ゴーンとアリババと千夜一夜物語

2019年04月06日 06:00

開けゴマで財宝ざくざく

オマーンにあるSBA社の日産・ルノーショールーム(BIGH社サイトより:編集部)

日産のゴーン被告が4度目の逮捕です。これまで不正行為の数々が報道され、特別背任罪で違法性が立証される気配が濃厚となってきました。ゴーンはレバノン生まれのレバノン人ですから、中東の諸伝説から生まれた「千夜一夜物語」の「アリババと40人の盗賊」を読んだことがあるでしょう。

ゴーンの再逮捕を話題にした際、知人が「かつては名経営者。今報道されている情報が事実とすれば、まるで盗賊の仕業みだいた」と。今度の逮捕は、オマーン・ルートの解明です。オマーンはアラビア半島の先端にあり、私はアラビアンナイトの一篇「アリババと40人の盗賊」を思い出しました。

「ペルシャ(今のイラン)という国に、真面目で働き者のアリババという男がいました」という書き出しです。「貧しいこの男はある日、ロバを連れて山に行き、薪を集めていると、40人の盗賊の一団が集めた財宝を、洞穴の中に隠しているのを目撃しました」。「開けゴマと呪文を唱えると、岩の扉が開き、中に入ると自動的に締まるではありませんか」。

「盗賊が立ち去るのを待って、洞穴に忍び込み、アリババは金貨の袋をロバに積めるだけ積んで持ち帰りました」。「秘密にしていたのに、金持ちの兄に知られ、呪文も無理やり教えさせられます」。「欲張りの兄は洞穴に行き、財宝を夢中になって集めているうちに、呪文をすっかり忘れてしまいました」。「閉じ込めれていた兄は、戻ってきた盗賊に見つかり、惨殺されてしまいました」。

アリババが地検特捜部か

話は二転三転し、機転を生かしたアリババ側が盗賊の一味を討ち取ります。「心の優しいアリババは洞穴の財宝を国中の貧しい人たちに分け与え、アリババの家は末永く栄えました」。盗賊の集めた財宝を見つけだしたアリババは地検特捜部に当たるでしょうか。

ゴーンの事件と似ていないようで似ています。今度のオマーンルートでは使途自由の会長秘密資金が使われ、自分たちに還流させたとされます。「洞穴の財宝に相当するのが秘密資金」、「開けゴマの呪文は、会長の個人サイン」、「不正の多くは中東が舞台」と、似通うところあります。

秘密資金で各地に豪華マンションを取得、クルーザーも購入、息子たちの大学資金にも流用、資金運用会社(ペーパーカンパニー)も設立し、日産側から注入していた。正式の報酬は年2,30億円にのぼったのに、まだ足りないのか、洞穴に資金を隠していた。再婚式はベルサイユ宮殿でやり、その費用には不正の臭いする。俗物人間ならやってみたことばかりです。

洞穴に閉じ込められた兄さん

欲張り兄さんは誰か。夢中になって秘密資金を使っているうちに、欲がさらに膨らんだか、歯止めがきかなくなり、洞穴からの抜け出し方を忘れた。そうしているうちに、日産側の協力を得た特捜部に捕まるはめになりました。アリババのように、自分の懐に入れず、貧しい人たちに分けていたら…。

舞台となった中東では、オマーンのほか、サウジ、レバノン、UAEなどにまたがっています。不正が発覚しないように資金のルートを複雑に組み合わせたのでしょう。そのこと自体、不正な工作をしているとの自覚があったことの何よりの証明でしょう。

捜査に非協力な国も多く、立件のハードルが高いとされます。そこがまた弱点で、これだけ多数のルートを使うと、どこかで尻尾をだす。検察は確実に確証が得られる部分に狙いを定めた。それが今回、4度目の逮捕となったと考えるのが自然です。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年4月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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