育てることでしごくもっともなことだった。

その方法は、ルノーの完全子会社にする方法もあるが、普通には持ち株会社をつくってその下にぶら下げることが考えられる。あとは、その持ち株会社の運営についての条件闘争だろう。

いずれにしても、今回のクーデター騒ぎで、日産の日本人役員は検察と組んでまで枠組みを変えようとしかねないことを示してしまった。ゴーンを排除するだけなら、ただちに代わりの会長の派遣を要請するのが筋だ。

すでにフランス政府から幹部が来日して経営統合について経済産業省に意向を説明したと伝えられている。
しばしば、ルノーの持ち株比率の43%について少数株主であるようなイメージを与える報道があって、日本側57%と誤解した議論をする人がいる。しかし、非上場会社で数社で株式をもって日本企業連合を組んでるのと間違っている。上場会社で43%の株主に対するクーデターが成功する可能性はあるのか。

2位はチェース・マンハッタン銀行が3.4%、そして日本マスタートラスト信託銀行が3.2%である。おそらく外国人株主比率は50%を遥かに超している。株主総会で日産の社長側が43%を超える株主を掌握できるとは考えにくいし、それどころが三分の一も確保できるのも怪しい。日本人役員総排除だってありうる話だ。

「日産は日本人のもの」的な考え方は何ら根拠がない。自分の生まれた家を経済的に苦しいときにようやく買ってくれる人をみつけて売っておいて、相手の意向と関係なく、もともと本来の持ち主である自分が取り戻すとかいってるようなものだ。

日産が業績回復したといっても、ゴーンの経営が上手だったのが主因で、日本人が優れていたからともいえない。
日産側にさまざまな奇策を行使する余地があるようにいう人もいるが、それはルノー側にもある。どっちにしても、少数派が勝つために司法と結託して「江川の空白の24時間」的な手法で活路を開きたいのかもしれないが、日本経済への信頼を地に落とすことになるからやらしてはいけないことだ。そんなことしたら日本の株を買う人がなくなってしまう。

私は政府はフランス政府が話し合いをしようといっているのだから、それを受けるべきだと思う。民間に任しておくということは、法律で認められた権利を使って仁義なき戦いをすることだが、そこでは、ウィンウィンの関係をつくることは難しく勝ちと負けしかないことになりかねないし、基本的には43%持っている側が強い。

ただ、その場合に、日産がさまざまな意味で企業としての価値を失いかねないから、それはルノーにとっても困ったことになるから、フランス側は話し合いを求めているのであるから、それを断って何のメリットがあるのか分からない。

今回の西川社長らの“汚い”やり方は、ルノーに対しても市場に対しても信頼は失われているので、話し合いの当事者として適切とは思えない。ルノー側は西川社長ら日本人役員をゴーンの共犯として追及するのも当然だ。民事上の責任は司法取引しても逃げられないという弱みもある。

西川社長が仕事をそっちのけにしてゴーンとの権力闘争を有利に進めるために社内の人的資源を消費したり、おそらく法律事務所に莫大な支払いをしていることが最大株主であるルノーにとって容認できるものであるはずもない。

両者の話し合いで何が話しあわれるべきかだが、たとえば、持ち株会社の人事や意思決定について日産側の意向が反映されるようにすること、日本での生産や雇用の維持の保証、独自ブランドの維持とかがありそうだ。

ルノー側とすれば、クーデター騒ぎの可能性を根絶することや、そもそもゴーンの「不正行為」に荷担し共犯関係にある西川社長らの退陣、ブランドの統合(ルノー・ニッサンに統一するなど)、フランスでの生産拡大(イギリスのEU離脱を受けて英国での生産を縮小することに日産としても合理的な理由もある。そもそもゴーンがルノーの影響力がおおきくなるのを嫌ってイギリスでの新たな投資を進めるなどしたのは個人的動機も大きかった)などがあるだろう。

それらは、双方にとってメリットがある。いい加減、権力闘争をやめないと、つまるところは、そろって中国に身売りでもする羽目になるのがおちだ。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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