日本の家電や半導体が売れなくなった本当の理由 --- 水口 進一

2019年03月15日 06:00

かつての日本は家電や半導体が売れまくっており、日本の技術が世界のなかで特別に優れていた時代だと思っている人は多いでしょう。しかし、日本の家電や半導体が売れていた1980年代までの日本の技術貿易収支は全体で見ると赤字で、日本の技術が他の先進国と比べて優れていたわけではありません。

日本の長期の技術貿易収支の推移は平成19年科学技術白書 第2-3-22図 わが国の主要業種の技術貿易収支比の推移 を参考にしていただきたいのですが、日本の工業製品が売れまくっていた1980年代まで製造業のなかで技術貿易収支が黒字だったのは自動車だけで、それ以外は赤字でした。

そしてバブル崩壊以降に多くの産業で技術貿易収支が黒字化し、このグラフでは平成17年までしかありませんが、現在の統計を見ても日本の技術貿易収支は家電や半導体が売れていなくても黒字が増え続けています。

日本の家電や半導体が売れなくなって日本の技術力が落ちたと嘆く人は多いですが、実際は日本の技術貿易収支は黒字が増え続けており全体的には日本の技術力は落ちていません。

一方、家電や半導体を世界で売り続ける韓国の技術貿易収支はずっと赤字です。家電や半導体は高い技術が必要と思いがちですが、実際は技術貿易収支が赤字の国のほうが強く、技術力とそれを売れるものに変える経営力は別物なのです。

現在の工業製品は複雑に技術が絡み合っており、一社の技術だけで製品を作ることはできず多くの技術を外部調達しなければなりません。そして技術を武器にする企業はライセンスやコア部品、製造装置に特化して最終製品は作らない企業が増えています。

そうなると、工業製品において技術は外部調達して生産は組み立てるだけにする分業体制が成立し、製品を売るうえで求められるのはコストダウンやマーケティングになります。特に量販店で売るような安さが求められる製品においては生産が標準化されて差別化するところが少なく、低賃金、通貨安を武器にする途上国優位の市場になりがちです。

もし先進国がこうした市場で戦うのであれば、生産はアウトソーシングしてデザインや設計に特化するといった途上国との差別化が必要になり、単純に技術を持っていれば製品が売れるというわけではないのです。

かつて日本の家電や半導体が売れていた時代は日本の技術が優れていたのではなく、技術を外部調達して売れるものを作ることに徹していたから強かったのです。そしてバブル崩壊後に技術貿易収支が黒字化していることを見てもわかるように日本の技術力は上がりましたが、技術を過信してそれを売れるものに変えるコストダウンやマーケティングをおろそかにしてきたことが現在の家電や半導体の凋落につながっています。

日本の家電や半導体が売れなくなったのは技術力が落ちたのではなく、技術を過信して売れるものにかえることをおろそかにしてきたことに原因があるのです。

水口 進一 京都大学経済学研究科卒の個人投資家
経営指標や資本効率に基づいた経済・経営記事を投稿しています。

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