ピエール瀧被告保釈:問題を起こした芸能人の処罰のあり方 --- 井上 孝之

2019年04月08日 06:00

ピエール瀧被告が保釈されました。彼の事件については、様々な人が意見を発せられていますが、これまでの議論で欠けていると思われる論点について考えてみたいと思います。

①犯罪の原因は心の弱さか、性悪か、

犯罪の原因をこの2つに大別できるかどうかは分からないのですが、制裁の強さによって犯罪を防止できるのは、当事者が合理的に「犯罪をしない方が得」という判断ができるている場合に限られると思われます。

一方で、心の弱さ、つまり、「悪いと分かっているけどやめられない」であれば、後でどんな強い制裁があると分かっていても犯罪に手を出してしまうので、制裁の強さは犯罪の防止には限度があると思います。心の弱さが犯罪の原因なら必要なものは周囲のサポートです。心の弱い人を叩いても心は強くはならないので、再発防止には効果がありません。

特に薬物に手を出すような犯罪の再発防止には周囲のサポートが有効のように思われます。合理的に考えて、その通りに行動できる人であれば薬物には手を出さないので、ピエール瀧被告はやはり「弱い人」であると思われます。彼には周囲のサポートを得て、立ち直っていただきたいと思います。

犯罪者に対する制裁は裁判所が懲役刑を科すことが第一となりますが、さらに社会的制裁を科すかどうかは上記のような観点で考える必要があると思います。

②収入の道を絶ってしまうことは妥当か

犯罪者を制裁するために収入の道を断ってしまうことは妥当でしょうか? 一般の人も犯罪を犯すと会社を首になって仕事を失うので、芸能人であっても同じように収入の道を閉ざしてしまうべきだという主張には一定の合理性があります。

ただ、ピエール瀧さんの場合のように周辺でと二次被害を受けて損失を被る人が膨大になる場合には、収入の道を残して、賠償金の原資にできるようにすることにも意味があると思います。ピエール瀧さんが資産家で膨大な賠償金を支払うだけの資産があるのであれば、収入の道の閉ざしても問題はないかもしれませんが、現実には賠償金を支払うだけの資産がないと思われるので、収入の道を残しておくことは、二次被害を受けた人への救済にとって重要な意味があります。

彼の仕事の特性から、本人が刑務所に入っていても過去の作品が販売されたり、ネットで配信されれば、本人には収入が生じます。この収入の道を閉ざすことなく、二次被害を受けた人に還元できるようにしておくことは重要であると思われます。また、刑期を終えてからのコンサートツアーや新譜の発売についても、罪を償った後でもあり、聞きたくない人は聞かなければいいだけなのでこれも許容されるべきだと思います。

③一つの正義を貫徹させるために関係のない人を犠牲にしていいのか?

テレビのワイドショーを見ていて疑問に思うのは、誰も二次被害に遭う人の立場で話さないことです。これまで心血を注いで作ってきたものが世に出せなくなるということは単にお金の問題だけではないはずであり、賠償金を受け取ったとしても、賠償が済んだことにはならないと思います。

特に芸能系の仕事をしている人は「今日の仕事の出来・不出来が次の仕事につながる」ということがあるので、作品が公開されないと、その作品に関わった人が飛躍の機会を失ったり、次の仕事が得られなくなる可能性もあります。

犯罪者は刑法で罰せられる以外に社会的制裁を科されることは理解できますが、「犯罪者に社会的制裁を科すためには、犯罪に関与していない人に損害を与えても構わない」という考えには私は全く同意できませんが、アゴラ読者の皆さんはいかがでしょうか?ワイドショーを見ていると、まるで「ドブに落ちた犬を叩くのは面白いし、たとえその結果として関係のない人に損害が生じても自分に関係ないから、みんなで叩こう。そうすれば視聴率も取れる」という感じになっていると思っています。

④芸能人は復帰に対して甘いのか?

芸能人で犯罪を犯しても芸能界に復帰できる人がいます。そのような人がいると「芸能界は犯罪者に足して甘い」というようなことを言いますが本当でしょうか? 私は芸能人でも「替えのきく人」は復帰できないと思われます。芸能界に復帰できる人は結局は唯一無二の能力を持っている人か、ずば抜けた何かを持っている人のように思われます。その人を出演させることによって失う視聴者と得られる視聴者を比較して、得られる視聴者の数が相当に多ければ出演させる価値があります。この点は芸能人以外でも同じで、その人にしかできない仕事があって、その仕事にニーズがあるのであれば、その人は前科持ちであっても必要とされます。

最後に

この問題は、結局は人をどのように裁いて、社会復帰のチャンスをどのように与えるのかという深い問題に行き着くので、簡単に答えが出るとは思いませんが、「犯罪者に制裁を加えるためには、あらゆる手段を総動員すべき」という妙な完璧主義がはびこっているようにも思われます。ピエール瀧さんに対して、適切な処罰と社会復帰へのサポートが行われることを望みます。


井上 孝之
これを機に電気グルーブを聞いてみようと思ったら、音楽配信サービスから完全に除外されていることを知ってショックを受けている技術系サラリーマン

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