昨年起きたベネズエラ大統領暗殺未遂の真相

2019年04月01日 06:00

昨年8月4日、ベネズエラの首都カラカスでマドゥロ大統領を暗殺しようとした一幕があった。国家警備隊(GNB)が81周年を迎えた記念式典でマドゥロ大統領が演説していた最中に上空からドローンが接近したが空中で爆発。マドゥロは護衛官と軍人によって直ぐに彼の前にケブラー製の防弾盾を置かれて防御した映像が世界に報道された。

マドゥロ大統領が防弾盾で守られた暗殺未遂の場面(institutodeestrategia.comより引用)

彼の夫人や側近にも負傷はなく、7人の軍人が負傷しただけであった。因みに、私服の護衛官はキューバ人である。キューバが如何にマドゥロの身の安全を守っているかという証拠である。
(参照:elconfidencial.com

その後、マドゥロはこの事件の背後にはコロンビア政府が関与しているとテレビそしてラジオで発言した。その根拠にしたのはコロンビアのサントス前(当時)大統領が「マドゥロ政権の最後は近い」と頻繁に表明していたからだという。
(参照:elespectador.com

翌5日には「フランネルのシャツを着た国民運動兵士(MNSF)」と名乗るグループがyou tubeに出現して彼らがその犯行を認めたのである。

しかし、その後この事件の解明は不明のまま時が過ぎて行った。ところが、今月3月14日、CNNはこの暗殺未遂の首謀者のひとりとインタビューして彼からビデオも渡されて事件の真相が明らかにされたのである。そのビデオには使用されたドローン、爆薬物、ビデオの操作の練習も収録されている。(参照:cnnespanol.cnn.com

彼によると、この計画を遂行したのはベネズエラ軍の脱走兵が集まったグループだという。それがMNSFを名乗ったグループのことである。彼はCNN取材ジャーナリストのニック・パトンに「民主主義を装った僭主政治に終止符を打つ為に我々はあらゆる平和的また民主的手段を試みた」と語り、マドゥロの政権に触れて「収監されて拷問されている友人もいる。(暗殺計画は)難しい決定であった」と心境をCNNに伝えた。

また、「この陰謀から目的達成に多くの人を犠牲者として巻き添えにしたかもしれない。その危険を覚悟しなければならないのだ。ベネズエラの市民がいつも代償を払うことになるのは辛く感じる」とCNNに語った。

事件当日8月4日、マドゥロが演壇から式典の演説をしていると上空に2機のドローンが近づいたのであるが、マドゥロが演説している場所からかなり離れた上空で爆破された。その映像が前述のビデオでも捉えられている。爆破したのがマドゥロがいた場所からかなり距離が離れていたため7人の軍人が負傷しただけに終わった。

この暗殺未遂はマドゥロの自作自演ではないかという指摘をしたのは米国のジョン・ボルトン大統領補佐官だった。米国はこの事件には当初からまったく関与していなかったと思わせようとしたのかも知れない。一方のマドゥロは「花火かと思った」と皮肉った指摘したほどだという。

その後、この事件に関与していたとされて数十名が逮捕され、中には拷問を受けた者もいるという。しかし、数名の容疑者はCNNに真相を語っている彼を含め現在も逃走を続けている。

また、マドゥロがこの事件の背後には極右派とコロンビア政府がいるとしたが、CNNのインタビューの中で首謀者は、コロンビア政府は関与していなかったことを明らかにした。

更に彼は米国政府高官の数名とこの事件の後3回会談をもったそうだ。その会談は彼らの方で設定して来たという。「情報収集のためだったと思う」と彼はCNNに語った。そして、彼が米国高官に支援を要請すると、逆に彼らはそれ以後姿を見せなくなったそうだ。

その確認のため、CNNは米国国務省に尋ねたところ、同省の報道官は首謀者との会談を持ったことは否定し、「ベネズエラが平和的に政権の移行が行われるのを支援するのが我が国の政治だ」と回答したそうだ。

更に、彼らが暗殺計画を実行するのに使用したドローンについてもCNNに説明しているが、その準備をしたのはコロンビアの農園で、ドローンはネットで購入し、爆薬物は手作りで遠隔操作で爆破させるようにセットしたそうだ。組み立てのネジが小さすぎるのに不満を言っているのがビデオで収録されている。しかも、説明書は中国語で理解するのに困難を伴ったそうだ。

最も難しかったのは気づかれないような高さでドローンを飛行させることで、そのあと急降下して目標に的中させることであったという。夜の暗闇の中で車の窓から異なった場面を想定して草原地やプールの上などから飛行させて遠隔操作の練習をしたそうだ。ベネズエラに持ち込むのに分解して発送。ベネズエラでそれを今度はじっくりと組み立てたというわけである。

ところで、MNSFが誕生した礎になっているのは、オスカル・ペレスの姿であると推察されている。彼は警備隊によって待ち伏せを食わされて昨年1月に殺害された元警察官で特殊部隊のチーフでもあった。彼は僅か数人の武装した仲間を伴って国民の為の民主政治の回復を望んでマドゥロ政権の転覆を計ろうとして、2017年半ばに政府の建物や軍事基地を襲撃したという人物である。要するに、一人でマドゥロ政権を崩壊させようとワンマンクーデータを試みたのであった。

彼の意志を継いだのがMNSFである。彼らが今回の犯行をYou Tubeで説明するのに、ベネズエラからマイアミに亡命したジャーナリストパトゥリシア・ポレオ が担当した。

彼女は「彼らの目的は平和と繁栄と発展を取り戻すことで、市民が空腹に苦しみ医薬品も無くなっていることに堪えることができない」と声明文を読み上げた。また、ツイッターで、「作戦は爆薬物を搭載したドローン2機を大統領がいる演壇の上に飛ばすことであったが、そこに届く前に射撃兵がドローンを打ち落とした」「やったことは軟弱であった。目的は達成されなかった。これも時間の問題だ」とツイートして何れ目的は達成して見せるという強いを意志を示したのである。
(参照:elheraldo.co

この未遂事件が自作自演でなかった証拠は、マイアミをキーステーションに『BAYLY SHOW』というテレビ番組でペルー出身の司会者ハイメ・バイリーがマドゥロを襲撃するプランを練る会合に彼の情報筋からの招待を受けて参加。その席で彼に「土曜日にマドゥロを殺害する」という説明を受けたと番組の中で発言したのである。バイリーはまた、米国は反体制派のグループにロジスティック面とテクノロジー面において協力していることも言明したのである。
(参照:telesurtv.net

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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