安倍政権の迷い込んだ「長期停滞」の罠

国会では野党が「毎月賃金統計調査の不正はアベノミクスの成果を偽装する陰謀だ」と騒いでいる。政治家が統計に介入することは不可能だが、安倍政権の弱点が賃金にあることは確かだ。「実感なき景気回復」といわれるのも、賃金が上がっていないことが原因だろう。

こういう「長期停滞」は日本だけの現象ではなく、低成長・低インフレ・低金利の状態は先進国では2010年代にずっと続いている。当初これは世界金融危機からの回復にともなう一時的な現象と考えられていたが、最近はこれが「ニューノーマル」だという人も増えてきた。何が変わったのだろうか。

グローバル化が長期停滞を生む

長期停滞の原因としてよく挙げられるのは、潜在成長率や生産性の低下だ。人口減少と高齢化の進む日本ではこれは当然だが、今の長期停滞はこういう供給不足だけでは説明できない。

総需要と総供給の一致する水準で物価が決まるとすると、供給が減ったら物価は上がるはずだが、日本はここ20年、物価上昇率も金利もゼロに近い状態が続いてきた。この原因は需要不足と考えるしかないが、それを示す需給ギャップはゼロに近い。こういう状態で財政出動や金融緩和をやっても効果がない。

それがアベノミクスの失敗だったが、教科書的なマクロ経済学では、今の日本のように完全雇用に近い状態で景気を刺激すると、景気が過熱してインフレになると想定している。ところが安倍政権が増税を延期し、日銀が大規模な量的緩和をやってもインフレが起こらない。

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