ソフトウェアが世界を飲み込んだその後
調べたら私が最後にブログを書いたのは2014年で、それから5年近くも経ってしまっていた。
この間、テクノロジーもそれを取り巻く私たちのライフスタイルも大きく変わった。私は技術よりも特にライフスタイルの変化を追いかけていたのでそろそろそれを一つの集大成としてまとめてレポートし共有しようと思う。ネタは豊富だ。
私はこの7年で全国主要都市であればどこにでも住める拠点が100以上できた。自分がよく使う場所(部屋)では、すべて自分のネットワークアカウントの連携により自宅やオフィスと遜色のない環境が整えられ、今日この記事も湯沢の雪を眺めながら書いている。澄み切った冷えた空気が集中力を研ぎ澄ましてくれる。
独りでいるが、一人で仕事をしているわけではない。
弊社には社員は一人もいないし、仕事上スタッフと顔を合わせることはほとんどないが、全国で100人以上のスタッフが関わっており、事業としてはそれなりの形を維持している。私が人と会うのは新しく出会う人か、大切な時間を共有したい人たちがほとんどだ。無駄な会議などで貴重な時間を潰すことはない。一体この7年で何が変わったのだろうか。
2011年8月20日マーク・アンドリーセン「ソフトウェアが世界を飲み込む理由」を寄稿し、これは当時大きな反響を生んだ。
以来、私は事あるごとにこの記事を読み返し、今自分のやっていることや考えていることがこの記事の内容に沿ったものであるかどうか注意深く観察し自ら検証してきた。
みなさんにはぜひ一度この記事を読みなおしてほしい。
2018年になり、アンドリーセンの指摘・予言はほぼ現実的なものとなり、次のステージに移ったと確信できる事象がいくつもり、それは2019年以降の人々のライフスタイルや価値観に大きな変化を生み出していくだろう。
・多様化されたライフスタイル
・多様化されたワークスタイル
・多様化された所有概念
・GAFAが作れないもの、なぜソフトウェアが重要か
・独りでいることの価値観、友だち、家族、恋人の関係
・教育、親や先生のずれた知識と認識
・子どもは常に未来
・ストレスの概念、何が一番の原因か
・オンとオフの考え方
・可視化される世界
・モノがコミュニケーションを始める時
2011年といえば、Appleのスティーブ・ジョブズが亡くなった年であり、iPhone4、4sの時代でありスマホが一つの完成形を迎えた年だ。
東日本大震災では、電気・ガス・水道よりも通信のインフラが何より重要なインフラだと認識され、音声通話やメールよりもLINEやTwitter、Facebookなどのソーシャルツールが既存のコミュニケーションツールより有効だと示したときでもあり、YouTubeでは何度も何度も地震の様子が投稿され、再生された。私も当時は仙台市にして被災したが、東京に帰るまで主な情報収集ツールはTwitterであり、会ったことのない多くの人の善意に助けられた。
私は、今トレンドのAIやIoTよりも本質的には【ソフトウェアが世界を変えると信じている】
人類が誕生してから人々のライフスタイルを変えてきたものをざっくり定義するとすれば
火→言葉→文字→金属加工→農業→法律→火薬、羅針盤(航海革命)→産業革命(エネルギー、電気、クルマ、家電)→コンピュータ→通信→スマホ・クラウド=ソフトウェア
であり、ソフトウェアこそがスマホネット社会の基盤である。
マーク・アンドリーセンの「ソフトウェアが世界を飲み込む」で言及されている範囲は、主に古い産業がソフトウェア企業に飲み込まれるという内容だが、今起きていることは飲み込んだネット産業が人々のライフスタイルやワークスタイル、そして人々の考え方や価値観までも飲み込み、新しいスタイル(価値)を生み出していることだと思う。
私はこれを、「ソフトウェアが世界を飲み込んだその後」として、実際に自分で経験し検証してきた事実と観察した事柄を紹介していきたいと思う。
まず最初の大きな変化は、多様化されたライフスタイルやワークスタイルであり、それによって同時に所有の概念が大きく変わりつつある。
【ソフトウェアが世界を飲み込む時代】には主に本や音楽、動画などがデジタルに置き換えられ、クラウドに置かれることによって無制限利用のサービスが生まれ、モノを所有する概念がなくなった。広義でいえば会社の書類や資料もデジタル化されオフィスから紙がどんどん消えていったはずだ。
このように保管すべきモノがなくなり、いつでもどこでもクラウドから引っ張ってこれるようになると、なぜ自宅に住み、オフィスに行かなければならないのかという理由付けが弱くなる。
【ソフトウェアが世界を飲み込んだその後の時代】では、我々が今なお毎日同じ場所に帰る自宅があり、毎日通うべきオフィスがあるのか、それは再定義することができるようになった。
その一つの主流がAirbnbやWeWork、Uberなどに代表されるシェアリングサービス(シェアリングエコノミー)である。
一言でいうと我々の所有概念は、【モノを所有】するから、その【モノを使用する権利を所有】する概念に変わってきているのである。
【モノを使用する権利を所有】では、言い換えればすべてを所有していることにもなる。
Kindle Unlimitedではそこに無数の本を所有している
Apple Musicでは何千万曲も所有していることになる
YouTubeには一生かかっても見きれない数の動画があり
NetflixやAmazon Primeでは一昔前のレンタルショップが所有していた数よりも多い映画やビデオを所有している。
一括りでいうとこれらのデジタルコンテンツはもはや人間の100年程度の人生ではそのすべてを消費することはできない。これからも無限に増えていくコンテンツを月額1000円程度で所有しているのだ。仮に10のUnlimited サービスを100年間所有したとしても1200万円である。高いか安いかは置いておいて、あなたはどこに住んでいても引っ越ししても旅行中でも移動中でもクルマの中でも無数のコンテンツを持ち運ぶことができるのだ。
モノをたくさん持ちたい、買いたいそのために大きな家に住みたい、そのために稼ぎたい、大きな企業に就職して働きたいという一連の動機付が弱くなってきている。
あなたが心から本当にほしいと願っているものはなんだ?
モノを所有はしていないがそのすべてのモノを使用する権利を所有しているというライフスタイルは【ソフトウェアが世界を飲み込んだその後の時代】の最も本質的かつ根本的な要因である。
極端な未来の事例でいうとすでに多くの人が結婚や恋愛を(様々な理由で)敬遠し始めているが、結婚や恋人のようにだれかを所有するという概念もなくなり、その時々、その場所で、最も最適な人と一緒に過ごすことができる権利というものになりかねないし、その兆候がすでに出始めている。
【ソフトウェアが世界を飲み込んだその後の時代】で私が最も注目している変化は、【可視化される社会】である。
モノを所有しないスタイルよりも可視化される社会の方の方がこれからの市民生活で大きな影響を与えるだろう。
ここ1年、metoo運動に代表されるようにこれまで隠されてきたことがSNSやネットで公開され、多くの人の目に触れる様になった。パワハラ、セクハラ、権力を持った側の強制・強要、いじめ、不正、事故など、具体的にいえばアメフトタックル問題、学校の教師暴行動画、明石市長の暴言などもスマホのカメラやマイクで記録され、YouTube等であっという間に世間に公開される事例は枚挙にいとまがない。
これは、従来権力を持っていたの者が都合が悪いと隠していたようなことであるが、もはや隠すことはできない。だれかが撮影し、記録していてやましいことがあれば間違いなく公開される。
バイトテロなどは自らがそれを公開する時点で、親の世代には理解できないことであるが、、、
あらゆるところに監視カメラが付き、監視される社会の到来によりプライバー問題が取り上げられるが、もっと深刻なことは、あらゆる人々がスマホを持ち、いつでも動画を撮影できる状態であり、それを公開する行為で可視化される社会の方である。
監視カメラは自らその動画を公開することはないが、人は興味本位で結果責任を負わず公開したい動機がある。
一方でこの可視化する力を使えば今まで不正・違法行為、権力の傘で圧力を押し付けていた権力者側は痛い目を見るだろう。Wikileaksほどの脅威はないが、権力に対する抑止力が働くようになるだろう。
私も今回この力を使い行政の圧力行為を世に知らしめその正当性を問いたいと思っている。
私が共有したい実体験と観察している事例はテーマが広範囲に渡るのでそれぞれのテーマで事例を紹介していきたいと思う。
・多様化されたライフスタイル
モノを所有しなければライフスタイルの鎖は取り外され、自由になる。固定電話は携帯電話になったときと同じだ。ワイアレスライフスタイル、モバイルスタイルとは一体どんなものであるか示したい。
・多様化されたワークスタイル
人は新卒から就職したら定年までなぜ40年間も毎日決まった時間に自宅から会社まで通勤しなければならないのか、そのオフィスに行かなければ本当に生産性の高い仕事はできないのか、なぜオフィスに通うという習慣は変えられないのか。オフィスの呪縛から開放されたら何が起きるのか
・多様化された所有概念
なぜ人はモノを所有したがるのか。所有できるもの、できないもの、お金で買えるもの、買えないもの。ソフトウェアは何を所有させてくれるのか
・GAFAが作れないもの、なぜソフトウェアが重要か
私は常にIT業界の巨人のGAFAが資本力やその人材の力を駆使しても作り上げることができないものを探している。GAFAが人々にどのような影響を与えていて、どんな問題が新たに生まれているのか観察している。GAFAはインフラであり、それを利用するにはソフトウェアの力が必要だ。
・独りでいることの価値観、友だち、家族、恋人の関係
SNSやネットワーク社会の到来によって独りの概念は大きく変わった。独りでいること、独身でいることは悪か人格に欠陥があるのか。可視化された友だち、家族、恋人の関係はこれからどうなるのか。
・教育、親や先生のずれた知識と認識
現代はクルマと電気の社会であるが誰もが自動車整備士ではないし、電気技師ではない。すべての人がソフトウェアエンジニアに成る必要はないが、教育や先生、親はあまりにネット社会やスマホ社会の現実に無知である。すなわち技術と社会はまったく別物であるにもかかわらず、多くの人は社会の変化に無関心である。
・子どもは常に未来
なぜ子どもはYouTubeが大好きなのか。子どもたちにとって通信は電気ガス水道よりも重要なインフラであり、なぜスマホは何よりも大切なモノ!なのか。スマホを起きてから寝るまで使い続けることは本当に悪なのか
・ストレスの概念、何が一番の原因か
ネットとスマホは新しい社会を作り上げた。社会がある限りそこに新しい喜びとストレスが生まれる。ネット社会、スマホ社会のストレスとはなにか。なにか私たちの生活を窮屈にしているのか。スマホ中毒から逃れるにはどうすればいい?
・オンとオフの考え方
20世紀は1日24時間で生活の単位を設計した。だから新聞もテレビ番組も24時間がベースだ。スマホ社会には5分ルールがあり、秒単位で刻々と状況が変化する。あらゆるものが速く短かくなった時代におけるライフスタイルのオンとオフとは。
・可視化される世界・社会
今起きていることのほとどんがこの可視化される技術および社会によって影響を受けている。このシリーズの中の一大テーマでもある。常にだれかに見られている、聞かれているかもしれない世界、自分の知らないところでプライバシーが丸裸にされる可能性のある世界。監視カメラより恐ろしい人間の目、スマホ。
一方で、これまで権力を持って隠すことこのできた側にいた者には脅威でしかない。昭和の権力者のルールはもはや通用しない。今後10年あらゆる権力者の悪事が次々と明らかにされ、ネット社会で世間による審判を受けるだろう。
具体的な事例として、東京都中央区の行政運営について(不正・違法行為を)明らかにしてその責任を問いたいと思っている。これまで行政が隠してきたような市民・区民の圧力をこうして可視化させることができるという事例を示したい。
・モノがコミュニケーションを始める時
技術トレンドである、AIとIoT。AIのほとんどはただのビッグデータ、IoTはまだ昆虫のような単一機能の単細胞能力しか持っていないが、想像してほしい、もし昆虫や虫とコミュニケーションできたら、植物とコミュニケーションできたらどんな世界が広がるだろうか。次の100年の社会の変化を担っているのがAIとIoTだ。その未来を考えてみたい。
以上、取り上げるテーマや内容は変更があるかもしれないが、この7年~観察してきたことの集大成を共有したいと思っている。
Google 、Amazon 、Facebook、Appleはもはや電気ガス水道通信のよりも重要な生活インフラになった。この新しいインフラん登場により社会構造や人生、働き方そのものまで大きな変化を受けていることを知ってもらい、みなさんのこれからの人生において何かのヒントになればと思う。
※内容やテーマは変更になる場合があり
※シリーズは不定期に更新する予定
※このテーマに興味ある人は気軽につながってほしい、これもシェアの精神
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