英国で子供たちのSNS利用に警鐘 インスタが「娘の死をほう助した」

2019年03月27日 06:00

(「新聞協会報」2月12日号掲載の筆者のコラム「英国発メディア動向」に加筆しました。)

英国で未成年者によるソーシャルメディアの利用に警鐘を鳴らす事件が発生し、運営側に悪影響防止策を求める声が高まっている。

Keith Cooper/flickr:編集部

2017年11月、ロンドンに住むモリー・ラッセルちゃん(14歳)が寝室で自殺しているのを家族が発見した。自殺の原因について特に心当たりがなかった家族がモリーちゃんが生前によく使っていた画像共有サイト「インスタグラム」のアカウントを調べたところ、「不安」、「落ち込み」、「自傷」、「自殺」などのキーワードにリンクされた画像を閲覧していたこと分かった。

死因審問はまだ行われていないが、今年1月、父親イアンさんはBBCの取材に対しインスタグラムのアルゴリズムが関連画像を集めて娘が閲覧できるようにしたことが自殺につながったと語った。「インスタグラムが娘の死をほう助したことには疑いがない」(BBCニュース、1月22日)。

父親のインタビューが公開された翌日、インスタグラムを所有する交流サイト最大手「フェイスブック」の英国・アイルランド部門代表者は自殺が「遺族にとって大きな打撃となった」ことに深い謝罪の意を表明した。

近年、ソーシャルメディアによる未成年の心身への影響が社会的関心事となっている。モリーちゃんの自殺で負の影響が改めて注目を浴びることになった。

モリーちゃんは「すべて私のせいです」という手書きの遺書を残していた。インスタグラムの自傷画像と自殺との因果関係は今後の死因検査で判明するが、両親は娘が自傷行為や自殺の画像共有を行っていたことを生前には把握していなかった。子供がどのようなソーシャルメディアを使っているかを知らない多くの親にとっても、大きな衝撃となる事件だった。

自傷行為とインスタグラム

12歳で自傷行為の画像をインスタグラムに投稿し、8000人のフォロワーとシェアした経験を持つリビーちゃん(16歳)がBBCにその体験を語っている(1月31日)。自傷画像を投稿するオンラインコミュニティの「一部になってしまった。止められなくなった」。インスタグラムが自分に自傷行為を始めさせたわけではないが、ほかの投稿者による自傷画像を見て「彼女はまだ生きている。それなら、自分ももっとやれる」と思ったという。

モリーちゃん事件後、インスタグラムは利用者が自傷コンテンツを見つけにくくするようエンジニアに依頼したと発表した。自傷、自殺などの画像をハッシュタグで集められないようにし、こうした画像に覆いをかけたり、推薦機能を使えなくしたりするなどの改造を行う予定だ。

以前からコミュニティ規則に反したと思われるコンテンツについて報告できるようになっており、13歳未満の子供がアカウントを作成していた場合、子供の家族がアカウントの閉鎖を依頼できる。ただし、インスタグラム自身がアカウントを閉鎖することは通常はない。未成年者のソーシャルメディア利用については親が責任を持つとみなすからだという。

元英国の下院議員で現在はフェイスブックのバイスプレジデントとなったニック・クレッグ氏は未成年者が安心して使えるプラットフォームづくりのためには「なんでもやる」と述べた(BBCのインタビュー、1月28日)。

子供に電話カウンセリングを行う慈善組織「チャイルドライン」は親ができることを挙げている。「子供と頻繁に話す(どのようなオンライン・サービスを使っているのか、安全に使うにはどうするか)」、「子供と一緒に子供が使うサービス、アプリを使ってみる」、「家族でルールを決める」、「子供がアクセスできる範囲を調節する」、「主治医に相談する(子供が自傷行為に及んでいないか)」、「学校の担当者に相談する」、「チャイルドラインの電話番号を教える」など。

教育省の外郭団体で、イングランドの子供の権利擁護に取り組むアン・ロングフィールド理事は、1月末、フェイスブック、インスタグラム、メッセージ共有アプリ「ワッツアップ」など大手ソーシャルメディア宛に公開書簡を送った。この中で、ソーシャルメディアの運営者が子供たちを守り、有害なコンテンツの削除速度を速めるため「デジタル・オンブズマン」の設置を提唱した。

下院は「オンラインの損害」についての報告書を発表し、通信・放送業界の規制監督組織「オフコム」を模したデジタル空間の規制監督組織の立ち上げを提唱した。ネット上の自由な情報の行き来を維持しながら、どこまで規制できるのかが大きな課題となりそうだ。


編集部より;この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2019年3月26日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。

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