トヨタが選んだ中国EV企業CEOは意外な人物! --- 本元 勝

2019年04月19日 06:00

トヨタ自動車が中国のEV・スタートアップである智車優行科技(北京)有限公司(奇点汽車)との間でEVに関する特許技術を販売することで合意した。この企業は、新興EV自動車メーカーである訳だが、現在の世界のEV車開発とは、単なる新しい電気を使った自動車開発ではなく、ハイテクノロジーを駆使したスマートEV車開発であることを冒頭で確認しておく。

トヨタiQ、復活 奇点汽車(Singulato)が中国で販売へ 「iC3」と命名(オートカー・ジャパン)

16日の上海自動車ショーで奇点汽車(Singulato)から発表された、トヨタのEV技術をベースとしたコンセプトカー「iC3」(奇点汽車サイトより:編集部)

さらに、この会社については、ハイテク・スマートカー開発を主として行うIoT企業と言った方が正しいのかもしれない。実際、この企業のウェブサイトにもIoT会社として創業との記載が現在もある。

この智車優行科技(奇点汽車)は2014年12月に設立された企業であるが、この会社のCEOである沈海寅のキャリアが非常に興味深い。実はこの奇点汽車を創業する前の過去13年間、日本で起業し、日本の誰もが知る企業でビジネスを大成功に収めていたのである。

沈海寅氏ツイッターより:編集部

日本でのキャリアを辿ると、2000年に26歳で来日後、すぐにJWord Inc.設立、代表取締役に就任。JWordとは、当時ヤフー、グーグル、MSNに次ぐ国内4位のシェアのあった検索システムであり、当時は誰もが知る存在であった検索サービスである(事業はその後、現GMOインターネットに売却)。

その後の05年には、当時、中国最大のソフトウェア会社であった、金山軟件(中国)との合弁により、現在は誰もが知る、あの、KINGSOFT株式会社設立、代表取締役に就任している。KINGSOFTとは、ノート・モバイルPC市場において、無償配布ソフトウェアとして、セキュリティソフトやオフィスソフトなど、ソフトウェアを日本で初めて無償提供するフリービジネスモデルを構築した先駆的企業なのである。

その後、沈氏は中国に帰国し、ニューヨーク証券取引所に上場した奇虎360の副社長を務めた後、奇点汽車を創業し、現職についている。

そして、ここからがさらに驚くが、沈CEOのここまでのキャリアに自動車に関連するものは一切ない。これまでずっとインターネット・ソフトウェアのエンジニアだったのである。そして、沈CEOのこれまでの発言を追っていくと、氏のEV自動車開発とは、スマートテクノロジー開発により、最も大きな革新をもたらすことが出来るもの、それがスマートEV車だと考えていることが理解できる。

現在の中国のEV市場は、生産・販売とも世界一であり、参入企業数は現在約60社。その中には、既存のガソリン車製造の実績を持つ企業と、それ以外の新興EV企業、すなわち自動車製造の実績がない企業が存在し、企業数としては新興企業が上回っているのである。日本では全く考えられない事実がここに存在するのである。

そして、2018年末のデータではあるが、その新興企業の中には、ユニコーン企業(企業価値10億ドル)が既に4社あり、うち50億ドル(約5,600億円)企業が2社、この奇点汽車においては30億ドル(約3,360億円)企業となっており、中国EV市場の凄まじい勢いと共に、中国新興ハイテク企業の技術と能力の高さが窺える。

また、沈CEOは数年前、中国のメディア取材に対して、「自動運転の技術を独占するのではなく、ハードウェアプラットフォームベンダーとして、世界最高レベルの自動運転システムを集約させたい。そして、その他のアルゴリズムやデータは全て開放する」と語っている。これらは、オープンプラットフォームが世界の先端テクノロジーやイノベーションを加速させるという、進歩に対する求道者的思考に基づく発言とも捉えられる。

そしてここでどうしても頭によぎってしまうのが、先日発表された、日本の最先端技術を結集して作ったとされたジャパンディスプレイ(JDI)の台中傘下入り。実態は、潰れる寸前のロートル企業救済の為に、無駄に7年も掛け日本国民の税金である財政投融資4〜5,000億円も費やした挙句に、二束三文で中華資本に引き取られることが決まったという、ミステリーレベルのニュースである。

ちなみにではあるが、創業4年で3,360億円の企業価値を創り上げた企業である奇点汽車のスローガンは、「伝統を敬い、大胆に刷新する」というものらしい。

本元 勝 中国市場経済コンサルタント

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