施政方針演説と厚労省統計不適切調査

平成最後の通常国会が始まり、安倍首相が例年の施政方針演説を行いました。安倍首相にとって余計な話と思わせたのが厚労省の統計不適切調査でしょう。毎年、常に何か野党に突っ込まれるネタが出てきて防戦をしなくてはいけないことに内心いら立ちを感じていることでしょう。思い出せば2012年末に政権が出来て一年目は閣僚の不祥事もなく緊張感一杯だったのにさすが、6年を超えて来た今、三歩前進二歩後退という感が否めないわけでもありません。

施政方針演説を行う安倍総理(官邸サイトより:編集部)

さて、施政方針演説は今年の目標のようなものですので2019年政治のサマリーのようなものと考えれば良いのでしょうか?

首相が最重点を掲げているように見えるのが消費税引き上げとその対策であります。今回の引き上げに関して安倍首相は並々ならぬ「対策」を打ち立て、反対のボイスを最小限に食い止めるよう努力しているように見えます。世論調査でも賛成と反対が拮抗する水準で今のところ、「世間受け」は悪くないようです。

ただ、首相は本心としては引き上げは嫌な関門だと考えている節はあります。かつて「同じ政権で2度も上げたことはない」と発言していますが、首相を6年以上もやった人も近年いないのですからそれは理由になりません。一方でバラマキ的な対策を見る限り、リーマンショック級の経済変動が起きた場合、延期をしやすい理由にもなると感じています。

軽減税率の方式については日本人のきちんとした性格があだになり正直、複雑すぎます。表現は悪いですが、日本人は1円単位まできっちり計算する性格。でも消費税ほどの税収なら億単位で四捨五入してもほぼ同じ結果が出ます。つまり、無意味に省庁の言い分を聞きすぎたと思います。

次に頭を下げることになった厚労省の毎月勤労統計の不適切問題ですが、発覚から1カ月以上、私も一度もこのブログで触れることがなかったのは問題の本質が「よくわからない」のであります。問題の発端は2004年で東京都分の調査において500人以上の事業所の全部調査が「大変だから」として抽出検査方法に変えたことがきっかけとなっています。

ただ、厚労省側と東京都側でそのようなやり取りがあったのか、について小池都知事は「証拠はない」と東京都職員をかばっていますが、これは証拠が出てくると思います。全部調査はとてもできないので抽出にするといった話がどこか別のケースだったと思いますが、小さなニュースになった記憶が私にはあり、その流れを汲んだような気がします。

そもそも全部調査の意味がどこまであるのか、という点もどうせなら検討すべきでしょう。勝手にルールを変えたのは勿論駄目ですが、全部調査が今の時代のニーズに合っているのか、あるいは調査方法をなにか、簡便にする手段はないのかという議論がもっと必要で野党の成果を生まない批判攻勢はやめてもらいたいと思います。

施政方針演説でそれ以外に注目しているが日中関係は完全に正常化した、と断言したことでしょう。これは個人的にも重要だと思います。それゆえに対韓国には厳しい姿勢を貫ける体制が出来たといってもよいと思います。

最後にロシアとの北方領土問題についてはプーチン氏と今年もあと数回は国際会議なども含め、交渉する機会があると思いますが、5月に新しい日本の時代を幕開けする打ち上げ花火の一つになる気がします。つまり何らかの交渉がまとまる可能性はかつてなく高まっているように思えます。

世界の主要国の指導者は今、自国問題で精いっぱいとなる中で安倍首相は今までの集大成としてその存在感をアピールし、強力な指導力を内外で見せてもらいたいものです。ダボス会議での講演は失敗と評されています。全く話題にならなかった点において首相の賞味期限と揶揄されないよう重要な2019年を乗り切ってもらいたいものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月29日の記事より転載させていただきました。