日大アメフト:警察の白判定だけで第三者委の黒判定を覆せない

早川 忠孝

事実の認定は簡単なようで、結構難しい。

写真ACより:編集部

陪審裁判で無罪を獲得したが、損害賠償請求の民事裁判では殺人と認定されて敗訴したという有名な事件がアメリカにあるが、日大アメフット部元監督の選手に対する悪質タックル指示の有無について、警察が捜査の結果そういう事実は認められなかった、と認定しても、それでもって悪質タックル指示の事実がなかったことに確定するわけではない。

世間が注視している中での捜査なので、相当周到かつ丁寧に捜査を遂げただろうと思うが、要は犯罪事実を認定するだけの証拠は得られなかった、というだけのことであって、真実はまだヴェールの中にあると言わざるを得ないだろう。

既に第三者委員会は相応の調査を遂げて日大アメフット部の元監督による指示の事実を認定し、これらの事実を勘案して元監督には相応の処分がなされているところである。

警察の捜査結果と第三者委員会の調査結果のどちらが正しいのか、という問題になるが、その判定は部外者である私たちにはまず出来ない。

第三者委員会がどういう証拠に基づいて黒判定をしたのか、第三者委員会が調査した関係者と警察が事情聴取した関係者が同じかどうか、第三者委員会が調査した関係者や警察が事情聴取した関係者のそれぞれの供述の信用性はどうか、それぞれの供述内容に矛盾ないし供述の変遷があるかどうか、等々のことを検討しないとそう簡単には結論は出せない。

勿論、郷原氏が述べるとおり、マスコミ報道による一定のバイアスが掛かっている可能性もあり、真実の解明はそう簡単なことではない。

真実は一つしかないのだが、第三者が事実認定するときは、結局はどういう証拠に基づいて事実認定をしたか、ということが重要で、どちらが正しくどちらが間違いだと即断できないところが悩ましいところである。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2019年2月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。