「レオパレス事件」と「かぼちゃの馬車事件」の共通点

2019年02月18日 06:00

レオパレス問題(毎日新聞)が巷を賑わせているが、同じ不動産問題では記憶に新しい「かぼちゃの馬車事件」がある。これは、スマートデイズ社によるシェアハウス事業が破綻し(日経新聞)、管理会社からオーナーへの賃料が未払いとなった事件であり、オーナーへの融資についてスルガ銀行が不正融資を行ったことで波紋を広げた(毎日新聞)。「レオパレス事件」は不正建築、「かぼちゃの馬車」はスルガ銀行の不正融資が注目を集めているが、この2つの事件には共通点がある。それはこの事件の1番の被害者といえるオーナー側からみた『サブリース』と『一棟建て』である。

画像はWikipediaなど:編集部コラージュ作成

「レオパレス21」では2017年11月以降、一棟建てアパートのサブリース契約をめぐって、オーナーが130人規模の集団訴訟を起こしており、「かぼちゃの馬車」も一棟建てのシェアハウスのサブリース契約をめぐり管理会社(スマートデイズ社)をオーナーが提訴している。

1. サブリースの落とし穴

サブリースとは、家賃保証契約のことで、不動産管理会社などがオーナーから一括借り上げて転貸する家賃保証制度である。住宅所有者の多くは経営や管理などをすべて管理会社に任せ、契約期間中は決まった金額が家賃収入として入ってくる仕組みだ。一般的に保証される賃料は相場の80%から90%となるが、オーナーは空室リスクがなくなり、安定した賃料を得ることができると言われている。しかし、このサブリース契約は実は大きな落とし穴がある。

家賃はオーナーと管理会社が相談して決めることにはなっているが、意見が違った場合、その決定権は管理会社が持つことが多い。不動産管理会社は市場価格より安い価格で出せば入居希望者は増えるので、契約更新時にオーナーへ低い価格で打診する。決定権は管理会社にあるので、最終的にオーナーは管理会社の意向を飲まざるを得ない。そうなると、予定していた賃料より安い金額しか手元に入らないという事態に陥ることにもなる。

また、保証期間は30年等と長期間うたっている管理会社が多いが、実質は2年程度で契約が更新される。契約しなければ当然家賃は保証されないので、自力で入居者を探すか、探せなければ最悪は家賃が入らないことになる。そして何より最大のリスクはかぼちゃの馬車事件のように、管理会社それ自体が潰れてしまうことである。管理会社がなくなれば、保証契約は紙くずになってしまう。

2. 一棟建てのリスク

マンション、アパート経営の最大のリスクは空室である。一棟建ては各部屋の立地はほぼ同じなので、一棟丸ごと持つということは、空室リスクを最大に背負ってしまうことでもある。例えば、2003年に青山学院大学は相模原にキャンパスを移転し、その需要を見込んで周辺に一棟建てのアパート等を建てたオーナーも多くいた。しかし、青山学院大学は10年後の2013年に相模原キャンパスの文系学部の1、2年生7000人を東京都渋谷区のキャンパスに集約することを決めた。これにより供給過剰になり家賃価格は下落し、今も入居者がつかないアパート等が多数ある。

また、八王子市にある中央大学は文系学部を多摩キャンパスにおいていたが、2022年までに目玉の法学部を後楽園キャンパスに移転することを決めた。少子化により学生の争奪戦が激しくなり、東京圏だけでなく大阪圏、名古屋圏でも大学の都心回帰は進んでおり、学生の需要を見込んでアパート等を建てたオーナーは厳しい状況になる。

「手持ちの空き地をアパートにして節税をしませんか」という話しを不動産屋が持ってくるが、これは順序が全く逆である。もし一棟建てにするにしても、アパートの収益性を考えるなら、土地がそこにあるから建てるというのではなく、好立地がまずあってから、そこにアパートを建てるという順序である。

ちなみに、立地について大ざっぱに言えば、人が集まり増えていくところが良い立地ということになる。総務省が1月31日公表した外国人を含む2018年の人口移動報告によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を13万9868人上回る「転入超過」となった。そのうち、東京23区が約6万人と半数近くを占めている(総務省)。

ここから言えることは、マンションを持つなら「東京圏」、もっと言えば23区ということになる。好立地なら家賃保証などしてもらわなくとも入居者はつくし、むしろ保証会社を挟まない方が収益性も高くなる。いうまでもなく将来の収入を保証してくれるものは、保証会社の社会的信用やスキルではなく、物件のもつポテンシャルである。

レオパレスの不正建築やスマートデイズの杜撰な経営、ましてや銀行の不正融資は極めて悪質で許し難いが、不動産投資をする際には「長期的な需要があるかどうか」は、サブリースという名目上の保証をあてにせず自分で判断する必要がある。また一棟建てという大きなリスクを負うよりは、マンションのひと部屋を所有する区分所有を増やす方がリスクははるかに低くなる。

石川 了(とおる)宅地建物取引士
1982年中央大学卒業、NTT入社 退職後不動産投資業を営む ブログはこちらです。石川了ブログ

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