バロンズ:米経済に最大のリスクを与えうるのは、社債市場

2019年02月18日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはマリファナ関連株を取り上げる。全米50州のうち、医療目的の使用を合法化しているのは33州、ニューヨーク州をはじめニュージャージー州、イリノイ州は娯楽用目的を含めて合法化する10州と同じく適用範囲を広げようとしている。かつて闇市場で年間500億ドルを売り上げたマリファナが、裁量消費財に組み込まれる日もそう遠くないかもしれない。しかし、マリファナ関連株の株価収益率(PER)は平均で30倍であり、割安とは言い難い。また、実際に利益を計上している企業は、2社程度だ。しかも、多くのフリーキャッシュフローはマイナスである。果たしてマリファナ関連株を買うのは好機なのか、詳細は本誌をご覧下さい。

次にバブルが崩壊するのは、コーポレート・クレジット市場—Corporate Credit Could Be the Next Bubble to Burst.

企業は国家は、低金利を背景に借入を拡大させてきた。さながら、2008年の金融危機をもたらしたサブプライム向け住宅ローンのようだ。

年始のバロンズ誌によるラウンドテーブルでは、ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)が、債務に依存する経済で社債市場が最大のリスクであると警告した。投資適格級は規模が拡大する一方で、質は悪化し、多くはジャンク債へ沈みつつある。

しかしながら、企業は巨額の社債を発行し続けている。タバコ製造大手のアルトリア・グループは、電子タバコ・メーカーのジュールへの投資の一環として115億ドルの社債を発行した。また、ビール製造大手アンハイザー・ブッシュ・インベブもSABミラー買収に伴う債務借換を目的に155億ドル起債した。通信大手AT&Tは、タイム・ワーナー買収にあたり171億ドルへ拡大した債務借換のため、50億ドルの起債を通じ資金を調達。航空機メーカー大手ボーイングも、15億ドルの社債を発行した。

多くの企業が起債する理由は、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策転換であり、利上げに対し「辛抱強くなる」姿勢を表明し金利据え置きを示唆したことだ。しかし、マクロメイブンズのステファニー・ポンボイ氏いわく、これは「赤信号」である。米連邦公開市場委員会(FOMC)の記者会見で、パウエルFRB議長自身がかつてリスクを警告したが、据え置きによる同市場の影響について、リスクは僅かと答えるにとどまった。ポンボイ氏の耳には、2007年5月のバーナンキFRB議長(当時)の発言のように響いたものだ——「(サブプライム向け住宅ローンの問題は)銀行や貯蓄金融機関に深刻な影響を及ぼさない」。

規制当局者は、金融規制改革を通じ銀行の資本は増強され当局が精査を続けてきたため、2008〜09年に発生したような危機は発生しないと強調する。もっとも、ポンボイ氏によれば問題はノンバンク・セクターだ。銀行は疑いのあるクジレットをデリバティブに変えて高格付けを与え、債務担保証券(CDO)として投資家に売却した。

しかも、上場投資信託(ETF)のように2倍や3倍にレバレッジが掛かった商品へ変身したものもある。高利回り債に連動するETFは、個人投資家も取引してきた。つまり、かつてサブプライム住宅ローンが組み込まれたトリプルA格付けの証券は、現在の高利回り債関連ETFといっても過言ではない。金融機関が保有する社債残高も減少しており、ETFの急落が開始した局面で頼りになるマーケット・メーカーはごく一部という状態だ。それでも、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの高利回り債アナリストは、金利プレミアムは2007年以降で最低と指摘する。

ETFマネージャーはこうした悲観的予想に対し、売り局面を無事に消化してきたと説明する。もっとも、流動性となれば話は別だ。レバレジッド・ローン市場は1.3兆ドルの、ジャンク債市場は1.2兆ドルの、さらにジャンク債の一つ上の投資適格級の社債市場は3兆ドルに及ぶ上に今年は7,800億ドルの償還を迎える。

モルガン・スタンレーの調査で、社債格付け動向は以下の通り。レバレッジ・ドローンの金額が違うものの、バロンズ誌がどこから引用しているかは不明。

作成:My Big Apple NY

ポンボイ氏の見通しは、高利回り債などを抱える年金ファンドのような金融機関にとって暗い見通しと言えるだろう。しかし投資家は、金融危機時のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のような売買が複雑な商品以外で、ジャンク債の崩壊を利用することができる。カンター・フィッツジェラルドのピーター・セッチーニ首席マーケット・ストラジテストは、iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)のプット・スプレッドに買い推奨を出す。これなら4月18日までに83ドルで売る権利に加え、40セントのコストで権利行使価格80ドルのプット・オプションを含む。

ポンボイ氏の予想は、過度に悲観的かもしれない。しかし、同氏は金融危機のリスクを正確に予想した一人だ。カサンドラの予言のように、彼女の予想が的中するのかは時が教えてくれるだろう。


パウエルFRB議長率いるFedが据え置き方向へ舵を切ったと同時に、企業債務への見方を変更させた点も注目すべきでしょう。2018年11月FOMC議事要旨だけでなく、2018年11月28日に公表した金融安定報告で、企業の借入依存度が「歴史的に高い」と指摘し高リスクの企業債務やレバレッジ・ドローンに警鐘を鳴らしたものです。直近では金利が低下したためか、こうしたリスクへの配慮が消えたも同然。パウエルFRB議長は景気後退を回避する上で最良の手段を選択しているのでしょうが、ニクソン政権下でのバーンズ議長のような失敗を繰り返さないと言い切れません。

(カバー写真:Michael Vadon/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年2月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑