バロンズ:IPOで最も恩恵を受けるのは誰か?

2019年03月25日 11:30

バロンズ誌、今週はカバーにベビーブーマー世代の子供が与える定年後のリスクを取り上げる。米国ではミレニアル世代(1981〜96年生まれ)、あるいはジェネレーションZ(1997〜02年生まれ)の子供達が経済的な事情や離婚などといった家庭の事情から親元に残るケースが増え、ベビーブーマー世代の親達は退職できずにフルタイムで働かざるを得ない状況だ。シンクタンクであるピュー・リサーチ・センターによれば、2016年には25〜35歳の成人のうち15%が親と同居し、コンサル会社エイジウェーブによれば親の80%が子供に金銭的な支援を与え、その規模は年間5,000億ドルと退職後の貯蓄の2倍に膨らむ。かつてベビーブーマー世代が思い描いた悠々自適な引退生活が遠ざかるなか、彼らは将来のために何ができるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は新規株式公開(IPO)を掲げる。抄訳は、以下の通り。

新たなIPOをめぐる問題—The Trouble With the New IPOs.

それは、まるでTV向けの一場面のようだった。ジーンズ製造大手リーバイ・ストラウス(ティッカー:LEVI)がIPOを実施した21日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)は、デニムを身にまとったトレーダーが沸き、写真を撮影したものだ。歓声が広がるなかで株価は急伸し、公開価格の17ドルから32%高の22.41ドルで取引を終えた。

2回目のIPOにしては、上々の出来と言えるだろう。リーバイスが最初に上場したのは1971年で、当時若かったベビーブーマー世代にとって不可欠なブランドだった。主幹事は同時代の2大投資銀行であるリーマン・ブラザーズとディーン・ウィッター。その後、リーバイスは創業一族であるハース家主導で1985年に非上場となり、ハース家は「非上場化により、短期的にパフォーマンスを懸念することなく、長期的な視点を重視した経営を可能にする」との見解を寄せたものだ。

リーバイスは30年以上にわたり非上場企業だったなかで、自社株買いのための資金調達として高利回りの社債を発行してこなかったせいか、債務は10億ドルをわずかに上回る程度だ。公開価格ベースでの株価評価が66億ドルならば、借入過剰とは言い難い。一方で、IPOを通じて得たキャッシュはそれほど大きくはなく、6億2,300万ドルを調達したうちの1億6,100万ドルとなるだろう。残りの4億6,200万ドルは、複数議決権種類株式上場を通じ99%の議決権を維持するハース家に流れるためだ。いずれにしても、2018年末に7億ドルのキャッシュとフリーキャッシュローが2億6,100万ドルだったことを踏まえれば、IPO前から流動性は潤沢だったと考えられよう。

リーバイスによるIPOの成功は、25日週に続々と上場を控える配車サービス大手リフトやウーバー、シェアオフィス大手ウィワークなど、ユニコーン企業(未上場で評価額が10億ドル以上の企業)にとって朗報だったに違いない。しかし、もともとベンチャー企業家などの投資を受けて成長してきたこれらの企業がIPOに踏み切るにあたって、ひとつの疑問が生じる——なぜIPOを行うのだろうか?

IPO件数は、足元で低水準。
ipo
(作成:My Big Apple NY)

こうした疑問は、シュローダーズのリサーチ・アナリティクスのヘッドであるダンカン・ラモント氏が呈してきた。1996年以降、上場企業は半減し、株式市場は資金調達先としての役割が低下したも同然である。新たな企業は規制が厳しい株式市場ではなくプライベート・エクイティに頼ってきた。そのベンチャー・キャピタルやプライベート・インベストメント・ファンドなどは、ユニコーン企業などの投資家が上場時に株式を売却する傾向がみられる。足元で株価は、2018年10〜12月期の下落を経て、再び過去最高値に迫る。プライベート・ファンドなどにとっては、IPOに合わせた株式売却は、莫大な利益を得る最高の機会と言えるのではないか。

IPOは、創業者や従業員にとって重要である。賃金や賞与などとして与えられた株式を現金化できるためだ。ウーバーなどの一連のIPOにより、新たなミリオネアが誕生することだろう。

ラモント氏によれば、逆にIPOを通じ新たに株式を取得した投資家が必ずしも利益の果実を享受できるとは限らない。なぜなら、上場前に急成長してしまった場合、リターンが限られるためだ。ラモント氏は、株式市場こそ創業者や従業員、プライベート・エクイティなどが利益を確保する最大の晴れ舞台と捉えるが、それが真実か否かはリーバイスを始め、ウーバーなど今後IPOを控える企業の株価が教えてくれるに違いない。

——IPO後の株価動向を振り返ると、少なくとも2018年は10〜12月期に指数自体が急落した動きに引きずられ、惨憺たる結果となりました。例えば、調達規模1位で同年4月に上場した音楽ストリーミング大手スポティファイの場合、2018年のリターンは23.8%安に。スポティフィは直接上場だったため、通常6ヵ月とされるロックアップ期間(創業者や大株主であるプライベート・エクイティなどが株式を売却しない期間)を設けておらず、同社の大口投資家がいつ株式を売却するか不透明だったことが敗因のひとつとして挙げられていましたね。その他、仏保険大手の米国子会社アクサ・エクイタブル・ホールディングスも17.2%安テクノロジー大手のパグセグロ・デジタルに至っては35.9%安でした。そもそも、2018年9月までにIPOを実施した企業のうち、83%が上場までの過去1年間にわたって赤字となり1980年以降で最高ならば、上昇余地が限られたといっても過言ではなく。翻って2019年のS&P500のリターンは12.2%高と、2018年末の4.4%安から好転していますが、今後も好調を維持できるかは誰も分かりません。しかし、2019年にIPOを控えるユニコーン企業の多くが昨年同様、利益を計上していないことは確かです。

(カバー写真:Ed Dunens/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年3月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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