望月記者ら抗議デモ、底なしの底抜け感を笑う

秋月 涼佑

東京新聞の望月記者が、新聞や民放の一部労組関係者と官邸前で抗議デモを行ったとのこと。この素っ頓狂さは底なしだと、微笑を通り越して大笑いしてしまった。アゴラ新田編集長も、早速その”勘違い”に言及されている。

メディアが立ち上がる?望月衣塑子とバズフィードの勘違い

シュプレヒコールではなく、記事で訴えるべきでは?

この人達の周囲には「デモするぐらいだったら記事、書けよ」と一言諭してあげる人はいないのだろうか。本当に不思議だ。ジャーナリストがもし何らかの特権を持っているとすれば、取材し記事を書くことを職業とする”立場”、そして何よりその記事を発表し読んでもらえる”場”を持っていることに他ならないだろう。

そのパワーは強力で、実際に報道の力によって首相の首が飛んだ例も一度ではない。立花隆氏による「田中角栄研究―その金脈と人脈」(文藝春秋)が筆頭だろうか。その緻密な取材内容と記事のパワーで、圧倒的権力を誇った田中角栄氏の逮捕、自民党派閥勢力の動揺、更には55年体制崩壊へ至る端緒を作った。

これこそ全ての政治家が震撼するジャーナリズムの底力に他ならない。当時活字ジャーナリズム全盛の時代、立花氏の告発を受けて以降一連の新聞・雑誌報道の迫力は、子供心にも非常に印象的であった。その後も、朝日新聞のスクープによるリクルート事件では政治家や官僚が多く逮捕されたし、サンデー毎日の芸妓スキャンダルでは宇野総理の首が69日で飛んだのだ。

望月氏に何か主張や問題意識があるのであれば記事にして世に問えばいいのである。もしその記事が核心に迫るものがあれば、オールド左翼一つ覚えのシュプレヒコールなどよりもはるかに世の中に与える影響力があることに疑いの余地がない。

それでも、延々トンチンカンな振る舞いを繰り返しているということは、本アゴラでいみじくも高山貴男氏が看破したように「意欲はあるが能力はない」のだろうと判断せざるを得ない。少なくとも私にとって、望月氏のステレオタイプな言説には1円の価値もないが、この高山氏の記事からは多く得るべき視点がある。

服装もプレゼンテーションの一つ

その鼻息と裏腹に論点さえ良く分からない珍騒動のため、もっぱら変なところに目がいくのだが、望月記者が着ていた装束も大いにいぶかしいものであった。”モンクレール”のダウンコートである。

YouTubeより:編集部

勿論どんな格好をしようと個人の自由であるわけだが、メディアにアピールする望月氏勝負の場とすれば、プレゼンテーション、それなりの意図があってしかるべきである。人気のあまり偽物も多く出回るモンクレールではあるが、本物であるとすればこのダウンコート30万弱のお値段ではないだろうか。

モンクレールは1952年フランス発祥で、もともとは登山家や極地探検家向けの高機能ウエアから始まり、1999年に春夏コレクションを発表して以来トム・ブラウンなど時々の先鋭的なデザイナーとコラボするなど、高機能にしてファッショナブルなアパレル製品に定評がある。

もともとアルピニストを顧客にするなど生粋のヨーロッパ貴族社会をバックグラウンドに感じさせるブランドであり、ハイファッション化してからも高価格帯であり高級志向に磨きがかかった。特に人気があるのが、望月記者も着ていたダウン製品である。軽くて、暖かいのに見た目はスマート。確かに一度着ると手放せなくなる逸品である。

もちろん働く女性として、自らが稼いだお金でファッションを楽しむこと自体は大いに結構である。しかしながら、記者が公の場に出る格好としてはどうか。望月記者は東京新聞社会部の記者とのこと。東京新聞の紙面は、比較的に社会的弱者を取り巻く環境や公平性への問題提議に力を入れている印象である。たまに目を通すその紙面や論調に対して、モンクレールは全く合わないと感じる。

この装束一点を見ても、またまた望月記者のジャーナリストとしてのプロ意識に疑問を感じてしまうのである。

たかが着るもの、されど着るもの。装いに感じられるプロ意識の差

一方で、望月記者が目の敵にしている閣僚たちの装いは、見事なまでに職業人としてのプロ意識に貫かれている。中でも長年常連の青山のテーラーで仕立てているという麻生副大臣のスーツが別格だ。フルオーダーというのは存外簡単なものではなく、注文する側の見識や品格がいみじくも出るものだ。勿論、出自がさせることではあるだろうが、麻生氏の装いは階級社会のヨーロッパの政治家に対しても決して引けを取らないものだろう。

それに比べると安倍総理のスーツは政治家の定番で『銀座英國屋』など老舗テーラーのものが多いと言われるが、あまり趣味性は感じられない。とはいえ。スタイルも良くスマートな着こなしには安定感がある。

何より、凄みを感じさせるのが菅官房長官のスーツである。仕立て服というのは、どこかしらにテーラーのクセや特徴が出てしまうものだが、凝りを感じさせない中庸さ。失礼ながら、ちょっと平板な感じもあり、吊るしの庶民的なものではとさえ感じさせる。色味もとにかく徹底して地味。この装いが逆に凄みを感じさせるのである。

政府インターネットテレビ:編集部

実力者と言われながら、決して出自の違う安倍氏や麻生氏と張り合わない抑制感。重い立場になっても権力の立場をひけらかさない凡庸に徹するスタイル。菅氏の苦労人としての用心深さをこんな部分にも感じてしまう。これでは望月記者のようなトンチンカンでは勝負になるわけもない。

桜が蕾をつける季節に30万円の貴族的ハイブランドのフルレングスダウンで、記事も書かずにシュプレヒコールをあげる社会派?の望月記者。底抜け加減だけは、一足早い花見の宴のようでもある。

<秋月涼佑 望月記者関連記事>

望月記者と大塚久美子社長「怖いもの知らず」の醜悪

秋月 涼佑(あきづき りょうすけ)
大手広告代理店で外資系クライアント等を担当。現在、独立してブランドプロデューサーとして活動中。