大坂なおみ選手は国籍選択しないと「違法状態」になる

2019年04月10日 19:00

パックンが「大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!」というコラムを書いているが、これは蓮舫問題のときも出てきた誤解である。

スポーティング・ニュース公式ツイッターより

これは国籍法の改正ともからむので、訂正しておく。彼の論旨は

日本国籍をキープしたいなら、それを選ぶ「選択宣言」をしないといけない。そして、その後「外国籍の離脱に努める」ことが規定となっている。しかし、それに伴うチェック機能もなければ、離脱に努めていないときの罰則もなにもない

ということだが、これは間違いである。国籍法では、こう定めている。

第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

第十五条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。[中略]
3 前二項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から一月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う

第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない

大坂選手は今年10月16日に22歳になるので、そのときまでに国籍を選択しなければならない。アメリカは重国籍を認めているが、日本は認めていないので、法務省から催告を受けてから1ヶ月以内に国籍を選択しないと日本国籍を失う。

第16条で努力義務になっているのはブラジルのように国籍を離脱できない国の例外規定で、この場合は「選択宣言」をするだけで(何もしなくても)いい。だがアメリカは離脱できるので努力義務の対象ではなく、催告されたら国籍離脱の義務を負う(蓮舫氏と同じ)。

しかし国籍法にもとづく催告が行われた前例はない。国籍法には罰則がないのではなく、国籍を剥奪するという罰則が重すぎるために空文化しているのだ。これは法務省も国会答弁で認めている。

法務大臣がこの法律に基づく国籍の選択をすべきことを催告した例というものは、これまでございません。これは、催告を行った場合は、催告を受けた日から一カ月以内に日本国籍を選択しなければ、自動的に日本国籍を喪失することとなるわけでありまして、このことが、重国籍者本人のみならず、その親族等関係者の生活その他全般にわたって極めて重大な影響を及ぼすものであることから、慎重に対処する必要があるからであります。

だから今年10月に大坂選手が国籍選択しなくても(催告を受けない限り)東京オリンピックに日本人として出場できるが、違法状態で出場することになる。法務省が「大坂選手は違法か」と質問されたら「違法とはいえないが違法状態に近い」と答えるだろう(蓮舫問題のときもそうだった)。

日本にはこういう違法状態の外国人が50万人ぐらいいるといわれるが、これは在日韓国人のからむデリケートな問題なので、政府は実質的に重国籍を認めている。そういうグレーな状態は法治国家として好ましくないので、これを機に国籍法15条の3を削除し、公式に重国籍を認めてはどうだろうか。今から国会で議論すれば、オリンピックに間に合う。

追記:IOCの規定では国籍を変更した選手は3年以上たたないとオリンピックに出場できないので、大坂選手の場合は今からアメリカ代表になることはできない。しかし日本代表になるために米国籍を捨てる必要もないので、二重国籍のまま(違法状態で)出場できる。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 学術博士(慶應義塾大学)

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