中国に甘い時代の終わり:習近平に冷たいパリの風

2019年03月26日 16:00

中国の習近平国家主席は21日から26日にかけてイタリア、モナコ、フランスの欧州3カ国を公式訪問中だ。イタリアとは一帯一路ペロジェクとについての協力に調印した。トリエステとジェノバ港の近代化を中国に託すつもりらしい。

独力ではどうしようもないので、一定の合理性はあるのだが、移民反対の「レーガ(同盟)」主導の連立政権が中国に門戸を開くのは合点がいかないことでもある。

しかし、イタリアには自分の生活さえ安全で好きなようにやれるなら、金持ちなら来てもらって構わないという伝統がローマ時代からずっとあるともいえる。イタリア国家なんてどうでもいいというのが、レーガやポデモスの感覚でもある。

仏大統領府公式FBより:編集部

フランスでは、まず、24日はニースのネグレスコ・ホテルに宿泊してマクロン大統領と首脳会談。ついで、25日はパリのエリゼ宮で晩餐会、そして、26日はユンケルEU委員長とメルケル独首相が加わって、事実上の欧州・中国サミットだ。

しかし、習近平を迎えるフランスの雰囲気はかつての友好ムードではない。トロカデロ広場では、チベット人たちが抗議運動を行い歓迎に反対し、欧州議会選挙に立候補する環境派のトップは、人権侵害や環境問題についてフランス単独でなくEUとして対応するべきだと訴えた。

この訪問に先立ち、欧州委は12日に中国を「パートナー」であると同時に「競争相手」と位置づけ10項目の「戦略見解」を公表していた。そして、22日に、ブリュッセルで首脳会議を開き、中国への新たな戦略を協議して貿易不均衡是正などへ対応を進めることで一致している。

ユンケル委員長は「中国はパートナーと同時にライバルだ。こうした状況に適応せねばならない」とし、声明では、中国対応を念頭に、欧州委員会は年末までに域内市場を歪ませている国有企業や補助金への対処をまとめることにした。また、政府調達分野での互恵的な市場開放を求め、第5世代(5G)移動通信システム整備についての安全保障確保のための共通対策をまとめることにした。華為技術(ファーウェイ)排除についての温度差調整をすることになる。

マクロン大統領は、22日に、「欧州が中国に甘い考えを抱く時代は終わった」としていたが、習近平主席を迎えても、人権尊重に留意して欲しいと釘を刺した。

これまでの媚びを売るような態度とはうってかわったものだ。エアバス航空機300機を購入する契約をはじめ、再生可能エネルギー、海運、銀行で400億ユーロ(450億ドル)の商談が成立した。また、フランス産鶏肉の輸入解禁にも合意した。

しかし、それでも、マクロン仏大統領は、「一帯一路」をけん制する立場を示した。

こうした冷たい対応の裏には、米中戦争の激化で、中国がヨーロッパに秋波を送らざるを得なくなっていることによって、ある程度、強気に出ても大丈夫という安心感も出てきたと言うことだ。それにエアバスは、ボーイングが新小型旅客機「737MAX8」の墜落事故で追い風が吹きそうなのに、生産ラインがいっぱいで増産できない状況だということもある。そもそも、737MAX8は、エアバス社のA320 neoが好評なので、あわてて開発した新型機で、その拙速さのつけが事故になったらしい。

それに一帯一路=シルクロードというのは、必ずしも、中国側から見た場合のプラス・イメージだけではない。それは、フン族やチンギスハンがやって来た道というネガティブなイメージもあるのだ。

こういう状況のなかで、日本はEUと連携を深めて日欧連合を成立させていくことが、ロシアや中国に対しても、さらにはアメリカをある程度は牽制する意味でもとても大事なことだと思う。

そんななかで、ゴーン事件のように日本のイメージを悪くするようなことは起こして欲しくない。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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