フランスが駐伊大使を引き上げ伊政府は独に秋波

フランスとイタリアの両政府対立が激化し、フランスは7日に駐イタリア大使の召還を発表した。イタリア政府による「内政干渉」と「容認できない挑発的発言」を理由としている。これに対して、イタリア政府はドイツに対して両国の伝統的友好関係を強調して一緒にフランスに対抗しようと提案したがメルケル首相にとっては大迷惑である。

マクロン氏(右、エリゼ宮サイト)と対立を深めるディマイオ(左上)とサルビーニ両氏(Wikipediaより:編集部)

この背景には、イタリアにおける与党第一党で極左ポピュリストの「五つ星運動」と極右ポピュリストの第二党「同盟」の対立がある。前者を代表するのがディマイオ副首相兼経済発展・労働相で後者の代表がサルビーニ副首相兼内相だが、このところ後者の人気が圧倒的だ。

昨年3月の総選挙で五つ星は33%、同盟は17%だったのが、今月半ばの支持率調査では、同盟の36%に対して、五つ星は25%と逆転した。この両者の共通の敵であるのがフランスのマクロン大統領だ。マクロンはアンチ・ポピュリストのシンボルで、同盟とは移民問題で、五つ星とは経済改革で対立する。

そこで、5日にパリ近郊でディマイオ副首相が「黄色いベスト運動」の幹部と会合し、サルビーニ副首相はFN(国民戦線)との連携を深めた。

また、サルビーニが国営ラジオでマクロン大統領に「支持率が低迷している。仏国民は別の選択をすべきだ」「フランスは石油権益のためにリビア安定化に無関心だ」とし、ディマイオは「アフリカから移民が来る原因はフランスがかつて植民地にしたせいだ」と批判した。

マクロンは移民救助船の寄港を拒否したイタリア政府を「無責任」とあからさまに批判したのに対して、イタリアの世論調査では、「ヨーロッパで最も敵対的な国」にフランスをあげる人が38%にのぼり3年前の約3倍になった。

そして、ついには、ドイツとの同盟に秋波を送ったが、国内でやはり左右のポピュリストに悩まされているメルケル首相には迷惑なことだ。もちろん、日本に誘いがあっても、乗れるはずがない(笑)。