バロンズ誌:Fed、物価目標達成を狙い利上げ小休止へ方向転換

2019年02月04日 10:00

バロンズ誌、今週のカバーは利益見通しが鈍化していくなかで投資すべき銘柄を取り上げる。アカデミー賞は2月24日開催とまだ先だが、ウォール街のレッド・カーペット・イベントは1月28日週だったと言えよう。アップル、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブックなどテクノロジー関連の人気企業のほか、中国へのエクスポージャーの高い3Mやキャタピラーなどの決算も相次いだ。これまでのところ、1月初めに直撃したアップル・ショックのような事態は回避されている。

しかし、S&P500構成企業の利益は、2018年にピークアウトを打ち、2019年にかけ鈍化する見通しだ。2018年10~12月期の予測値は前年比15.4%増だが、2019年1~3月期は0.4%減2019年4~6月期に改善する見通しながら1.9%増にとどまる。かつての2桁増が見込めないなか、どこへ投資すべきなのか。バロンズ誌は、整形外科医療機器大手に始まり、歯磨き粉で知られる生活必需品メーカー、ソフトウェアの巨頭、自動車テクノロジー大手などを挙げる。詳細は、本誌をご覧下さい。

今週は当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート(雇用統計をフィーチャー)ではなく、米連邦公開市場委員会(FOMC)が景気後退を回避できるかと問いかけたザ・エコノミーを取り上げる。抄訳は、以下の通り。

Fedは次の景気後退を回避できるのか—Can the Fed Stave Off the Next Recession?

米連邦準備制度理事会(FRB)は、足元で投資家にグッドニュースとバッドニュースを与えてきた。グッドニュースとして、米12月FOMCでは金融市場の声を聞き入れ、1月FOMCでは利上げと保有資産の圧縮が行き過ぎた場合を懸念するようになった。バッドニュースとしては、Fedの慎重な姿勢を受けて2020年の景気後退入りを予想する向きが増えたことだろう。デューク大学の調査によれば、最高財務責任者(CFO)の8割が来年のリセッション入りを見込む。

1月FOMC声明文では「一段のゆるやかな利上げ」の文言が削除され、経済過熱を妨げる必要性がないことが明らかになった。代わりに「金融動向」と「抑制的なインフレ圧力」という向かい風局面を迎え、持続的成長を維持する上で「今後の調整を決定する上で、辛抱強くなれる」との文言を挿入、利上げに急がないスタンスを強調した。パウエルFRB議長自身、FOMC後の記者会見で「さらなる利上げの必要性を確認したい」と語ったほか、政策正常化プログラムも完了した可能性を点灯させている。保有資産の正常化をめぐっては「これまでの予想より早急に、より大きな規模で完了する」見通しを示した。

保有資産の規模につき、市場関係者はFedと金融市場の動きと歩調を合わせ、見通しを修正させている。NY連銀が2018年4月に公表した年次レポートによれば、プライマリーディーラーは2020年末に保有資産が3兆ドルへ圧縮されると予想。2018年12月に公表された市場関係者を対象とした調査では、2019年末までに3.4兆ドルまで縮小すると見込まれ、1月FOMCを受けた市場関係者の見方に近い。

Fedの姿勢の変化は、米株や社債、米国債の買いを促した。しかし、同時に未来へ警鐘を鳴らすものである。Fedは景気後退を回避すべくFF金利誘導目標を引き下げてきたが、1980年代以降の平均利下げ幅は5.0%ポイントだ。翻って足元のFF金利誘導目標が2.25〜2.5%であり、インフレ調整済みの場合は0.25〜1.0%に過ぎない。

仮にFedがFF金利を中立金利のレベルへ引き上げたとして、過去の例に従って将来の景気後退入りを止めるべく利下げするには、インフレ調整済みでマイナス4%割れまで引き下げる必要があるだろう。しかし、FOMC参加者は物価をを上振れさせかねないため、マイナス金利に消極的だ。

問題は、Fedが物価を上昇させる能力や意欲を見せていない点にある。Fedが10年近くも緩和政策を継続させながら、コアPCEは前年比で2%を割り込み続ける状況だ。

NY連銀のウィリアムズ総裁は、自らによってリスクを増幅させる場合を懸念する。例えば、Fedが将来の景気後退に抗うための政策手段が限られていると判断すれば、Fedの役割はずっと困難になるだろう。ウィリアムズNY連銀総裁によれば、Fedへの信任が低下すれば経済は上振れせず安定的に推移する一方、将来のインフレ見通しは低下するという。実際に、ミシガン大学消費者信頼感指数でのインフレ見通し平均は、2015年以降、1994〜2014年の平均値を0.5%下回る。

NY連銀が調査した1年先インフレ見通し、直近は伸び悩みが続く。

ny_expectations

作成:My Big Apple NY

インフレ見通しの低下は、物価上昇の鈍化を招き、Fedに実質金利ベースでの利下げ余地を狭め、さらにFedへの信任を落ち込ませよう。ウィリアムズNY連銀総裁は、2019年1月にトーマス・マーステン氏との共著で公表したレポートで「(金利における)内在する非対称的な低帯域(the inherent asymmetry of the lower bound)」とは、景気減速局面で中銀が金利を物価目標を常に下回る水準に設定するようになり、「経済にもたらす低帯域の効果を悪化させる」ことと説明した。解決策として、ウィリアムズNY連銀総裁は景気後退期のような物価が低迷する局面に備え、経済を熱い状態で維持すべきと主張する。つまり、金融政策は物価目標達成のため、体系的に緩和寄りでなければならないというわけだ。

かつてNY連銀のマーケット分析チームのディレクターだったBNPパリバ・アセット・マネジメントのシニア・エコノミスト、スティーブン・フリードマン氏は、Fedが物価目標2%を達成するには、通常時で物価が2.25%の上昇を示さねばならないと試算する。この試算の通りフリードマン氏は、Fedが物価上振れや金融政策の過剰な引き締めへの懸念を誘発せずに物価目標を達成するには、物価目標が経済動向次第である点を声明文に盛り込むことが必要だという。同時に、Fedは利上げを物価目標の2%の体制が保証するより低い水準で打ち止めせざるを得なくなるだろう。足元のFedの金融政策の転換は、こうした変化への第一歩と言える。


NY連銀のウィリアムズ総裁、仕事が速いですね。既に足元の金融政策の転換に裏付けを与えるレポートを公表していたとは、さすがです。金融安定報告を公表した2018年11月当時は、高利回り債やレバレッジドローンへの警戒が数多く明記されましたが、今はこうした市場のバブル警戒より不確実性への対応が急務という証左でしょう。現状、リスク・オン相場を迎えISM製造業景況指数など好転がみられるため、政策は奏功しているように見えます。今後は、矢継ぎ早に打ち出した緩和姿勢の反動に注意。来たるべき時に緩和寄りの政策変更を決定しても、効力が一時的にとどまり、金融市場のボラティリティ上昇や景気後退懸念が抑えきれなくなった時のリスクが視野に入ります。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年2月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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