麻生氏の物価問答の珍答弁は漫画

2019年03月15日 06:00

異次元緩和の失敗を認めよ

2%の物価引き上げ目標について、麻生財務相が国会答弁で「2%に達していないのを理由に怒っている一般庶民は、私の知るところでは一人もいない」と、発言しました。失言なのか舌足らずなのか判然としない麻生発言が、またひとつ語録に加わりました。

12日の参院財政金融委員会で答弁に立つ麻生財務相(参議院インターネット中継より:編集部)

日銀は怒涛のように通貨を市場に供給し、物価を上げようと異次元金融緩和を数年、続けています。基になった貨幣数量説は単純化した極論にすぎず、実際に物価は0・9%しか上がっていません。政府・日銀は「2%程度の物価上昇は需要と供給を適度に刺激し、景気に好影響を与え、健全な経済に戻せる」ことを願ったのに、ほとんどの人は、好景気を実感していると言っていません。

本来なら政府・日銀の不一致

アベノミクスの柱である異次元緩和は失敗策です。日銀の責任が問われないのは、「好景気でもないし、賃金も増えないし、年金政策も抑制的だから物価は上がらないほうがいい。1%程度の物価上昇にとどまっているのなら、失敗策であったほうがよい」と、多くの国民は思っているからです。

日銀むけの発言なのか、麻生氏は物価安定目標について「少し考え方を柔軟にしても、おかしくない」と、述べました。黒田日銀総裁は「景気情勢に対応して、必要ならば追加緩和を辞さない」とし、異次元緩和策を失敗だとは認めていませんから、本来なら政府・日銀の重大な不一致です。

この発言は麻生氏にしては、珍しく正解です。誤っているとすれば、「金融政策に財務省が口を挟むのは問題」との部分です。政府・日銀の共同声明(2%目標の達成)によって日銀の独立性はすでに損なわれています。副総理でもある麻生氏が、目標の修正を提起してもおかしくないのです。

そこまではいいとして、日銀が市場に通貨を供給するために、国債の大量購入(16年は最高の80兆円)を続け、発行額の4割以上も日銀が保有していることをどう考えるかです。さらに日銀は上場投資信託(ETF)の大量購入も継続しており、損失が発生したらどうするかです。

口を閉ざす逃げ腰の日本

この重大問題について、首相も総裁も口を閉ざしていいます。そんなことを続けるうちに、世界景気の停滞が示唆され始め、米国は金融緩和策の停止、縮小(正常化)を今年は見送ることにしました。欧州も同様で、主要国の中で態度を明らかにしていないのは日本だけです。

重大な問題こそ政権は態度を明らかにし、議論すべきなのに逃げ腰です。白川・前日銀総裁は「固定的な数値の物価目標を短期の期限(2年)を区切って追求する経済運営は問題だ」と、強く批判しています。こんな時こそ、野党は異次元緩和の終了、副作用に対する問題を提起して、政権と対峙すべなのに、国会論戦をみると、その意欲も知恵も感じられない。

物価が上がらない背景には、「経済、産業のグローバル化によるコストの下落」、「原油下落などの海外要因」、「先進国における飽和状態の需要」、「ネット通販の拡大による物価下落」、「賃金も上がらず消費も伸びない」などでしょう。上がらなくなった物価を異次元緩和で無理に上げようとして、日銀が国債を買い込み、その結果、財政は放漫になり、100兆円を超える予算が5年も続いている。

財政危機なのに、国は国債を原資に財政規模を拡充し、日銀には債務超過(財務破綻)に陥った場合への備えがない。「怒っている一般の庶民はいない」どころか、一般庶民が気がついた時には「時すでに遅し」となりかねないのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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