法王周辺にいる「悪魔の手先」たち

2019年02月28日 11:30

バチカンで世界から司教会議議長たちが結集して聖職者の未成年者への性的虐待問題の対策が話し合われてからまだ2日も経過しない26日、オーストラリアのメルボルンからジョージ・ペル枢機卿(George Pell)が未成年者への性的虐待で有罪判決を受けたというニュースが流れてきた。

バチカンで行われた「世界司教会議議長会議」=22日(UPI)

同判決は昨年12月11日に既に決定していたが、他の容疑に対する審議が継続中だったために公表は禁止されてきた。枢機卿の1970年代の他の性犯罪容疑について裁判所が起訴を諦めたこともあって、今回発表されたわけだ。

この結果、ペル枢機卿は27日、未決拘留された。刑期は3月13日に決定される予定だ。有罪判決を受けた5件の刑期を合わせると、ペル枢機卿は50年間、刑務所に拘留されることになる。すなわち、バチカンのナンバー3だったペル枢機卿は刑務所でその生涯を終えることになるわけだ。ペル枢機卿の弁護士ポール・ギャルバリィ氏によると、枢機卿 は判決を不服として控訴するという。

ペル枢機卿(77)はフランシスコ法王の信頼厚い人物だ。法王が2014年に新設した財務事務局長官に就任し、法王が世界から選出した9人の枢機卿評議会(C9)の1人だった。そのペル枢機卿がメルボルン大司教区の司教補佐時代の1996~97年、12歳と13歳の教会合唱団の少年たちに性的虐待を繰り返していたことが判明し、2017年からメルボルン裁判所で公判が開始され、5項目の容疑に対し陪審員全員が有罪判決を下した。

ペル枢機卿に対しては性犯罪の疑いが久しく流れていた。ペル枢機卿に性的虐待された2人のうち1人は2014年にヘロイン中毒で死去している。家族関係者によると、「息子は自殺した」と主張している。犠牲者は性的虐待の後遺症に悩んでいたが、彼の話を誰も信じなかったという。他の犠牲者は長い間沈黙してきたが、2015年、警察に行き、枢機卿による性犯罪を告発したことで、ペル枢機卿の性犯罪が明らかになった経緯がある。

有罪判決を受けたペル枢機卿は全く動揺した表情をみせず、記者団の質問に対しては一切答えなかったという。ペル枢機卿が裁判所から出てきた時、抗議する市民から「化け物」、「地獄へ行け」と言った批判の声が飛び交った。

オーストラリア教会司教会議議長のマーク・コラリッチ大司教は、「オーストラリア国民、世界にとってショックだ。司教たちも同様だ。法は全ての人々に平等だ。公平な判決が下されることを願うだけだ」と述べている。

聖職者の性犯罪の対策に苦闘するフランシスコ法王(バチカン公式サイトから)

一方、バチカンは「心痛いニュースだ」と述べ、バチカン・ニュースも速報で報じた。ペル枢機卿はローマ・カトリック教会の聖職者の中で性犯罪で裁判所に有罪判決を受けた最高位の聖職者となる。それもフランシスコ法王の最側近だけに、法王にとっても大きなダメージだ。ペル枢機卿の有罪判決が最終決定すれば、フランシスコ法王は財務事務局長官の後継者を選出しなければならない。

フランシスコ法王は24日、司教会議議長会議で、「教会は今後、聖職者の性犯罪に対して厳しく処罰する。性犯罪を犯す聖職者は悪魔の手先だ」と強調し、性犯罪の撲滅に強い決意を表明したが、法王の周辺にはその「悪魔の手先」となっている高位聖職者がたむろしているのだ。

フランシスコ法王の友人でもあった米ワシントン大司教区のテオドール・マカーリック前枢機卿(88)に対し、バチカン教理省は16日、未成年者への性的虐待容疑が明確になったとして、教会法に基づき還俗させる除名処分を決定したばかりだ。枢機卿だった聖職者が性的虐待の罪で還俗の処分を受けるのは初めてだ。

フランシスコ法王は法王就任直後、バチカン改革を推進するために9人の枢機卿を集めた枢機卿評議会を新設し、教会内外に改革刷新をアピールしたが、9人の枢機卿のうち、今回有罪判決を受けたペル枢機卿のほか、ホンジュラスのオスカル・アンドレス・ロドリグリエツ・ マラディアガ枢機卿、サンチアゴ元大司教のフランシスコ・エラスリス枢機卿の3人の枢機卿が性犯罪や財政不正問題の容疑を受けている、といった具合だ。

フランシスコ法王の側近周辺に「悪魔の手先」がたむろしているのならば、法王がいくら声高く叫んだとしても聖職者の性犯罪は撲滅できないだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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