ロケンロール 無冠の帝王 内田裕也よ永遠に

「内田裕也はレジェンドだ」

そういう話をよく聞き。20代前半の頃だろうか、溢れるばかりの期待を胸に、私は深夜のテレビで彼が主催する「ニューイヤーズワールドロックフェスティバル」を見た。何か凄いものが始まるのではないか、人生変わるのではないか、一気にドロップアウトするのではないかなど、期待していた。

内田裕也オフィシャルサイトより:編集部

しかし、出てきた内田裕也はだいぶお疲れ気味で。ロケンロールを連呼していた。他のアーチストも、レジェンドなのだろうが、当時の私は特に熱くもならず。なんせ、内田裕也のヒット曲をしらない。というか、彼にはヒット曲がほぼない。代表曲すら怪しい。

よく、一発屋というが、一発があるだけエライ、オワコンというが、それは逆にコンテンツとして成立していたこと、人気や存在感がそれなりにあったことを示す。

しかし、そんな内田裕也がレジェンドたり得たのは、昭和という時代が、いや平成という時代ですらも、寛容だったからか。ロックだった。しかし、何がどうロックだったかよくわからない。ヒット曲も代表曲すらなく、ロックかどうかも分からず、しかし強烈な存在感があった内田裕也はすごい。ピエール瀧逮捕が吹き飛ぶほど、ではないが、死去が話題になるのはすごい。

ロケンロールと連呼したが、内田裕也のロックはよくわからない。しかし、このよくわからない姿こそが内田のロックではないか。

樹木希林と別居しても離婚しない夫婦であり続けたのも、何かこう、彼の魅力を物語っていた。リクルートのゼクシィのCMが流れた時に逮捕されたのは本当に迷惑だったようだが。しかし、樹木希林が一人で出るバージョンを作るというウルトラCというか、ロックな展開で乗り切った。担当者は国会議員になった。

本当のロックとは何か。まさに週末、そんなことを考えた。内田裕也さん、あなたを本当のロックとは呼びたくない。だけど、あなたを通じてロックを考えた。キッカケくらいにはなったよ。そして、ヒット曲もなく79歳までこの世界で生き延びたことこそ、ロックなのだろう。ありがとう。

ロケンロール。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年3月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。