国の統計、国民投票テレビCMなど

2019年02月01日 19:00

石破 茂 です。

統計を表す英語Statistickの語源はState(国家)と同源のラテン語であることを不勉強ながら今回初めて知りました。
厚労省の毎月勤労統計問題は決して矮小化することなく、場合によっては関連法の改正も含めて改善策を早急に立案し、実現することが日本国にとって急務です。

厚生労働省(編集部撮影)

猪瀬直樹氏の著作「昭和16年夏の敗戦」にあるように、統計を軽視し、国策を誤り、多くの犠牲を生ぜしめ国土が灰塵と帰したことに対する深い反省から、吉田茂総理はマルクス経済学者の大内兵衛に命じて統計法の基礎を作らせたと伝えられています。

今回の問題の背景には、各省庁がバラバラに統計を行い、人員を大幅に削減してきたことがあります。2004年の「骨太の方針」において「農林水産統計などに偏った要員配置等を含めて、既存の統計を抜本的に見直す。

一方、真に必要な分野を重点的に整備し、統計精度を充実させる」と定められたことを受け、農水・厚労・国交・文科等の統計要員が大幅に削減され、内閣府・警察庁・総務省などが増員されたのですが、「真に必要な分野」とは一体何であったのか、要員の削減によって現場の負担が増して精度が低下することはなかったのか、単なるスキャンダル追及に堕することなく、これらの点について徹底した検証をすることこそ国会の使命です。

賃金や労働時間を全数調査しなければならないにも拘らず、勝手に2004年からサンプル調査に切り替え、全体を把握するための補正作業を行わず、このミスに気付いた後、2018年からのものだけを発表したため、2018年に突如として賃金が急上昇したように見える結果となったのは実に不可解です。

日本の統計要員はカナダの十分の一、フランスの六分の一、米英の三分の一とも報ぜられていますが、これも今回の事案が明らかになるまで知りませんでした。「統計を疎かにする国は滅びる」。己の不勉強を恥じております。

今週の自民党憲法改正推進本部で議題の一つとなった憲法改正国民投票の際のメディアによる広報活動、特にテレビCMの取り扱いについては、私は全面的に容認することなく、賛成派も反対派も同じように取り扱うべきだとの立場です。広告料が欲しいテレビ、権力の支援を必要とする財界、意図する憲法改正を実現したい権力が一体となれば、有権者に対して圧倒的な影響力を行使することが可能となります。大手広告代理店と契約して人気番組の前後のCM枠を確保し、人気タレントを起用すればその効果は絶大です。

そもそも15秒から最長で30秒という短時間のテレビCMで憲法の当該条項を改正する意味が正確に伝わるとはとても思えません。憲法改正はあくまで理性で判断すべきものであり、感性や情緒に訴えれば本質が見失われてしまう危険が大きい。テレビ、特に地上波の持つ依然として強い影響力を年末年始にいくつかの番組に出演してみて痛感させられました。

私は一貫して、憲法第9条第2項を改正し、「必要最小限度なので戦力ではなく、したがって陸・海・空軍ではない。必要最小限度なので交戦権には当たらない」などという世界に全く通用しない天動説的な誤魔化しをやめるべき、との立場です。確かにこれは感性による訴えに馴染むものではありませんが、むしろ論理を超越して感性に訴える手法は、国民を愚弄し、政治の責任を放棄するものだとの思いを禁じ得ません。

発議するのは国会なのですから、その構成員である国会議員がそれぞれの地区で「憲法改正国民投票管理委員会」(仮称)が開催する公開討論会に参加し(衆参共に発議内容に一方の立場の議員がいない選挙区は他選挙区や比例区の議員が参加する)、これをテレビやインターネットで紹介することは技術的に可能なのではないでしょうか。発議する国会の構成員たる国会議員が憲法について語れないなどということがあってよいはずがありません。

最大の難点は、互いを平等に扱うルールを確立し、司会進行役に人を得なければ失敗することは明らかなことで、ここは頭の痛いところですが、もう少し考えてみたいと思います。権力・財界・メディアが一体となったとき、民主主義などあっという間に崩壊してしまうことの恐ろしさは歴史が証明するところです。

国会閉会中、JR各社の新幹線に乗る機会が多かったのですが、JR東海の新幹線内の車内放送は何故日本語と英語だけなのか、とても気になります。他社は中国語や韓国語の案内も併せて行っており、インバウンドが急増する中にあって最も来日客が多い台湾・中国・韓国の英語を解さない人に対してもっと親切であってもよいのではないでしょうか。放送時間が長くなる、耳障りである、というのなら電光表示で簡潔に案内すればよいのではないかと思うのです。

駅の改札口でも、自動改札を利用できないパスしか持っていない外国人が、一つしかない有人改札口に列をなして混乱している場面も何度か見かけましたが、これも早急に改善すべきです。

外国の交通機関で日本語の案内がないことは事実ですが、だからといって日本もそれでよいということにはなりません。訪日客が日本を好きになってくれることも日本の主張の正しさを世界に広める国家戦略の一つなのではないでしょうか。

1月20日の毎日新聞朝刊の「時代の風」に、藻谷浩介氏が昨年の訪日外国人を人口比で分析し(香港が3人に1人、台湾が5人に1人、韓国が7人に1人、オーストラリアが45人に1人、タイが61人に1人、中国が169人に1人、アメリカが214人に1人来日)、

「精神的に鎖国した日本人が増えていないか。外国の事情を肌で知ろうともせず、空想の世界観の中で『日本は』『日本人は』と言い募る。他者に匿名で罵詈雑言を浴びせることは、相手が誰であるかを問わず大人として恥ずかしい行為だ、という認識がない。目先の儲けや人気取りのために他者への恐怖や敵愾心を煽る輩に対抗するには、感情抜きに事実を事実として確認し、その上で冷静に考える習慣を持つ人間を増やすしかない」

と論じておられますが、まさしく然りと思います。

千葉県野田市の児童、心愛(みあ)ちゃん虐待死事件は、昨年の結愛(ゆうあ)ちゃん事件の教訓が全く生きていないことを証明する結果となりました。政府としても新年度予算で児童相談所の体制を大幅に強化するなどの対策を講じようとしているのですが、全国的に緊急に実態を調査するなどの対応が必要です。

貧困・未熟な親・地域社会からの孤立・ステップファミリーなど虐待の背景はいくつか指摘されていますが、一番の要因は地域社会からの孤立である、と先日米子市で対談した毎日新聞の野沢編集委員が述べておられました。

結愛ちゃんといい、心愛ちゃんといい、「愛」の字を名前に付けるからには、生まれたときに親にもそれなりの願いがあったのでしょう。なんとも胸が塞がれる思いです。

いささか長文となり失礼致しました。週末は自民党鳥取県連会長として県内各地で開催される自民党や公明党の諸会合に出席の予定です。今日から2月、まだまだ寒さが続きます。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2019年2月1日の記事を転載させていただきました(タイトルは編集部改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。

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石破 茂
衆議院議員(鳥取1区、自由民主党)、

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