乱立するQRコード決済の最後の勝者は?

2019年04月15日 06:00

4月9日からau Payが始まった。三太郎の日は26%還元でチャージも10%増額だそうだ。QRコード決済は新しいものが続々と誕生して、乱戦模様だ。

主なものだけでも、楽天ペイ、LINE Pay、PayPay、d払い、au Pay、Origami Pay、メルペイといった携帯キャリアや流通業などの非銀行系のもののほか、銀行系のJ-CoinPay、はまPay、YOKA! Payがしのぎを削っており、さらにこれから夏にかけて、ゆうちょPay、セブンPay、ファミペイなどが戦線に加わる予定だ。

これだけ種類が多いと、利用者としてはどれを使ったらよいか分からなくなってしまうが、すべてのアプリをスマホに入れる人はほとんどいなくて、大方は2つないし3つのアプリをダウンロードするだけだろう。

この取捨選択の基準は、利用者によって様々だろうが、私は次の三つの基準があると思う。第一の基準はポイント還元率の高さで間違いなかろう。昨年暮れのPayPayの100億円還元騒動は記憶に新しいが、現在も第2弾の100億円還元キャンペーンが実施中の一方、上記のau Payも20%還元で戦うほか、LINE Payやd払い、楽天ペイなどは、それぞれ20%の還元期間が過ぎた後も様々なキャンペーンを打って対抗している。

2つ目の選択の基準は、利用者が普段よく買い物をする店で使えるかどうかがカギとなるだろう。いくら高率の還元率であっても、普段あまり行かない店でしか使えないのでは、ポイントをためづらい。

3つ目の基準は、2つ目ともややかぶるが、全国に多数の加盟店があって、わざわざ使える場所を探さなくてもよいようなQRコード決済が選ばれるだろう。

こうした観点から現在のQRコード決済の比較をすると、銀行系のものはいわばJ-デビットをスマホに入れたようなものが多く、ポイント還元がないかあってもそれほど高い還元率ではないので、競争上不利だと思われる。特に、PayPay、d-払い、LINE Payなど、クレジットカードでチャージができるQRコード決済はポイントの二重取りができるので有利だ。

加盟店の多さ・広がり具合という点では、どのQRコード決済も現在懸命に加盟店獲得に汗を流しているところだが、au Payがこの夏から実施すると言われている、楽天ペイやメルペイが使える店でau Payが使えるとなると、既存のネットワークを使って一気に展開のスピードが速まると思われる。

一方で銀行系の、J-Coin Pay、はまPay、YOKA! PayなどのQRコード決済は、銀行本体の融資先等とのつながりを利用して加盟店展開を行うことが強みだと思われているが、私は、これはなかなか目論み通りにはいかないのではないかと思っている。

クレジットカードの世界の話になるが、これまでも銀行系のクレジットカード会社は銀行本体の営業力を使って加盟店開拓を行ったが、融資をてこに加盟店契約を結ばせるのは相手の数に限りがあるし、実際にニーズがない店では端末はほこりをかぶり、挙句には契約期限が切れると端末が返却されてしまうことも多々あった。

銀行員は銀行業務には精通していても、加盟店の状況に応じた売上入金サイクルの調整、端末代や手数料の値引き、その他加盟店からの苦情や相談といったアフターケアなど、電子決済の世界の泥臭い営業は知らないし、少なくともこれまでのところは十分にできていないように思われる。

また、加盟店の全国展開という面では、みずほ銀行が旗を振っているJ-Coin Payや間もなく展開が始まるゆうちょPayは、その支店網の広がりからネットワークの粗密は別として日本全国に加盟店展開がされるだろうが、そうでない地銀系のQRコード決済は、銀行間の相互乗り入れができるとしても、どうしても地域ごとの展開に止まり、なかなか規模の利益を享受するまでには至らないのではなかろうか。

そうしてみると、やはりQRコード決済の勝ち残り戦は、携帯キャリア系か流通系が有利な気がする。そしてさらに、その中のどこが最終的な勝者になるかということだが、私の考えでは、加盟店を味方につけることが出来たものが勝つと思う。

現在QRコード決済を行う各社は、新規ユーザーの獲得のために盛んにポイント還元を行っているが、その一方で加盟店に対しては、せいぜい何年間か手数料を無料にする程度のことしかしていない。これで加盟店になってくれというのは、あたかも喉が渇いていない馬に無理やり水を飲ませようとするようなものだ。

多額のお金を使って利用者にポイント還元をする余裕があるのであれば、それを少し削って、一定額以上のQRコード決済売り上げがあった加盟店に報奨金を出すようにしたらどうだろう。そうすれば、進んで加盟店になろうという店が今より増えるだろうし、一旦加盟店になれば、他のQRコード決済を差し置いて、自分に報奨金を出してくれる会社のQRコード決済をするように、利用者を様々な形で誘導してくれるかもしれない。

QRコード決済に限らず、他の電子決済手段でもそうだが、加盟店は単なる手数料という“ミルクを出してくれる乳牛”のように考えられがちだが、そうではなく、加盟店をQRコード決済会社と協力関係にあるパートナーとすることが、QRコード決済戦国時代で勝利する近道なのではないだろうか。

有地 浩(ありち ひろし)株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)
岡山県倉敷市出身。東京大学法学部を経て1975年大蔵省(現、財務省)入省。その後、官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。財務省大臣官房審議官、世界銀行グループの国際金融公社東京駐在特別代表などを歴任し、2008年退官。 輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社専務取締役、株式会社日本決済情報センター代表取締役社長を経て、2018年6月より同社顧問。著書に「フランス人の流儀」(大修館)(共著)。人間経済科学研究所サイト

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