沖縄県民投票:玉城知事の無責任と菅長官への提言

辺野古埋め立てをまぐる沖縄の住民投票については、「沖縄県民投票のあきれた欺瞞と正しい選択肢」「沖縄県民投票の愚劣と英国EU離脱からの教訓」というふたつの記事を書いているが、民主主義を破壊する茶番劇であった。

沖縄県サイトより:編集部

そもそも、①防衛政策は国全体の問題であって地元の意向で決まるべきものでない。しかも、たとえ、②地元の単なる希望としての意向調査だとしても地元というのは普天間や辺野古であって沖縄県でないし、③選択肢も適切でない。

埋め立ては本質な問題でなく、普天間基地の扱いが問題のはずで、選択肢は、①辺野古に移転を希望、②普天間に残留を希望、③県外を希望するがそれが可能になるまでは普天間残留の三択であるべきだ。ところが、辺野古埋め立てに①賛成②反対③どちらでもない、となると、普天間はどうするのか。

論理的にいえば、上記の②と③の合計であるから、普天間残留が支持されたという解釈が論理的な帰結だが、そういうつもりではあるまい。

まさに北アイルランドをどうするかを忘れて無意味な賛否を問うた英国のEU離脱国民投票と同じだ。EUから離脱すると南北アイルランドか北アイルランドとグレート・ブリテンのあいだかどちらかに国境が必要なのだが、それを無視して投票して袋小路に陥った。

県民投票で「反対」は何に反対か様々だろう。毎日新聞社と琉球放送が出口調査で辺野古移設に「反対」と投票した人にその理由をたずねたところ、「普天間飛行場は無条件撤去すべきだから」が34%、「自然環境が破壊される」28%、「事件事故・騒音などの基地負担が固定化される」24%と分かれた。一方、賛成票を投じた人の理由は「普天間飛行場の危険除去」が58%を占め、「経済振興につながるため」が17%、「米軍による抑止力維持のため」7%だそうだ。

この投票は国の権限たる防衛政策が変わらない限り意味のないものだ。だから、この県民投票を尊重せざるをえない玉城知事は解決不能の制約を受け、当事者能力を放棄したのに等しいだけで、メイ首相と同じ立場だ。

官邸サイトより:編集部

どうすればいいかといえば、論理的には馬鹿な投票を支持した責任を取って謝罪して辞任しかないが、そうはいないだろうから、もはやピエロでしかない。

それでは政府はどうかだが、もちろん、県民投票を分析し、参考にはすべきだが、それ以上にはどうしようもない。

私が菅官房長官ならということでいえば、①沖縄が現実的な選択をする話し合いをする気がないなかで、普天間危険除去のために政府の責任で辺野古への移転を断行する、②埋め立て面積を最小限にするために辺野古での新基地建設を陸上に移動させる、③今後の沖縄の負担軽減のために本土の各都道府県は可能な基地機能の移転受け入れに協力するように要請する、ということを宣言する。