衝撃が走ったFRBの金融政策

2019年03月22日 14:00

専門家達だからこそ衝撃だと感じたのかもしれません。3月19日と20日に開催されていたアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)で2019年の利上げが実質的に否定され、なおかつ、連邦準備制度理事会(FRB)が進めていた膨らみすぎていた資産の縮小化を9月末で中止すると発表しました。これが想像以上のハト派的決定と受け止められました。

これだけ読むと知っている人にはふむふむとなりますが、興味ない方にはだからなんのこっちゃ、ということになりそうです。これを少しでも知っておくといろいろ応用が効きますので今日はこれを考えてみましょう。

パウエルFRB議長(FRB公式Facebook):編集部

パウエルFRB議長(FRB公式Facebook):編集部

FRBのパウエル議長は昨年までは強気の金融政策、つまり、利上げを継続的に行い、景気の過熱感を防ぐという姿勢を貫いていました。ところが、12月の利上げ強行と2019年以降の継続的な利上げ方針に対してトランプ大統領のみならず市場から大変なブーイングが巻き起こります。18年10月以降、明白に景気の変化が見て取れたのにも関わらず大手を振って利上げをしたのです。このため、市場はショック症状を起こし、クリスマス前に株価は大きく下落し、クリスマス休暇で市場参加者が少ない中、緊迫したムードとなったのです。

一般的にはパウエル議長が市場を読み誤ったチョンボと見られています。1月にFRB議長経験者のパネル講演を機にパウエル議長は方針変更に舵を切ります。そしてこの2カ月強の間に強気一辺倒だった金融政策を180度転換してしまったのです。個人的にはイエレン前議長ならもっとシームレスに行ったであろうこのかじ取りは実に乱雑であります。ドライバーが急ハンドルを切るためバスの乗客は揺られ過ぎて気分が悪くなる、というのが妥当な表現でしょうか?

さて、FRBが金利を当面いじらない(一部では下げの予想も出ていますがまだこれは時期尚早です)ということは専門用語で中立金利にあると言います。これは景気を過熱も抑制もしないという意味で妥当な水準にあるという意味です。現在の政策金利は2.25-2.50%でFRBの当初見込みの3%越えには利上げがあと2-3回分足りないのにもう十分ということなってしまいました。

パウエル議長はこれを海外の理由にしています。中国や欧州景気が低迷しています。事実、英国もスイスも今般、金利水準を維持しましたし、日銀はさらなる緩和することも視野に入れ始めています。つまり世界中の金利政策が弱気なのにアメリカだけ引き締める理由はないということになります。

理由はいくらでも上がるはずですが、基本はモノがあふれすぎているのに対して需要は偏りがあるから、ということでしょうか?企業は製造コストを安くするために新興国発掘に勤しみます。中国が10年ほど前に世界の工場と言われましたがある意味「通過地」であったわけで人件費が上がり、生産性が上がらない中国の時代が過ぎ去ろうとしているのであります。同様に資源開発も進み、70年代の石油ショックのような事態にはなりにくい社会が生まれているのです。

これは世界の経済がより平準化しつつあるともいえ、かつては先進国と新興国、途上国との格差を利用した「経済の水力発電」も高低差が小さくなりました。そのため、景気が異様にヒートアップし、政策金利が10%台などというのはもはや夢の世界で金融政策の神であるFRBですらその目標の高さを読み間違えたということになります。もっと言えばアメリカも欧州も「金融政策の日本化」、つまり上げたくても上げられない金利が待ち受けているのかもしれません。

では株式市場はどうなのかと言えばまごついている、というのが正直な反応であります。本来であれば金利の上昇バイアスがなくなれば株式市場にとっては好材料なのですが、リーマンショックから10年近く続いている景気上昇期の終焉を見て取っているのかもしれません。企業の1-3月決算ももしかしたたら下方修正があるかもしれないと思えばおちおち株も買えないという心配もあるのでしょう。

もっと嫌なことを言えば1-3月のアメリカのGDPは年率2%はおろかゼロ%台にとどまるのではないか、と見る向きもあります。個人的にはこれはいくら何でも弱気すぎるとは思いますが、経済統計は概ねよくありません。

世の中、金融政策がうまくいかないときには経済政策を出動させるというのが基本であります。ところが各国中央政府は住宅ローンの厳密化や新税導入、更には最低賃金上昇など政策自体が企業景況感にはマイナス要素が多くなっています。日本でも今年のベアがいまいちなのは企業の体力がそこまでなく、これ以上、首相に利上げ要求をされると経済が壊れるリスクがあったという理解をしています。

こうなると2019年の残り9か月は如何に平坦で落ち着いた景気を維持できるか、このあたりが一つのキーポイントになるのではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年3月22日の記事より転載させていただきました。

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