欧州最強の格安航空ライアンエアー社長の奇想天外な発想

白石 和幸

ヨーロッパで最大の格安航空ライアンエアー(Ryanair)を1988年から30 年間経営して来たマイケル・オリアリー(57)社長は第一線を退き、今後はRyanairを含めRyanair DAC、Laudamotion、Ryanair Sun、Ryanair UKなどグループ全体を統括する任務を2024年まで担うことになるという(参照:elmundo.es)。

ライアンエアーCEOのマイケル・オリアリー氏(EL PAÍSより:編集部)

彼がRyanairと書かれた大きな模型の飛行機を手に持ったり担いだり、また中傷したい人物の服装をして記者会見などに臨む姿が今後は見られなくなる。彼のこれらの行動を見て、頭が少しおかしいのではないか、あるいは下賤な振る舞いだと批判されることもある。しかし、これも全てそのようにすることによって「マスコミがそれを取り上げてくれる。無料で会社を宣伝することになる」と考えての行動なのである。

出費をできるだけ抑え、あらゆる手段を利用して収入を増やすというのが彼の経営哲学である。出費は社員の給与、燃料費、飛行機の購入といったもので、それをできるだけ安く抑える。収入は預け荷物のチャージ、座席指定チャージ、機内販売といった手段で出来るだけ稼ぐ。一時、機内にあるトイレも有料化することを検討したこともあった。将来、機内で中立ちの状態で飛ぶ飛行機も採用するはずだ。そうすることによって、一機当たりの乗客を増やすという狙いがある。

まだそれを実施していないのは、欧州連合の安全規定でそれが認可されていないからだ。

これらのアイディアは全てオリアリー社長の考えに基づいている。彼はアイルランドの富裕農家に生まれた。6人兄弟である。英国の名門イートン校に匹敵するアイルランドのイエズス会のクロングウーズ・ウッド校で学び、その後ダブリンのトリニティーカレッジ(ダブリン大学)を卒業している(参照:elpais.com)。

大学を卒業して経理事務所で勤務したが、18カ月後に退社して自分で事業を始めることに決めたという。当時、お金を稼ぐには二つの手段があると考えた。小売りを始めるか、或いはアルコール類を商売にするパブを経営するかであった。パブを買うだけの資金がなかったので、ダブリンでキオスクを買った。そこで彼が実行したのはクリスマスも店を開けて商品を3倍の価格で売ることにした。27歳の時にはキオスクを数店もつまでになった。その後、それを投資家に売却。

経理事務所に勤務していた時に富豪で投資家のトニー・ライアンを知り合うようになり、彼の資産の個人アドバイザーになった。その後、1985年にトニー・ライアンがライアンエアーを設立してから、彼もその経営に携わるようになったのであるが、赤字経営から1991年に経営危機に陥り、その再建に取り組んだのがオリアリーであった。

その後、彼は格安航空として進展の可能性ありと見て、そのKnow Howの習得に米国のサウスウエスト航空に足を運んだ。そこで学んだものが、今日のライアンエアーが実践していることである。料金は破格の安さを前面に出し、その陰であらゆる面で追加料金を徴収するというシステムを実践して行くのだ。

ライアンエアーのチケット料金は常識を破る安さであることから乗客の不満に対しても破格の安さを口実にしている(参照:themanagerspodcast.com)。

また、奇想天外な発想で収入を増やそうとする姿勢に、時にライアンエアーとしてのブランドを傷つけることになるという不満に、彼は「そのブランドというのは何かね?」と尋ねるという。彼にとってマーケティングの戦略を考えることには関心がないのである。あらゆるアイディアが売り上げにつながることになればそれでよしとしているのである。

同様に、マーケティングの常識としてお客を大事するという考えから、お客の言っていることは常に正しいという取り組み方に発展することにも、彼は反論して「お客が時に間違っていることもある。だからそれを彼らに伝えることも必要なのだ」と述べている。

30年間ライアンエアーを陣頭指揮したお陰で、彼の資産はフォーブスによると8億8600万ユーロ(1150億円)、世界の富豪家リストの1999位にランキングされている。昨年の年収は326万ユーロ(4億2300万円)。アイルランドのジギンスタウンに1000ヘクタールの敷地を持ち、そこにグレゴリアン様式を象徴した別荘に住んでいる。ダブリンにも465平米の敷地のビクトリア様式のマンションを所有。また、スペインのマジョルカ島にも2837平米の敷地にバロック様式の小宮殿を購入している(参照:elespanol.cominformalia)。

最近3カ月の業績は2000万ユーロ(26億円)の赤字を計上。因みに、一年前の同時期は1億560万ユーロ(137億円)の業績を上げている。

しかし、最近はパイロットや客室乗務員のストの影響でフライトのキャンセル、パイロットのライバルへの集団移籍などがあり、株主や組合は経営トップの交代を要求するようになっているという。

更に、新しい顧客としてビジネスマンの利用客を増やしたいと望んでいる。その場合はお客への対応もサービス精神をより充実させたものが必要となって来る。それにはオリアリー社長は適さない。しかし、今後のグループ全体の発展を図る為にそれを統括してマネージメントするには彼が適任者だと考えたようである。