うるさい監査役はいらない?日産ガバナンス改善特別委員会報告書より

2019年03月28日 11:30

3月27日夜、日産自動車HPより「日産自動車株式会社ガバナンス改善特別委員会報告書」が公表されました。昨日のエントリーで「定款変更よりも社内ルールの充実を」と書きましたが、私の予想以上にガバナンス改善に向けた提言が出されており、委員会自ら「この内容を実現するとなれば日産に相当の負荷がかかる」と案じているほど、委員会の「本気度」が窺われる内容です。なお、4月8日の臨時株主総会ではなく、6月の定時株主総会を目途に指名委員会等設置会社への移行を提言しているようです。

Wikipediaより:編集部

前会長ゴーン氏とともに刑事被告人となっているグレッグ・ケリー前代表取締役の「日産における地位と役割」にも触れられています。前会長ゴーン氏は、ケリー氏を「隠れ蓑」にしながら(何度も「ブラックボックス」という言葉が出てきます)、管理部門による不正防止や早期発見の道を塞いできた経緯が示されています。このようなブラックボックスを放置してきた日産の取締役会には問題があったと委員会は認定しています。

ただ、私が報告書の中で一番驚いたのが取締役会の平均時間とのゴーン氏の監査役への対応です。2018年に社外取締役2名を選任するまで、日産の取締役会の平均開催時間はわずか20分(!)だったそうです。スルガ銀行さんの1時間にも驚きましたが、20分となると、なにも議論しないに等しいですよね(業務執行報告もなされないとなりますと会社法違反ではないかと?)。

発言した取締役や監査役がいた場合には後でゴーン氏が呼びつけることがあったそうで、「うるさい監査役」は再任させなかったようです。また、「何も言わない監査役を探してこい」と命じられた方もいらっしゃるそうで(うーーーん、そういえば過去に「きみは『御用監査役』でいればいいんだよ」とおっしゃった社長さんの事件を扱ったことがあります・・・)

特別背任の成否は別として、利益の付け替えに関する契約は、どうも取締役会には上程されていなかったと思われます。利益相反取引の事前開示をしていないとなりますと、それ自体、前会長さんは会社法違反で過料の制裁の対象になるかもしれません。

2018年の夏、日産の某監査役(週刊文春では実名が出ていましたが、ここでは伏せておきます)のところへ内部通報が届き、某監査役は調査を開始したそうですが、この報告書でもニュアンスが示されているとおり、それまでに某監査役さんは非連結の海外子会社の調査などを進めていたものと思われます(このあたりは文春の記事より)。

内部通報を受領して2カ月、某監査役さんは内部調査の結果を現経営執行部と共有するわけですが、そのあたりの社内力学や司法取引に及んだ法務担当執行役員との接触(の有無)については報告書は明らかにしておりません。まあ、刑事手続が進んでおりますので、そのあたりはやむをえないところかと。

なお、改善特別委員会が示しているガバナンス改善に向けた具体的な提言ですが、これは日産固有の必要性に迫られたものではなく、今の時代は多くの上場会社にも要求されるところではないかと思いました。とくに「三様監査」の充実として、監査役監査や内部監査が実効性を持つためには、これくらいの本気度で取り組まなければ「経営者不正」に有効なガバナンスは機能しないと考えています。

海外では「ルノーが日産統合に向けた協議を再開しようとしている」と報じているそうですが、実際にはこういったことへも柔軟に対応できるようなガバナンスの構築が求められるのでしょうね。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年3月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。

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