泉佐野市ふるさと納税のカラクリ:ルールはしっかりと法律で決めるべき

中田 宏

当ブログではこれまで、『【ふるさと納税】過熱する自治体の返礼品競争「あなたのふるさとはスペインですか?」趣旨を理解しましょう 2018/09/13』や『【ふるさと納税】アノ資料を入手! 2016/11/21』で、ふるさと納税についてはこれまでも何度か扱い、「あんたの故郷スペインじゃねだろう」とか、「高価すぎる返礼品」という事について皆さんにも問題提起をして考えてもらいました。

返礼品で人気のお商品といえば、米・肉・カニだそうですけれども、こういった商品は自分のお金で買って食べるものですよね。本来ならば自分が住んでる地域の住民税として納税するお金を別の自治体に寄付する。そのお返しに、例えばお肉が送られるということは、寄付をしたお金の中からお肉代が出ています。ということは、当然寄付総額は本来納税する金額よりは減っているわけです。

そもそも、ふるさと納税本来の趣旨は自分が生まれ育った故郷への寄附、あるいは応援しようとする自治体に寄付、寄付を通じて寄付先の地域を盛り上げようということでした。しかし、いつしか目がいった先は、豪華な返礼品ばかりでした。

今住んでいる自治体からすると、ふるさと納税をすることで住民税が減る。寄付された自治体も寄付金から返礼品分を差し引くので税収が減る。どっちにしろ、税収は減っているわけです。言い方を変えるならば、税金を使って返礼品を買っているということになります。

総務省は返礼品について今後、『寄付額の3割以下で、地場産品に限る』という方針を打ち出しました。そして、『この方針に従わなかった自治体は、ふるさと納税の対象から外す。』、すなわち納税者からすると寄付をしても特別控除が受けられなくなります。この方針適用は6月1日以降の寄付に適用する法改正を準備しています。

この方針に反旗をひるがえしたのが大阪府泉佐野市です。『100億円還元閉店キャンペーン』と銘打って返礼品のさらなる増量、例えば黒毛和牛2キロのところを、2. 2キロに増量し、さらにはAmazonギフト券をプレゼントするという挙に出ました。

ただし、ギフト券がもらえる対象は、泉佐野市のふるさと納税専用ホームページから直接申し込んだ場合のみで、『さとふる』や『ふるさとチョイス』などの民間事業者運営サイトからの寄付は対象外です。

これ実は今回の仕組みのミソでもあります。
というのは、民間事業者を介した寄付は、寄付額に応じて民間事業者に手数料が支払われます。直営サイトから申し込んだ場合、民間事業者に支払われていた手数料が浮きますので、その浮いた分をAmazonギフト券として還元するということです。よって、『ギフト券は返礼品に当たらない』と泉佐野市は説明しています。

私が今回の件で泉佐野市に一部の利を認めるのは、総務省が制度設計の失敗を口先指導で自治体に強要していることです。口先で指導する、これ通達行政などと言います。本来であれば、国と地方は対等な立場ですから、口先や通達で指導するのではなく、ルールを改める場合は、法律を改めるの。この流れが法治国家として当然です。

泉佐野市にしてみれば、法律に乗っ取って実施しているのだから、何ももんだいないではないか。と、こういうことですね。

私も首長経験者だから言えるんですけれども、地方自治体は法律の中で何ができるのかを考えるわけで、口先で「ああしろ」『こうしろ』と言われたのでは地方自治は成り立ちません。

ギフト券のアイデアは泉佐野市のまさに『最後っ屁』。
皆さんにも、返礼品の豪華さではなく、地方自治のあり方に目を向けるいい機会にしてほしいと思います。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年3月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。