・結論から言えば「パチンコホールが上場できないのは違法営業をしているから」である。

・普通に考えればパチンコホールは上場していてもおかしくない業態である。業界トップのマルハンの売上は1兆円を超えており、また、マルハン自体も上場の意思を持っている。実際2000年代前半に何度か上場申請をしたが「パチンコホールの営業は合法とは言い切れない」と却下された。

・ではパチンコホール営業のどこに合法性の疑義があるかというと「①三店方式による換金、②遊技機の釘調整」の二つである。このうちどちらの方がより問題かと言えば、世間のイメージとは異なるかもしれないが、「②遊技機の釘調整」の方である。

・三店方式についてはかつては警察庁もグレー扱いしていたが、最近では「風営法の範囲内で行われる限りでは問題ない」という態度を示しており、2016年の緒方林太郎議員の質問主意書に対して以下のように答えている。一部の方は残念かもしれないが、警察庁の有権解釈内で行われる三店方式による換金はもはや「合法」といっても差し支えないかと思う。

・客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。

・ぱちんこ屋については、客の射幸心をそそるおそれがあることから、風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。

出典:平成28年11月18日 衆議院議員緒方林太郎君提出風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する質問に対する答弁書

・ということでむしろ問題は「②遊技機の釘調整」である。これもブログの他記事でさんざん詳しく語ってるのでここでは詳細は述べないが、パチンコ遊技機は型式検定を通過した後は、性能に影響するため釘の角度を変更してはいけないことになっている。釘をいじれば「不正改造」ということになる。しかしながら今でも毎日パチンコホールの従業員は釘を調整している。こちらは三店方式による換金とは違い明確な違法行為で、現在も継続して行われている。

・ただそもそも論を言えば「パチンコは釘をいじるもの」だったはずである。本当に釘をいじれなくなれば利益調整の手段がなくなり、パチンコホールの経営は成り立たなくなるだろう。釘をいじれば遊技機の性能が変わることは間違いないのだが、これは本来程度問題で「やりすぎてはいけない」という種の問題である。

・つまり現状警察は「釘を一切いじってはいけない」という達成不可能な規制を業界に対して強いていることになる。警察としてももちろんこのような事情は十分承知で、むしろ業界に対して達成不可能な規制を課し、通常時は釘調整を黙認しつつも常に業界に緊張を強いることで、業界に対する影響力ー統制を失わないように裁量的に利用している。

・こうした警察とパチンコの関係は極めて不健全で、それが様々な癒着ー利権につながっているのだが、詳細を知りたい方は新著を参照されたい(結局宣伝)

ではでは今回はこの辺で。

宇佐美 典也   作家、エネルギーコンサルタント、アゴラ研究所フェロー
1981年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済産業省に入省。2012年9月に退職後は再生可能エネルギー分野や地域活性化分野のコンサルティングを展開する傍ら、執筆活動中。著書に『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』(ダイヤモンド社)、』『逃げられない世代 ――日本型「先送り」システムの限界』 (新潮新書)など。