日本の景気回復のためにはマイナス金利政策の解除も必要に

中国や欧州の経済指標などをみると昨年は景気の減速感が強まった。中国国家統計局が発表した2018年の国内総生産は、物価変動の影響を除いた実質で前年比6.6%増となり、天安門事件の影響で経済が落ち込んだ1990年の3.9%増以来、28年ぶりの低水準となっていた。欧州連合(EU)の欧州委員会がユーロ圏の2019年の成長見通しを引き下げ、イングランド銀行も英国の経済成長見通しを引き下げた。

日銀サイトより:編集部

いわゆる循環的な景気減速との見方が強いものの、米中の貿易摩擦といった政治的な要因も絡んでいる。米中の貿易摩擦の背景には、米中のハイテク分野などを含む覇権争いがあり、これは米国経済を牽引してきたアップルなどのIT企業にも影響を与えることになる。

中国や欧州、さらに米国の景気が減速となれば、当然ながら日本の景気動向にも大きな足かせとなろう。2013年あたりからの日本の景気回復は、アベノミクスが成果を挙げたというよりも百年に一度と言われた世界的な金融経済リスクの後退と、それに伴う円高調整、そして世界的な景気の回復が大きく寄与した。

日銀の異次元緩和政策は急激な円高調整には多少は寄与したかもしれないが、結果として物価目標が達成できなかったように、実質的な効果には疑問符が付く。しかし、物価目標が未達となったことで日銀は現在、長短金利操作付き量的質的緩和政策という複合的な緩和策を行っている。

しかし、のちほど加えられたマイナス金利政策と長期金利コントロールは金融機関の収益を悪化させることになる。大手金融機関は多少余力があったとしても、中小金融機関にとってはマイナス金利が継続され続けると収益がさらに悪化しかねない、いわゆる異次元緩和の副作用が今後は顕在化しかねない。

日銀の緩和効果は膨大に膨れあがった日銀の買入資産の保有によるものを考慮すれば良いと思われ、マイナス金利や長期金利のコントロールによる影響はほとんどないと見て良いのではなかろうか。むしろ金融機関の収益悪化が日本経済の減速要因ともなりかねず、将来の金融不安が生じるリスクすら伴うものとなる。

このあたりの認識を強めさせることで、日銀の出口政策とか引き締め策ではなく、日本の景気回復の後押しともなりうるマイナス金利政策の解除と、できれば長期金利コントロールの解除を目指すことが必要となるのではなかろうか。

これ以上の日銀のポートフォリオの膨張もブレーキを掛け、巨額のポートフォリオを長期間にわたり維持させることで、緩和効果の継続をアピールするといったことも必要になってくるのではなかろうか。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。