男性の育休「義務化」を

2019年04月17日 14:00

私は、男性の育児休業取得を「義務化」したいと考えています。男性が育児・家事をフェアに分担することは、少子化対策にも、女性活躍にも、離婚率の低下にも、男性が子育ての喜びを感じて幸福になるためにも資すると確信しているからです。そして、それなりにまとまった期間(私としては、できれば最低1か月取ってもらいたい)の育児休業取得は、すでにある最善のイクメン・家事メン研修です。

写真AC:編集部

夫は育休を通じて、育児と家事の双方を夫婦で分担(「手伝う」ではありません!)することを習慣化することができ、また、企業の側にとっても、属人化してしまっている仕事をモジュール化することにより、多様な人材を雇用できる体質に変わるきっかけとなるというメリットも中長期的にあると考えます。

これまで、私自身も、前職の外務省女性参画推進室長のときにも、また、政治家となってからは、決算委員会や予算委員会含め様々な機会に男性の育休取得促進を訴えてきましたし、先般もWAW!(国際女性会議)でマララ・ユースフザイさんの父ジァウディン・ユースフザイさんと同じパネルでしたが、そこでも訴え、WAW!提言書にも言及して頂きました。

そもそも、日本政府自身が、長らく男性の休業取得について、育休制度の改善や企業に対する啓発活動など様々な取り組みをしてきたにもかかわらず、世界最高水準といって良い日本の育児休業制度なのに、未だ男性の育児休業取得率はたったの5%に過ぎません。

そこで、もはや、男性については、企業が育児休業取得させることを義務化する、法的義務にできなくとも、少なくとも事実上、「義務づける」しかないのではないかと考えるに至りました。現在の育休制度でも、社員が申請したら育休を与えることは企業の法的義務となっていますが、男性育休取得が低い理由は、そもそも申請する(ことができる)男性が少ないということにあります。

したがって、妻が妊娠したことがわかれば、夫たる男性社員に対して、申請がなくとも、企業の側が育児休業を当該男性社員に与えることとするべきだと考えます。男性の同僚議員にも同じ考えの方が少なからずおり、また、小室淑恵さんや駒崎弘樹さん、みらい子育て全国ねっとわーくの#男性の産休Project#、NPO法人ファザーリング・ジャパンの男性育休推進活動、積水ハウス(男性育休「義務化」実践)など、民間でも様々な同様の取り組みがなされています。こうした取り組みとも連携して、現在、議連の立ち上げなど何か政治の方でも形にできないかと試行錯誤しながら動いているところです。

日本において女性活躍を阻む大きな要因であり、また、働いている女性が第2子を産まない理由は、夫の家事・育児の分担が余りにも少ないことにあります。私自身、2人目の子供を作ることには多いに躊躇しました。人間の究極の資源は、「時間」だと思います。男性も女性も子供も高齢者も、一日24時間しかありません。日本の女性は、専業主婦ではない働いている女性を含め(というか、現在、日本女性の7割は働いています)、男性の7倍の時間を家事・育児に使っています。

具体的には、6歳未満の子供を持つ夫婦は、平均して、育児については、男性が一日39分に対し女性が3時間22分、家事は、夫が1時間7分に対し妻が7時間41分(2017年度調査)と約7倍もの時間を使っています。スウェーデンから米国まで他の先進諸国でも、女性は男性より多くの時間を家事育児に使っていますが、その差は2倍であり、7倍の日本とは大違いです。

女性活躍

1日24時間しかないのに、男性の7倍も家事育児に費やしていて、日本の女性が男性と同じように会社・社会で活躍できるわけはありません。日本の女性は、男性と同じレベル・プレイング・フィールドにいないのです。女性活躍だ働き方改革だということで、企業も最近は女性管理職を増やそうと努力して頂いていますが、育児・家事分担が夫婦間でフェアになれば、女性管理職は確実に劇的に増えるでしょう。

女性活躍推進法により、企業も意思決定あるポジションにつく女性の割合等の公表も義務付けられています。男性社員の育児休業取得はそうした観点から企業にとっても意味がありますが、一部の企業だけがやるのではメリットは薄いので(男性社員の妻が同じ企業で働いているわけではない)、それこそ、義務化して、多くの企業が一斉にやる方が企業にとっても企業間競争が不胎化される効果があるのではないでしょうか。

少子化対策

また、統計上、家事育児をより多くする夫を持つ妻は、家事育児をあまりしない夫に比べ、第2子を産む確率が優位に高いことも明らかになっています。具体的には、たとえば、1日5時間以上家事育児をする夫を持つ妻が第2子を持つ確率は87%であるのに対し、家事育児を全くおり、しない夫を持つ妻が第2子を持つ確率は10%で、8倍の開きがあります。

つまり、イクメン・家事メンからは第2子以降が生まれやすく、ゼロコミット男子の家には第2子は生まれにくいのです。自分の実体験からもこれは実感をもってその通りだといえます。私も2人目を産む気は正直おきませんでした。また、私が負担を全部引き受けるのはまっぴらごめんだと思ったから。つまり、男性が家事育児をフェアに分担するようになれば、少子化克服につながるのです。

また、少子化の最大の原因は、結婚しない男女が増えたことが最大の要因です。子供の教育費が最大の課題かもしれませんが、もう一つ気になる統計として、女性が結婚相手に求める資質について、1位の性格に続き、2位にはなんと男性の家事・育児能力が上がっています。そう、家事・育児能力は男性の「結婚力」を上げる上でも重要なのです。

家庭にマネージメントの発想を

そして、これは統計やアンケート調査があるのかどうかわかりませんが、夫が家事育児をフェアに分担することは、離婚率の減少にも寄与すると思います。少なくとも、夫婦仲の円満、家族の円満につながることは間違いありません。なぜなら、妻の夫に対する不満の一番大きいものの一つが、夫が家事育児を分担しない、また、妻の方が多くの負担を引き受けていることに対する感謝の念がないということにあるからです。

妻、特に働いている妻にとっては、同様に働いているにもかかわらず、「なんで私が全部引き受けないといけないのか。」という不満は強烈なものがあります。しかも、女性だからそれを引き受けて当然ということを前提とした発言や感謝のない態度がさらに追い打ちをかけます。

はっきりいって、働いている妻に対して「手伝うよ」は禁句です。「手伝う」というのは、本来妻がやる業務なのだけれども「手伝って」あげるということを意味します。子供は夫婦2人で作ったのだし、家事は、家族全体でマネージすべき業務であって、妻だけが引き受けるべきものではありえません。家族の全員が、つまり、夫婦も子供(一定年齢以上)も分担すべきものです。専業主婦の家庭では、妻が家事育児、夫が外の仕事という分担方法なのでしょうから「手伝う」でも良いでしょうし、過去はそれが主流だったので、その名残なのかもしれません。

しかし、今や、日本の家庭の7割は共働き世帯であり、つまり、家庭ににいる7割の女性(妻)は働いています。そして、働いている妻は、「手伝う」じゃなくて「分担だろ」と、心中、確実に突っ込みを入れています。他方で、そういう男性は、「男たるもの家族を養うのは男の義務」と信じており、死ぬほど大変になっても家族のために働き続けようとしたりします。

男女の固定的役割分担から解放されれば、女性も男性も楽になるのに、と思います。

家事も育児も根性や愛情で何とかなるものではありません。誰かの「時間」を使うからです。家族を会社に例えれば、家事も育児も家庭(家族)の主要業務です。もっと家庭のマネージメントという観点から、育児も家事も捉えなおすべきなのです。

会社経営となれば、一人の社員に会計と人事と社内清掃と営業を任せようというアホな社長はいないはずですが、家庭となったとたん、外で働いている妻一人に、家事、育児はおろか時には介護まで押し付けて平気な夫はまだいます。会社ならとっくに破綻しているところですが、そこに、根性、愛情、男女の固定的役割分担意識で破綻寸前でブラック経営を成り立たせているのです。

「逃げ恥」のみくり曰くの、「それは愛情の搾取」なのです。もう少し、合理的な運営をしなければ家族とて長続きするものではありません。私は働いている夫婦の離婚原因には夫婦の家事育児分担の不満は相当あるのではないかと思っています。

育児休業取得は、男性に育児の喜びを実感する時間を確保する上でも有効です。BS番組「深層NEWS」の近野キャスターは1か月の育児休業を取られ、最近復帰されましたが、育児休業中に長い時間子供の世話をしたり家事をしたことで、「子供との距離が全く変わった、育児の喜びをしみじみ実感して幸せを感じる」とおっしゃっていました。

その上、父親が母親と家事・育児を分担している娘の生涯所得は、そうでない娘に比べて高いという統計結果もあるそうです。おそらく、男女が対等であるという姿を見ながら育った女性の方がキャリア志向が高く、意思決定あるポジションにつくことに躊躇がないからではないかと思います。WAW!のパネリストとしてご一緒したマララ父ことジァウディンさんも、自分は家事育児をやっていて、その姿をマララは見て育ったと言っておられました。このマララ父にしてマララさんありなのです。

超手厚い日本の育児休業制度

日本の育児休業制度は、世界でもおそらくナンバーワンといって良い極めて高度かつ恵まれた内容となっています。1年間は給与保障があり、夫婦でとれば、そのカバー率は事実上8割になるように、男性育休取得のインセンティブもあります。さらに、男性育休取得を容易にするため、たとえば、出産後に一度とっても、また、再度取得できるとか、母だけでなく夫もとる場合は、1年ではなく1歳2か月までとれるなど様々な工夫もなされています。

にもかかわらず、男性の取得率はたったの5.14%です(女性の育休取得率は83%。女性の継続就業に貢献しています)。この10年で取得率が3倍になったと言いますが、1.7%から5.1%になったとは、なかなか笑えない数字です。しかも、この5.14%は、「3日とりました!」みたいな、いわゆる「なんちゃって育休」も含んだ数字です。

アンケート調査の結果、男性が育児休業を取得しない理由は、①会社で育児休業制度が整備されていなかった(27.5%)、②職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった(25.4%)、③業務が繁忙で職場の人手が不足していた(27.8%)、④自分にしかできない仕事や担当している仕事があった(19.8%)となっています。

要するに、男性が育休を取得することを否定的に見る「文化」と仕事の属人化が問題なのです。

周りに聞いてみても、取りたいと思っていても、上司が「男のくせに育休とるなんてありえない」という感じで言い出せないとか、「育休を取らない同僚とくらべキャリア競争で不利になりそう」といった理由でそもそも育児休業取得を言い出すことができないという男性は実に多いです。

だから「義務化」したらいい

こうした育休取得を阻む理由は、男性が育児休業を取ることを「義務化」することにより解消されます。理解のない上司であっても、育休取るのが「義務」なら関係ありませんし、同期で育休を取る人と取らない人との間でのキャリアへの影響という問題も生じません。「だって、みんな育休取らないといけないから。」

特に、若い世代は、育児と家事は夫婦で分担という考えにはかなりなじんでいて育休取得を希望する男性も多いと思いますが、世代交代まで待っていられるほど日本も悠長なことをしている暇はないと思います。

また、企業の側の負担についても理解できるところですが、10か月先に社員が1か月休むことがわかっていて、それを企業全体で管理できないとすれば、マネージメント能力に問題があるのではないでしょうか。

「介護はある日突然に」ということもありましょうが、出産は、10か月前からわかっていることです。確かに、たとえば、大企業と比べて体力が劣る中小企業は大変だと思います。その点は、実は、育児休業を取得させた企業に対しては、育休を取得した男性社員1人につき28.5万円(中小企業以外)から57万円(中小企業)支給するという「両立支援等助成金」もありますし、中小企業には「育休復帰支援プラン」もあります。社員に育休を取得させる企業側の負担にも配慮をしています。

仕事を属人化からモジュール化するきっかけに

また、アンケート調査にもあるように、多くの場合、その人しかできない仕事という、仕事を属人化しているケースで育休取得に困難が生じていると考えられますが、そもそも働き方改革の中でも仕事の属人化はやめるべき方向にあるのですから、育休促進をきっかけに、仕事のモジュール化を進めてはいかがでしょうか。

フランスの企業で働いていた友人から、同僚が妊娠出産で育児休業を取ったら、翌日から当たり前のように違う人がやってきて同じ業務を滞りなくこなし、また、何事もなかったかのように数か月後同僚が戻ってきて、仕事がモジュール化されていることに感銘を受けたという話を聞いたことがありますが、「〇〇さんでないとわかりません」という日本の仕事のやり方と大違いだと思ったことがあります。

日本でも終身雇用・一括採用は過去になりつつありますし、外国人労働者も増えるわけで、ますます仕事をモジュール化することは、企業としていずれにせよ必要となることです。

以上、男性の育児休業取得の「義務化」は、女性活躍、少子化対策に確実に有効であり、企業の体質改善にもつながり、さらに、男性に育児の喜びを実感する幸福や夫婦円満につながり、娘の成功にも寄与することも期待できるという一石五、六鳥ぐらいもある政策だと思います。必ず、日本社会をより個々人が幸福になれる方向に、まさに「令和」時代にふさわしい日本社会に進めることに寄与すると考えます。具体的なやり方や内容については、民間の取り組み含め様々な知恵を集めて作っていけばよいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏の公式ブログ 2019年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。

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松川 るい
参議院議員(大阪選挙区、自由民主党)

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