仏枢機卿「性犯罪隠蔽」で有罪判決

2019年03月09日 11:30

欧州のカトリック教国、フランスのリヨン大司教区のフィリップ・バルバラン枢機卿(Philippe Barbarin )が7日、聖職者の未成年者への性的虐待事件を隠蔽したとして執行猶予付き禁固6カ月の有罪判決を受けた。同ニュースが流れると、同国のカトリック教会では大きな動揺が生じている。バルバラン枢機卿(68)は同日、判決を受け、リヨン大司教の立場を辞任する意向をフランシスコ法王に通達するという。

ローマ・カトリック教会の総本山バチカンでもバルバラン枢機卿有罪判決は衝撃を与えている。バチカン・ニュースは同日、リヨン大司教区のバルバラン枢機卿の判決について詳細に報道している。バルバラン枢機卿はフランス教会では性犯罪問題で有罪判決を受けた最高位の聖職者だ。

罪状は、1980~90年代、ペルナルド・プレナ神父(Bernard Preynat)が犯した性犯罪を知りながら警察側に告訴せず、隠蔽した容疑で、バルバラン枢機卿と5人の教区関係者が訴えられていた。今年1月の段階で検察当局は「有罪に持っていくことは無理」と判断していたが、リヨンの裁判官は「犯行は許されない」として執行猶予付きで禁固6カ月間の有罪判決を下した。カトリック教会の高位聖職者の犯行に対する信者や国民の目が厳しいという状況を裁判官が考慮した結果とみられている。

バルバラン枢機卿の弁護士Jean-Felix Luciani氏の言葉を引用し、バチカン・ニュースは今回の判決を「メディアからの圧力」と表現している。未成年者のボーイスカウト70人以上に1986~91年の間、性的虐待を犯していたリヨンのプレナ神父とバルバラン枢機卿の隠蔽容疑をテーマ化したドキュメント映画の影響が大きかったという。

バルバラン枢機卿は「プレナ神父の性犯罪を隠したことも沈黙したこともない」と反論している。同枢機卿は2015年8月31日、バチカンとの協議を経て、同神父の聖職を剥奪している。ちなみに、同枢機卿は今年1月、裁判所で「バチカンが私に願っていたことを実施した。賢明でなかった点は、同神父を2011年、ロアンヌ近郊(同国中部)の首席司祭区の責任者に任命したことだ。避けるべきだった」と述べている。

同国では過去、2001年、バイウ―市のピエール・ピカン司教(Pierre Pican)が3カ月の有罪判決を受け、昨年11月22日にはフランス中部オルレアンのAndre Fort司教が8カ月の有罪判決を受けている(いずれも、執行猶予付き)。今回のバルバラン枢機卿を含めると、3人の高位聖職者が未成年者への性的虐待の隠蔽容疑で有罪判決を受けたことになる。

同国司教会議(CEF)は7日、共同声明を発表し、司法側の決定を尊敬する一方、聖職者の性犯罪に対し真摯に対応していく考えを表明している。バルバラン枢機卿の弁護士によると、枢機卿は無罪を主張、上訴する意向という。

バチカンで行われた「世界司教会議議長会議」=22日(UPI)

バチカンで先月21日から4日間の日程で聖職者による未成年者への性的虐待問題について世界各地から司教会議議長を招集して集中的に話し合いがもたれたばかりだ。「世界司教会議議長会議」を呼びかけたフランシスコ法王は、「聖職者の性犯罪に対しては毅然とした対応をしていく」と表明し、教会側に対して、「聖職者の性犯罪を隠蔽することを許さない」と強調したばかりだ。ただし、バチカンの司教会議議長会議では具体的な対応については何も決定せずに終わった。

バチカンにとって不幸だったことは、同会議直後の先月26日、オーストラリアのジョージ・ペル枢機卿が未成年者への性的虐待問題で有罪判決を受け、その10日後、今度はフランス・リヨン大司教区のバルバラン枢機卿が執行猶予付きとはいえ、有罪判決を受けたことだ。2人の枢機卿が裁判所で聖職者の性犯罪に関して有罪判決を受けたことになる。特に、ペル枢機卿は財務事務局長としてバチカン・ナンバー3の枢機卿で、フランシスコ法王から特別信頼を寄せられてきた聖職者だ。

それにしても、フランシスコ法王は今後、聖職者の性犯罪に対してどのように防止していく考えだろうか。神父を希望する者への精神分析を含む厳密な調査から、聖職者の性犯罪問題を担当する特別専門家チームの創設、そして最終的には聖職者の独身制の廃止まで、さまざまな対応が考えられる。問題は、バチカン内で聖職者の性犯罪を大きなテーマにすることに強い抵抗があることだ。南米出身のフランシスコ法王は就任して今月13日で6年目を終える。高齢の法王(82)に残された時間は多くない。聖職者の性犯罪の多発で教会への信頼を早急に取り戻すのは難しい状況となってきた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年3月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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