バロンズ:Fed、金融政策の抜本的な見直しに取り組む

2019年03月18日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーにグローバリゼーション後退に伴うリスクを掲げる。世界貿易機関(WTO)によれば、1990年代の世界貿易は成長率の約2倍のペースで拡大してきたが、2012年以降は成長率を僅かに上回る程度に鈍化した。今年の世界貿易の伸び率については4%増から3.7%増へ下方修正し、1〜3月期は2010年水準への減速を見込む。米中通商協議では妥結の糸口が見えず、英国の欧州連合(EU)離脱は新たな通商の障壁を生み出しかねない。また、インドは2018年12月に電子商取引プラットホームをめぐり、国内企業を守る狙いで新たな規制を設けた。さらに世界経済の鈍化も重なり、WTOも見通しを引き下げざるを得なかったのだろう。

このような逆風が吹き付けるなか、コンサルティング会社大手ベイン・アンド・カンパニーによれば、中国と取引を行う200以上の多国籍企業の幹部の6割が、米中通商摩擦によりビジネス戦略を再検討する余地ができたと回答、42%が2020年に向け新たな仕入れ先を探すと予想、42%が新たな原材料の調達先を見つけると応えた。企業がグローバリゼーションに頼れなくなった今、どのような投資が求められるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は金融政策の見直しを図るFedにスポットライトを当てる。抄訳は、以下の通り。

Fed、熟考する時に直面—The Federal Reserve Faces a Reckoning.

米連邦公開市場委員会(FOMC)は、次回19〜20日開催の会合でFF金利誘導目標を据え置く見通しだ。保有資産の圧縮を終了するシナリオについても、示唆を与えるかもしれない。こうした政策決定は、一世代以上にわたって行われていなかった金融政策の機能をめぐる協議の過程で、生み出されることになるだろう。

2018年12月のFOMCで25bpの追加利上げに踏み切り、経済・金利見通しを下方修正してから、様々なことが変化した。パウエルFRB議長は、1月4日の講演で利上げに「辛抱強くなれる」意思を表明、保有資産の圧縮にも柔軟な姿勢を打ち出したものだ。お陰で、2018年10〜12月期から下落していた米株相場をはじめリスク資産が買い戻され、3月15日時点で2020年1月までの利下げ織り込み度は37%近くへ上昇した。

次回19〜20日開催のFOMC後に予定する記者会見で、パウエルFRB議長は声明文や政策決定などについて質問を受けるのだろう。将来の道筋について言及する可能性は否定できないが、TV局CBSの看板番組「60ミニッツ」のインタビューでは、前任者のように今後の見通しについての言及を避けたことが思い出される。

Fedウォッチャーの目と耳は、政策の狙いとアプローチがどのように進展していくのか、それに関するメッセージに注がれよう。足元で、Fedは最大限の雇用と物価2%という2大目標をほぼ達成している。しかし金融危機後に未曾有の緩和策に回復を促してから10年が経過し、経済は減速の兆しを見せる状況だ。かつてダラス地区連銀総裁のアドバイザーを務め、現在はマネー・ストロングというニュースレターを発行するダニエル・ディマルティノ・ブース氏はブルームバーグに寄せた論説文で、Fedやその他の中銀が資産価格、株価、インフレなどの上昇をもたらしたと同時に、持つ者と持たざる者の格差を拡大させたと指摘する。その上でブース氏は「もし量的緩和世代を正当化していた『資産効果』が表れていないなら、最も必要とされる層にトリクルダウンが行き渡っていないなら、Fedは失敗を認め新たな政策の枠組みへのドアを開ける時間を逸したも同然だ」と語る。

英フィナンシャル・タイムズ紙の主席経済解説委員であるマーティン・ウルフ氏は、長期停滞を回避すべく中銀はあらゆる行動を取ったした上で、「金融政策は成り行きをたどる」と悲観的だ。そのウルフ氏は、かつてほどではないとはいえ金利は実質ベースで下限の水準にあると指摘する。しかし金利が低水準にあり、一部ではマイナス金利であってさえも、経済を押し上げるには至らず、かつて野村総研のチーフ・エコノミストであるリチャード・クー氏が語ったように「バランスシート・リセッション」から抜け出せずにいるようだ

JPモルガン・チェースによれば、マイナス金利の債券は10.2兆ドルに及び、2017年12月末以来で最大の水準にあるという。一部では、企業や家計が低金利によって拡大した債務の返済を迫られ、それが経済を押し下げていると主張する有様だ。極端に言えば、複合大手ゼネラル・エレクトリックこそ、まさに成長戦略より債務縮小を選んだ典型例だろう。

金融政策が袋小路に入るなか、ウルフ氏は需要喚起に財政政策の必要性を訴える。さらに一歩議論を進めるなら、これは現代貨幣理論(MMT)、すなわち自国通貨で借入を行う国家はその債務規模に制限されないという議論の採用という話になるのかもしれない。しかし、パウエルFRB議長はインフレが上昇するならば、財政政策は引き締められるべきと発言、主流のエコノミストようにMMTに反対の立場をとった。

一方で、保守派はFedが2015年12月から9回行った利上げと、2017年10月開始した保有資産の圧縮(2017年10月の4.4兆ドル→直近で3.9兆ドル)より行き過ぎた引き締め効果をもたらしたと批判する。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は論説で、金融政策を舵取りする上で20世紀前半に活躍したスウェーデン人エコノミスト、クヌート・ヴィクセルが主張したように、コモディティ価格と金融政策を結び付けるような政策を提唱した。また、足元のコモディティ価格の下落は過剰な金融引き締め策を示唆すると主張した。

Fedの保有資産、3.9兆ドルまで縮小。

bs

作成:My Big Apple NY

Fedは物価目標のターゲットとして全体の物価を取り上げ、コモディティ価格と紐付けしておらず、21世紀に入ってからは特にそれが顕著となっている。Fedの問題は、物価が継続的に2%以下で推移していることだ。その対応策として、”物価水準目標”が取り沙汰されている。2%の物価目標が達成できない場合、逆に2%を上回る水準を許容するというもので、持続的に低いインフレが景気後退回避への戦いを困難にさせていると説く当局者にとっては有意義な議論とされている。しかし、批判者は2%のインフレ率は36年間で1ドルの購買力を半減させるといい、それは物価安定ではないと主張する。

このような政策の転換をめぐる議論は、クラリダFRB副議長の下で進んでいる。今後どうなるのか、徐々に全貌が明らかになるのだろう。


アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今回のコラムは結びにクラリダFRB副議長に期待するような文章をもってきました。パウエルFRB議長、銀行規制担当のFRB副議長であるクオールズ氏と違って、経済学の博士号を有しているためと考えられます。

そう言えば、2018年10月の「中立金利を上回る利上げ」を示唆したパウエルFRB議長の方向転換の地均しを行ったのは、2018年11月16日にCNBCインタビューに応じたクラリダFRB副議長でした。同氏はFRB副議長指名の打診を受けた当初断ったとされながら同職に就任したわけですが、その時に金融政策の抜本的見直しの旗手となることを決断したのでしょうか?

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年3月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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