同性婚推進のリベラルは憲法改正から逃げるな

2019年02月16日 06:01

同性婚の合憲化・法制化を求めて、国内13組の同性カップルがバレンタインデーの14日、全国で一斉に違憲訴訟を起こした(リンクはFNNニュースのYouTube)。

支援しているのは、弁護士たちで作る一般社団法人「Marriage For All Japan」。一斉提訴という「社会運動」としての色彩が強く、毎日新聞東京新聞は翌日に社説を早速掲載。朝日新聞やバズフィードジャパンなども含めてリベラル系メディアが熱心に取り上げている反面、読売や産経は社会面や地方面で淡々と報じているあたり、この問題もまたこの国の左右の「温度差」を毎度のように見る思いだ。

2010年代半ば以降、日本でもLGBTの社会的プレゼンスは格段に増した。渋谷区など一部の自治体でのパートナーシップ条例制定や企業の人材活用、勝間和代氏に代表される著名人の同性事実婚の公表などが報じられたことで、日本社会の関心・理解は一昔前よりは明らかに違ってきていよう。

海外でも同性婚の合法化は政治的論点に持ち上がっており、日本でも時間の問題に思っていたので、今回のことは一つの通過点程度にしか思っていない。また、リベラル派がLGBT・同性婚推進の主力を担う社会的構図も欧米と同様に展開し続けるのだろう。

憲法論議の「対立」という同性婚ガラパゴス問題

しかし、日本独特の「国情」として憲法問題が付きまとう。少しおさらいをしておくと、「結婚」に関する現行憲法は24条1項で次のように定めている。

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

この「両性」をどう解釈するか。東京新聞の社説が端的にまとめているが、現状はこうなっている。

「両性」の言葉について解釈が分かれている。つまり男女と判断すれば「同性婚は違憲だ」となる。一方で両性とは男女に限定されず、それぞれ両方の性を指すのであり、「同性婚は合憲だ」との解釈も生まれる。合憲説を支えるのは、法の下の平等であり、個人の尊重であろう。

当事者の政府は昨年5月の見解で、「想定されていない」「いずれにしても、同性婚を認めるべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えており…」などと述べた。率直なところ政治問題化を避けたい意向がにじみ出たとしか思えない文言だが、逃げの姿勢は当のリベラル側も同様ではないのか。

護憲派が多数の憲法学者たちは「同性婚について禁止した条文ではない」(木村草太氏)といったゆるい解釈を示している。そうした人たちからは「家父長制が根強かった戦前、親の承諾なしに結婚が難しかった反省も含めて現行憲法が制定されたから、その両性は結婚の当事者2人を意味する」的なロジックを持ち出している。

しかし、現行憲法のGHQ草案(日本語版)では、「both sexes」(Article XXIII)の文言は「男女両性」と記載していた。そうした歴史的経緯を見てもわかるように、現行憲法の両性は「男女」であって、同性婚を想定していないと考えるのが自然ではないのか。

私は渋谷区のパートナーシップ条例のように実体的な制度には賛成だが、同性婚推進派の理論的支柱になっているであろう護憲派の憲法学者たちの欺瞞や矛盾は許せない。彼らは2015年の安保法制制定時、政府の解釈変更を激しく詰ったこととの整合性はどう取るのだろうか。集団的自衛権行使容認がダメで、同性婚はなぜOKなのか、おそらく小難しい法解釈ロジックをウニャウニャと持ち出して反論してくるのだろうが、取り繕ったところでご都合主義のダブルスタンダードを覆い隠すためにしか思えない。

そう考えると、憲法改正のための「政治闘争」ではなく、今回の「法廷闘争」というアプローチを選んだ筋がどのような価値観をもつ手合いなのか、筆者は冷めた目で見てしまうのだ。

リベラルの世代交代・刷新に繋がるなら歓迎だ

この同性婚訴訟、地裁レベルでは、たまにリベラルな裁判官もいるので、ひょっとしたら一部で違憲判決(=同性婚を認めないのは法の下の平等に反する)が出て朝日新聞などがはしゃぐ局面が出てくるかもしれない。それでも最高裁まで勝ち続けられるかと言うと、高度な政治判断を要する問題について、原告らが望むような判決が出るのか筆者は懐疑的だ。

リベラル系の人たちのお祭りに水を差して恐縮だが、仮に原告敗訴が確定した場合、それでも同性婚を合法化したいのであれば、法廷闘争から政治闘争にシフトせざるを得ない。つまり、憲法改正を目指す戦いへのシフトを余儀無くされる。だが、推進派の多くはリベラルの人たちだ。一致団結して憲法改正を目指して声をあげられるのか?特にオールド世代の一文字たりとも改憲したくないリベラルと折り合えるか?

ただし、リベラルの中でも、この問題は結婚当事者の多い若い世代の方が関心は強いだろう。だから「同性婚」問題が憲法改正論議に移行して、その過程でオールド左翼が淘汰され、リベラルの世代交代を促すきっかけになるのであれば、それはそれで歓迎だ。政治課題、社会課題のためなら、リアリストに徹する新しいリベラルを築くことが、ゆくゆくは自民党に負けない政権担当能力をもつ政治勢力の育成にも繋がるだろう

……と、まあ後半は仮定のシナリオの積み重ねになってしまったが、今後の展開を注視している。安倍首相の総裁任期が切れる2021年9月までに確定判決が出る可能性は低いだろうが、同性婚推進のお祭り騒ぎリベラルの人たちが想定しない形での政治変革に淡い淡い期待をしながら筆を置きたい。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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