所有しなくてもよい発想は日本の常識を変えるか?

友人がカーシェアリングを多用しているといいます。「あれ、車持っていなかったかい?」と聞けば、「あれは嫁専用」と。それより「出先でタクシー代わりに使うので便利」と自慢げに説明してくれました。なるほど。荷物があったり数か所回るなら15分単位で課金されるカーシェアリングは便利です。アプリを使えば今どこの駐車場に貸し出し可能な車があるか、一目瞭然の上に、ガソリンを入れなくてもよい便利さもあります。

写真AC:編集部

先日、取引先の不動産屋が「最近、同じ戸建て需要でも1階部分に駐車場を作らない家が普通に売れるんですよ」と驚き顔で言います。かつては3階建て住宅で1階部分が駐車場と玄関で居住は2〜3階というパタンが典型だったのですが、今は若い人が車を持たず、運転もしないので駐車場スペースがない住宅を求める夫婦が増えてきた」とのことでシェアリングの時代が住宅事情まで影響してきています。

私の事務所はシェアオフィス。30社ぐらい入っていますが、その運営者は世界的なトップブランドの一つ、リージャス。バンクーバーではリージャスとウィーワークが競うようにオフィスを増大させています。私どもは個室を借りていますが、併設されているコーワーキングスペースでは人が入れ替わり立ち代わり仕事をしています。

私がなぜ、シェアオフィスに変えたかといえば事務所リースの場合、受付業務もありますが、それをシェアオフィスでは全部代行してもらえます。年に数回しか使わない会議室を自前の事務所の一部として高い賃料を払う必要もありません。会議室は借りたいときだけ借りるでよいのです。

大塚家具の支援でも名が知られた貸し会議室大手TKPがそのリージャスの日本法人を買収すると報じられています。その額500億円。リージャス日本法人は大家から事務所を借り、それをシェアオフィスとしてサービスの付加価値を売る会社ですが、その価値が500億円もあるというのは驚きです。事実、日本のシェアオフィス市場はこの10年で5倍以上の規模に拡大し、この数年は年率3割前後の伸び率で推移しています。

「日本ではコーワーキングスペースは大企業のサテライトオフィスとしての需要があるはず」と何年か前のこのブログで「働き方改革」のテーマの際に強く主張したと思いますが、ようやくその意味と価値観が企業の間に浸透してきたようです。

出先からちょっと隙間時間を使って仕事をしたい場合、喫茶店ではなくて仕事環境があるシェアオフィスの方がずっと便利です。多くのシェアオフィスではどこのコーワーキングスペースでもアクセス可能なのです。(リージャスの売りは世界6000か所のオフィスにアクセスできることです。)

また、子育て世代のお母さまが一日4〜5時間だけ仕事をするのに東京の事務所に行かなくても千葉や大宮、立川、横浜といったエリアのシェアオフィスに勤務するというのも働き方改革の一環になるでしょう。

私はアセットライトのライフスタイルの時代が来るとずっと言い続けています。住宅だって所有しなくてはいけない理由は今後、希薄になるかもしれません。25年の住宅ローンを払い続けるのは間尺に合わないという価値観が生まれる時代はもうすぐです。住宅は余っているんです。人口は減っているのです。ならば好き好んで住宅ローン地獄になる発想そのものがおかしいと私は思うのです。年を取ればカラダに合わせた環境を求めて住宅を探すというフレキシビリティが意味を持つ時代が来るはずです。

日本は世界に比べて格差が少ないが故にシェアが世界でもっとも展開しやすい国だと思っています。時代は確実に変っていくとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月18日の記事より転載させていただきました。