地方議員こそ憲法改正に取り組むべき5つの理由

吉岡 慶太

東京都北区議会議員(無所属)の吉岡けいたです。

あえて言わせていただきます。「区議会議員こそ、憲法改正を考え、時代に合った改正について区政活動の中で取り組むべきだ」と。

今から5年前、2014年に自身が初めて北区議会本会議を傍聴した時、ある違和感を覚えました。

ある会派の区議が

「平和都市宣言をしている北区は憲法を守り、子供たちを絶対に戦争に行かしてはいけない。」

「戦争法案を許すな。憲法9条を守ると北区長は今こそ国に訴え、戦後70年続いた日本の平和を守ること宣言をして欲しい。」

と議会で質問したのです。

傍聴して感じた違和感とは下記内容です。

「憲法9条を守ることと北区政がどう関係があるのか?」

「国政の話であり、政党の主義主張を地方議会の中でぶつけるのは有権者の理解が得られないのでは?」

この時は、もし、自身が地方議員になれたら国政政策を地方議会で論議するようなことをできない議会改革をすべきだと強く感じました。

しかし、それから4年が過ぎ、自身の考え方が変わりました。

憲法改正については国政テーマであり、かつ地方議会、区民生活に深く関係し、この問題に目を背けてはいけないと変わったのです。

「地方議員(区議会議員)こそ憲法改正について考え取り組むべき理由とは?」

5つの理由をお伝えします。

1. 憲法改正により「自立できる地方自治体の形」を規定すべき

統治機構の改革があって、今の地方創生の推進がされると考えた場合、今の憲法では4つの抽象的な条文で地方自治の基本原則が定められていません。そもそも「地方自治の本旨に基づき」という表現は曖昧であり、国と地方の権限と役割について明確な規定がありません。

つまり、地方自治、地方議会と財政など地方自治に関することは法律で規定するということしか憲法で定めがなく、地方自治体の自立、自主性、責任についての規定がないという点で不十分です。

憲法に「団体自治、住民自治」の規定があれば、地域住民の権利と義務が明確となり、国からの補助金頼み・財政支援依存の地方自治体体質が改善できるはずです。

市税などの自主財源が少ない地方自治体において、地方交付税、国庫支出金など依存財源が7割を超える場合もあります。助成金頼みで自立を阻む統治機構があるのであれば、地域活性化に向けたリセットの仕組みを地方議員が地域活動の中で考えるべきではないでしょうか。

そのために、憲法改正として地方自治の在り方、規定を改正、追加することについて地方議会から声を上げることが必要です。

2. 地方議会は国政(政党政治)の縮図という現実であるならば、堂々と憲法改正について議論し、地方議会改革につなげるべき

北区議会を例に出せば、定数40名(現在、議員の死亡と辞職により38名)のうち、国政政党に所属していない区議は当方を含め2名のみ。北区議会については無所属議員が少なすぎる事例としても、無所属議員が定数の半分を超える地方議会はほとんど無いことが現状です。

また、無所属といいながら、実質的には国政政党所属の地方議員も多く、結局、地方議会といっても、国政・政党政策の影響を強く受け、国政政党同士の勢力争いがそのまま地方議会議員選挙で体現されます。

悪い影響とは何か?具体的に言えば、地方議会の場において議員同士の討論がほとんどなされない現状があります。

地方議会構成が国政政党別の会派で議会構成が分割されることがあれば、地域課題について本質が討論されず、それぞれ国政政党の政策を守り、他会派(政党)を批判することに終始されることに繋がります。

そうした政党政策の言い争いを北区議会にもちこまれた事例について、この4年間でどれだけ目の前で見た事かわかりません。

本来、地方議会の場において、地域課題と関係のない政党政策の対立が議会の中に持ち込まれるべきでないという正論を主張しても、現実問題、無所属無会派議員は議会会派の幹事長会を傍聴さえできません。

4年の任期など、政党政策を離れた一地方議員として討論出来ることなく、あっという間に過ぎます。

ならば、むしろ国政政策の根本規範たる憲法改正を地方議会で考え、いかに地方議会の弊害になっていることがあるのかを議論し、国政と地域自治体の関係とその影響を地方議会において審議すべきです。

3. 時代にそぐわない憲法規定は多くの区民生活に直結する

憲法改正と言えば、国防をイメージし、区民生活と関係が無いと考える地方議員がいます。

しかし、政治家の仕事とは法律・制度・仕組みについて考え、改正、修正、新規策定、時代にそぐわない法制度を廃止することのはずです。

だとすれば、そうした最高法規たる憲法と地域課題の関係を把握し、時代に合った内容に改正を訴えることは地方議員の役割と考えます。

例えば憲法には、第89条の「公金を公の支配に属しない教育事業に対し支出・利用に供してはならない。」といった内容規定がありますが、実際には国から私立大学に予算支出がされており、矛盾があります。

さらに、環境権、知る権利など時代が求める規定を設ける改正も考えるべきです。

現状、児童虐待、あおり運転の犯罪、ヘイトスピーチなど新しい社会課題があるたびに、厳しい世論が高まり、厳罰化、時代に合った法改正が進んでいます。

最高法規たる憲法について、時代に合わせた見直しについては、地域課題を常に考え、国との関係において地域市民の生活を守るための内容改善を地方議員こそ先頭に立って提言すべきではないでしょうか。

4. 憲法を守れというスローガンで地方議会に議員を増やす政党があるのであれば、まさにそのテーマで討議することこそ地方議会を守る

北区議会の現状についての状況です。共産党所属の地方議員、都議会議員、国会議員の得票数はここ数年、微増ですが一定の割合を得ています。

2017年10月衆議院議員選挙 北区での党派別得票数(得票率)
日本共産党 20,667(13.43%)
自民党 45,240(29.40%)
公明党 20,523(13.34%)
立憲民主党 32,396(21.05%)

また、この年に得票を民主党時より多く得た立憲民主党の公約は「憲法9条改悪に反対」でした。

政党批判をする気は全くありません。

ただ、「憲法を守れ。変えるな」という政策テーマで政治力を大きくするのであれば、真っすぐにその理由とそれによって得られる国益と区民生活の安心安全、得られない国益と区民の負担を政治の場で討議すべきです。

国会議員選挙だけでなく、今年の地方統一選挙においても共産党の前国会議員を含めて憲法改正反対を赤羽駅前、ララガーデン前でご主張されるのであれば、そのテーマで有権者に選択を求めるのであれ、そのテーマで地方議会の場で、数字とデータ、国際情勢と区民生活への影響について堂々と討議されてはいかがでしょうか。

国政選挙と地方選挙は趣旨が違うべきですが、上記 2. の通り、国政政策が地方議会と選挙に大きく関係しています。地方選挙においても選挙公約として「許すな戦争立法」と強調されるなら、地方議会 において公約実現について憲法改正と安全保障について討議を望みます。

5. 憲法改正発議がされたら、国民投票で可否が決まる!

事実を述べます。憲法改正を第一に訴える区議会議員、地方議員はほとんどいません。少なくても当方はそうした議員の方を知りません。

理由は、「憲法改正問題は国政のこと。地方議員は身近な地域課題を考えるべきだ。」という考える地方議員が多いからです。

しかし、5. の理由として挙げた通り、最後は国民投票で決まります。

憲法改正は国、国会議員が考える事として国会議員に任せ、責任を考えない姿勢をとっても、最後はすべての国民に可否が問われるのです。

つまり、普段から区民生活と憲法改正テーマの影響を理解し、考えることが求めらます。

思考停止してしまっては、本当に必要なこの国と自身の地域課題の本質がわからないまま選択を迫られることになります。

区議会議員、地方議員こそ地域の中で憲法改正を考え、勉強し、時代に合った見直しができないか提言し、その結果、地域と住民生活がどう変わるのかについて、日々訴え、議会で審議し、行動すべきではないのか。

時代に合わせて制度と仕組みを変えていくべき。

新しい政治の在り方として、地方議員こそ憲法改正を考え、来る国民投票において論点が明確になるべくに取り組むべきことを提言します。

吉岡 慶太  東京都北区議会議員(無所属)アゴラ出版道場3期生
区職員(23年間、生活保護ケースワーカー10年他)を経て、2015年から現職(1期目)