日産の日本人社長、幹部は免罪か

2019年03月30日 06:00

もっぱらゴーンに責任

ゴーンを追放した後、日産の企業統治改革をどう進めるか。専門委員会が発表した提言書を読むと、ゴーンの独裁者ぶりがすさまじい。日本人代表取締役、担当社員はゴーンになぜもっと抵抗しなかったのか。あきれるほどの独裁者でしたから、楯突くのは無理だったでしょう。

日産サイトより

これほど経営の実態をリアルに書いた報告書は、めったにありません。委員会には日産の社外取締役が入っており、中立的な第三者委員会ではないにせよ、ゴーン体制の内情はよく分かります。報告書に「神格化」「個人崇拝」という表現が何度も。人事権、報酬、組織運営の全て握った独裁者です。

「経営に関与し、ゴーンの暴走を許した日本人トップらも起訴せよ。退陣させよ」という主張も聞かれます。「ゴーンの報酬の過少記載は形式犯にすぎず、違法性は問えないし、ゴーンは日産再建の功労者だ。ゴーン一人に責任を負わせるべきではない」という主張でしょうか。

何度か書いてきましたように、かりに「違法性」が立証されなくても、企業モラルに欠け、経営者として解任されるのは当然です。ゴーンを擁護する人たちはなぜ、もっとこの点を指摘しないのでしょうか。報告書をお読みになることをお勧めします。

報告書は日産のガバナンス(企業統治)の問題点を根本原因、取締役会、監査委員会、企業風土改革。企業倫理の再構築など多岐にわたって分析しています。ゴーンらに直接言及した部分を引用しますと、ゴーン一人で重要な意思決定を全てしていたことがよく分かります。

ゴーンに始まり、ゴーンに帰結する

「典型的な経営者不正である。しかも私的利益を追求している点で、これまでの経営者不正(粉飾決算、不正会計)と根本的に異なる」、「ゴーンは不正を発見しうる管理部署の権限を本人をはじめとする特定少数者に集中させることでブラックボックス化した」。厳しい指摘です。

「個人の私的利益の追求」と表現したのは、不正行為の責任はゴーン個人に始まり、ゴーン個人に帰結するとの意味でしょう。「特定少数者への権限集中」は、日産幹部の日本人による組織的な荷担はなかったことを強調したかったのでしょう。

「取締役会の開催時間は平均して20分だった。質問は意見がでることを嫌い、意見を述べた取締役や監査役を呼んだ。うるさい監査役は再任せず、何も言わない監査役を探してこいと言われた者もいる」。新聞情報では短い時は9分だったそうです。まるで個人営業の中小企業のようです。

さらに「ゴーンの意見に異を唱えた人材が左遷・退社させられたという指摘が複数あった。業績目標の設定も事実上、ゴーン一人で決め、短期の成果主義、効率主義を偏重した」と。会長在任中の前半は日産再建のカリスマ的経営者として評価されました。それは前半までの話で、不正は後半に集中しました。

この体制では正義は通らない

「報酬の支払い、資金の私的利用に関する問題が指摘されると、CEO案件(ゴーンの自由裁量で使える資金)だとして、説明を拒んだ」、「法務室や監査室が探知した案件も、ゴーン、ケリー(起訴、逮捕)らの特定少数者への権限集中に阻まれ、それ以上の追及できなかった」。

現在の西川社長も恐らく、ゴーン側近のケリー(代表取締役)には頭が上がらなかったのでしょう。もっとも西川社長に対しては社内の不満が強かったといいます。「ゴーン不在の会議では全く発言しないくせに、ゴーンがいると興味があることばかりを話題に出した。火の粉が降ってきそうになると、他人の責任にして逃げた」(『日産vsゴーン』井上久雄著)そうです。

日経の社説は「特別委が現経営陣の責任論を素通りしたのは残念だった」(29日)です。朝日は「西川社長はゴーン体制下で経営を担ってきた。不正があったとすれば、経営者として看過した責任は免れない」です。読売は「西川社長ら現在の幹部は責任を重くを受けとめてもらいたい」と。誰が書いても同じになる常識的すぎる指摘です。

ではどう責任を受けとめるのか。辞任、退職、停職、減給か。それとも検察が動くか。そこです。今度の専門委は「ゴーンの私的利益を追求した不正」「ゴーンらへの権限集中」と総括しました。つまり個人の責任はないといいたい。ゴーンはめぼしい人材は追放していますから、処分にも限界がある。

専門委の提言に沿って、ゴーンに権限が集中していた企業統治改革、指名委員会の設置(人事、報酬の決定)、取締役会の監督機能の強化、社外取締役の権限強化、社内部署の権限見直しをまず実行しなければなりません。企業業績も悪化していますから、新しい経営戦略も必要です。

法人としての日産も検察から起訴されていますから、その帰趨をみて、どこかの段階で西川社長は自発的に恐らく辞め、区切りつける。会社が受ける処分の一環として位置づけ、個人に対する責任追及と一線を画すという展開なるのでしょうか。そこで「新生日産」が始まるという形です。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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