景気の節目

岡本 裕明

来そうで来なかった景気サイクルの節目がどうやら来た感じがします。景気がいつ天井だったか、というのは指標を基にチェックしますのであとになって「あの時がピークだった」という結論を出すことになるのですが、私の肌感覚から言えば18年10-12月にピークから下降が始まった可能性があります。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

そろそろ出そろう日本企業の10-12月期決算の状況をザーッと見渡すと「減益」の文字が並びます。新聞は編集をするので最高益やサプライズのプラスが出ると大きく出て小動きの決算は小さめに出るのですが、編集のマジックを見抜きながら見るとやっぱり減益が多い気がします。

本日、北米で発表された二つの指標はがっかりさせるものでした。カナダの12月度工業製品の販売はプラス0.4%の予想がマイナス1.3%に、アメリカからは12月の小売りはプラス0.1%の事前予想に対してマイナス1.2%となっています。特にアメリカはクリスマスセールは好調だ、と報じられていたため、余計にがっかりした結果となりました。

ドイツの10-12月期GDPはゼロ成長。7-9月期がマイナス0.2%だったので10-12月期がマイナスであれば景気後退局面に突入するところでした。(2四半期連続のマイナスは景気後退と判断されます。)ユーロ圏は0.2%の成長となったもののけん引役のドイツの不振は気になるところであります。また、同国の最大の民間銀行であるドイツ銀行にかかる様々な噂もかつてないほど大きくなり、その行方が注目されます。

英国はその離脱交渉が3月21日のEU首脳会議までもつれる見込みでその場の決定次第で天国と出るか、地獄と出るかのばくちになりそうです。政治家は自己の主張をしていればよいのですが、民間企業はA案B案を並べながら対策を立てねばなりません。合意なき離脱の場合、英国ポンドは暴落する危険性をはらんでおり、英国中央銀行も19年にあと一回程度の利上げを見込んでいたものの場合により「利下げ」の選択肢が浮かんできています。

経済を取り巻く統計や企業実績、見込みはバラ色から耐え忍ぶ形に変わってきていると考えてよいと思います。アメリカ、カナダでは19年度の利上げの見込みはかつての3回がすでにゼロ、場合により利下げのタイミングを探る状況になるという急激な見通しの変化となっています。

理由は多くあります。金利が上がったことはあります。カナダでは不動産価格抑制のための各種政策が効いており、取引は沈静化、買い手市場に変わり始めており、売り手は希望売り出し価格を1000万円単位で下げざるを得ない状況になっています。アメリカは関税という政策でブレーキを掛けました。消費に関しては中国人の海外での散財が急激に収まってきていることもあります。(海外での散財とは不動産などを買うという意味です。)

個人的感覚としては「踊りつかれた」感じがしないでもありません。景気刺激策が続き、消費者はあれもこれもいろいろ購入してきたのですが、日本以外の国でももう十分に持っている、ということではないでしょうか?少なくともしばらく休憩して「お腹が減るのを待つ」のかと思います。

日本については10-12月のGDPが年率1.4%で7-9月のマイナスからの回復となりました。(7-9月のマイナスは自然災害による消費縮小が主因と見られています。)19年度は天皇陛下の交代という特殊な年で来年にはオリンピックも控えることから日本だけは内需が支えてある程度の安定した景観は期待できると思いますが、海外は荒れそうな気配で輸出企業を中心に厳しい経営かじ取りを余儀なくさせられるとみています。

折しも北米には厳しい寒波が来て東部だけではなく、ここバンクーバーも日中かろうじてプラスになる程度の厳しい冷え込みになっています。春の到来はもうしばし先ということになるのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年2月15日の記事より転載させていただきました。