バロンズ:「失われた富を求めて」、民主党の格差縮小案で米株に打撃も

2019年01月29日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは気候変動による経済的なインパクトを取り上げる。製薬大手メルクのクレイグ・ケネディ氏が2012年に世界のサプライチェーン部門のシニア・バイス・プレジデントに就任してから、台風や干ばつなど災害に対応してきた。

例えば、ハリケーン”マリア”がプエルトリコを2017年に直撃した当時、メルクのコレステロール低下剤”アトーゼット”や抗がん剤”テモダール”は同地で生産されていた。しかし、当時のハリケーンによる被害は凄まじく、ケネディ氏はシンガポールでのサプライチェーン再構築にいそしまなければならなかった。科学者によれば、このような気候変動に伴う天災は、増加の一途をたどる見通しだ。では、企業はどのように対応できるのか、あるいはどのような対策を講じてきたのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測している名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は民主党議員による格差縮小案に焦点をあてる。抄訳は、以下の通り。

富裕層に税負担拡大を求めて—The Push to Tax the Rich.

「金持ちがいなくなるまで、彼らから税金を取って貧しい者を養え」とは、1971年に英国人歌手アルビン・リーがリリースしたブルース”I’d Love to Change The World.”の歌詞の一部である。2020年の米大統領選で、民主党候補の公約はこのようなメッセージとなるかもしれない。

女性として最年少で下院議員に当選しソーシャルメディアでも大人気を博した民主党議員のアレクサンドラ・オカシオ—コルテス氏は、年収1,000万ドル以上の富裕層に最大70%の所得税を課すべきと提唱した。2020年の米大統領選に出馬表明済みのエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)は、5,000万ドル以上の資産を保有する富裕層に2%10億ドル以上の資産を保有する富裕層に3%の富裕税を課す方針を提示した。

富裕層をターゲットにした所得税引き上げや富裕税の導入は、歳入拡大の手段であり、格差縮小をもたらす枠組みと言えよう。ウォーレン上院議員の案が実現すれば、富裕税の歳入は10年間で2.75兆ドルと試算とされている。足元、富裕層がかつてないほど豊かになっている時代であるだけに、格差縮小を実現する目的で狙われやすい対象だ。他にも、シンクタンクなどが同様の考えを表明済みである。

中間層の所得、仮に所得格差が生じていなければ現水準を大幅に上回る可能性も。

作成:My Big Apple NY

ホワイトハウスと米議会が政府機関閉鎖解除のためのつなぎ予算で妥結する以前、7億ドル相当の資産を有するロス商務長官は、24日のCNBCインタビューで無給を余儀なくされている政府職員に借入で賄うべきと助言した。

米国では、小額でも突然の出費への対応が困難な労働者が数多く存在する。米連邦準備制度理事会(FRB)によれば、10人のうち4人の米国人は400億ドルの緊急出費に対応できないと回答していた。また、実際にそのような出費に直面した米国人のうち58%がロス長官の助言通りクレジットカードや給与の前借り、預金残高を超過しての引き出しなどに頼ったという。トランプ大統領は、連邦職員にIDなどで連邦職員である事実を証明した上で後払いを交渉すべきと主張したが、そのような光景はみたことがない。

オカシオ—コルテス下院議員やウォーレン上院議員の政策案を実現するには、ホワイトハウスと上下院を制する必要があり、可能性は低い。しかし共和党のウィリアム・ロス上院議員とジャック・ケンプ下院議員によって、レーガン政権下の1981年にケンプ=ロス減税法案を通じ富裕層の高所得税が引き下げられ、サプライサイド経済学に基づくレーガノミクスの土台を築いた。民主党の提案はケンプ=ロス減税法案の反対をいくものだが。

ゴールドマン・サックス(GS)のリサーチ・チームによれば、富みと支出をめぐり、米株相場と相関性が強い層は富裕層寄り中高所得者層(上位11〜50%)だ。資産効果やトリクルダウンなど、通説とは異なるが、どういうことなのだろうか?GSによれば、米国富裕層の上位0.1%は米株の持ち株比率は17%で、上位1%は50%にあたる。1980年代では上位0.1%の米株の持ち株率は13%、上位1%は39%だった。

所得に対し、家計の米株持ち株比率は3倍に膨らんだ。結果、上位10%にとって、米株相場の1%下落は1980年代より3倍大きいことになる。中高所得者層にとっても同然であり、2018年9月の最高値から2019年1月15日までに11%下落した米株相場を受け、GSは2019年の実質国内総生産(GDP)を0.5%押し下げると見込む。

仮にウォーレン大統領が誕生し、富裕税が導入されればどうなるだろう?3,000万ドルの税金(10億ドル以上の資産を保有する場合の富裕税は3%)を支払う富裕層も存在するだろうが、多くはマンハッタンの億ションやパームビーチの別荘より、株式や債券などの金融資産を売却するのではないか。

富裕層への所得税を70%へ引き上げる案はフランスが前例を示したように、富裕層の国外脱出につながる公算は小さほか、むしろ財政面で奏功する可能性がある。その一方で、資産価格にはネガティブな影響を与え、支出と実質GDP成長率を押し下げかねない。2020年の米大統領選では、一連の経済政策にスポットライトがあたるのだろう。アルビン・リーの”I’d Love to Change The World.”の歌詞に立ち返るなら、「世界を変えたいけれど方法が分からないから、君たちに任せるよ」といったところか。


オカシオ−コルテス下院議員やウォーレン上院議員の格差縮小案はさておき、ウォーレン上院議員が自社株買いを制限する案を提示していたことを覚えていらっしゃるでしょうか?さらに、民主党によるインフラ計画は法人税減税の変更すなわち法人税引き上げが含まれていました。民主党から飛び出す政策案は金融市場にネガティブな内容が並ぶだけに、2020年に予定する米大統領選にかけ、米株相場には米中通商協議や政府機関の閉鎖以外に、もうひとつの確実性に直面していると言わざるをえません。

(カバー写真:AFGE/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年1月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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