航空自衛隊に戦闘機調達の能力はない

2019年04月20日 06:00

昨今、空自のF-35Aの墜落を受けて、「欠陥機」だ、調達を中止しろという人たちがメディアにも少なからずおいでですが、原因も特定されていないのに決めつけはまずいでしょう。

F-35A(空自サイトより:編集部)

それにFX選定時にどれだけの人が興味をもっていたのでしょうか。墜落したから大騒ぎ、では文明人じゃないでしょう。オスプレイ反対もそうですが、反対派の主張は人を動かせません。情緒が優先しているからです。未亡人製造機、危険と繰り返すだけです。

むしろ問題は、事前の調査や手続きを踏んでいないこと、陸自の航空隊の予算を圧迫すること、運用上の護衛機のエスコートが難しい、自前の対地制圧火器の搭載もできない、降下するときは機動がほとんどできないので、対空砲火の的になる、だから米陸軍は導入しなかったなど、反対するならば具体的なエビデンスや、導入するデメリットを丁寧に説明すべきです。

ぼくが小野寺大臣に、17機で終わりかと聞いたら、「わかりません。入れてから考えます」とか、江渡大臣に競合機がAW609っておかしいでしょう。ダンプと軽自動車を同じ候補にするようなものですと質問したりましたが、記者クラブメディアは全く取り上げませんでした。平和運動家も同じです。

F-35導入についても同じことが言えます。FX選定時、どの程度の人たちがきちんと論拠を挙げてF-35導入に反対したのでしょうか。

そもそもFXの調達数が42機というのがおかしな話です。
ライセンス国産を前提にした話で、42機であれば数機は輸入ですから40機弱の生産となり、ライセンス国産は極めて高い選択になります。そもそもF-35はライセンスできません。空自のこの調達数がまずは異常です。

それからこれまで空自は営々と、戦闘機の国産開発、国産生産基盤の維持発展を掲げてきました。F-35の導入はそれをやめる、ということです。組織として掲げてきたポリシーの大転換です。更に申せば一定数のF-35導入で、国産兵装も維持は無理となるでしょう。F-35だけ違う装備体系になります。ましてそれが空自戦闘機の半分にでもなれば、搭載兵器の生産数は半減して、ただでさえ高い調達コストは更に高くなります。

空自はF-35の導入は戦闘機、搭載兵器の開発、生産基盤を廃棄することだと説明すべきでした空自が説明しなくても、メディアこれを論点にすべきでしたがほとんどメディアは触れませんでした。

F-35を採用しても戦闘機の国内開発はやっているじゃないか、という声もあるでしょう。ですが、20年以上も生産基盤をほかしておいて、また始めます、そのときゃヨロシク!で、付きあうベンダーがどれけいるでしょうか。それにFXでユーロファイターでも採用してれば技術移転もあり、また各種アップグレードプログラムに参加することできたでしょうし、独自の改良もできたでしょう。そういう機会をメーカーが持てたはずです。

今やっているF-3構想は所詮は根のない徒花でしかない。しかも開発費も含めて単独開発はコスト的にも能力的にも無理です。共同開発しかないでしょう。その経験を積む機会をF-35調達で潰しました。

結局防衛省が選んだのはFACOによる生産ですが、単なる組み立てであり技術移転はなく、コストだけが高くついただけでした。ですから今年度以降、輸入に切り替えられました。ぼくはF-35を導入するならば、輸入でと主張してきましたが、所謂リベラルの人も含めて、ほとんどの人がそのような主張をされていませんでした。

更に申せば選定は出来レースだったということです。

空自は当初F-22を熱望していましたが、米政府はリリースしないだろう、それを何年も待つのは愚かだと申し上げましたがそのとおりとなりました。

これで空自は何年も時間を空費ました。更に申せば、値段も高すぎました。米空軍の調達価格は一機あたり約150億円です。調達数が少ない時の最高単価約360億円でした。

開発費を頭割りにすると、実際の調達コストは約350億円となります。これに輸出用にダウン・グレードする(性能を落とす)ための改良費を加える必要があります。我が国の場合調達ペースが遅いので、恐らく調達単価は400~600億円程度になっていたでしょう。通常の戦闘機の4~6機分の値段です。

とても財務省は許さなかったでしょう。これをほしいと駄々をこねて貴重な時間を食いつぶしました。
F-22もF-35同様に、これを採用することは国内戦闘機の生産基盤のターミネートを意味していました。

しかもF-2の生産数を減らしたので、F-2の生産ライン閉鎖も早くなりました

以下は拙著「国防の死角」からの引用です。

ご案内のように組み立て生産ではコンポーネントは殆ど国産化されません。ですから主契約企業には仕事は落ちますが、下請け企業にはほとんど仕事は回って来ません。F-15J戦闘機のライセンス生産には1500社が関わってきましたが、うち中小企業の比率は8割です(従業員300名以下、または資本金3億円以下)。防衛産業を支えているのはこれら中小企業です。

その中には代用が利かない、オンリーワンの技術をもって企業も少なくありません。大手企業の防衛産業依存率は大抵数パーセント程度ですが、中小企業は防衛依存率が高く3割以上の企業は当たり前で、7割を超える企業も存在します。

F-35を選んだことでその中企業の仕事が多数失われました。既に平成15年(03年)以降、戦闘機生産関連では中小企業を中心に30社以上が、倒産、事業整理を含めて撤退しています。横浜ゴムや住友電工等大手のベンダーも2年ほど前に戦闘機生産から撤退を表明しています。体力に余裕がある大手も戦闘機生産を見限ったのです。

FX商戦が始まる前に、戦闘機生産基盤を維持するか否かについて結論を出しておくべきでした。そうしておけば、関連メーカーはF-2の生産が終わるまでの間に事業転換や新規の事業の開拓を時間がありました。

ところが結論が出たのは、F-2の生産後でした。このタイミングでは仮に他のライセンス生産可能な候補が選ばれても、生産が始まるまで3~4年は仕事がありません。

一旦生産ラインがなくなれば、熟練工を他の部署に振り向ける必要があります。数年後に再開しても配置転換した熟練工を戻すことは困難だと多くの企業がアンケートに答えています。SJAC(日本航空宇宙工業会)が、2011年に発表したレポート「防衛産業の現状 -航空機-」のアンケートによると、「5年間のブランクの後、一旦配置転換した熟練工を戦闘機事業戻せるか」という質問に対して、13社中12社が「不可能」と答えています。また、その間に売り上げの減少によって廃業、倒産する企業も出てくるでしょう。熟練工の多くが50歳代であり、技術の伝承も難しくなります。

防衛省の「戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会」の資料「戦闘機装備品メーカー(ママ)、ヒアリング結果」には、「防衛省の考え方が見えないので会社の方針も立てられない。会社を生かすつもりなのか殺すつもりなのかこの際ハッキリして欲しい」という怨嗟の声を紹介されています。これが戦闘機生産に関わる企業の本音でしょう。防衛省はFX選定における優柔不断で、多くの防衛産業から信頼を失いました。

F-35を選択しての、F3の国内生産の構想が以下に砂上の楼閣か分かるでしょう。

そもそも空自は当時、開発中だったF-35の情報収集すらマトモにやっておらず、他の候補の2機種に関しても精緻な調査もトライアルもやっていませんでした。インド軍ですらもっとマトモにトライアルをやっていますよ。

そして要求仕様もF-35を念頭にかかれておりまた。他の2機種は当馬であり、それを見越して手を挙げなかったダッソーは利口だった、ということになるでしょう。空自の練習機や、救難ヘリコプターの調達も露骨な八百長でした。こういうことを堂々とやっていれば国際社会の信用を失います。信用が大事という社会人の基本的なルールを航空自衛隊は持っていません。
目先の利益のためならば信用をいくら毀損しても構わないというのが航空自衛隊という組織です。

自国の生産基盤も、装備体系もろくに考えずアメリカ空軍と同じ玩具が欲しいと駄々を捏ねているのが航空自衛隊という組織です。

防衛相就任時の森本敏氏(政府インターネットテレビより:編集部)

そしてF-35Aの導入決定時の民主党政権の森本敏大臣は、F-35の開発が遅れてもいい、F-4を地上にとめおけばいくらでも機体寿命は稼げるといいました。それは空軍ではなく航空博物館です。

つまり森本大臣には「時間」という概念がないと言えます。
仮想敵は、なにか事を起こすにしても自分たちが準備万端整えてくれるまで待ってくれる紳士の集団とおもっているのか、あるいは中国の脅威なんぞは実は殆どなかった、航空優勢なんぞ必要ない、どうせ戦争は起こらないと高をくくっていたのでしょう。

また、F-35にしてもなんでVTOLであるB型、海軍型のC型が考慮されなかったのか。
我が国では塩害が大きな問題であり沖縄に配備されたF-15は結構苦労しているという話も聞きます。また海軍型であれば滑走路もより短くて済む。そういう多面的な面からA型が選ばれたようには思えません。

そもそもF-35は開発中の機体であり、パートナーでもない我が国は十分なデータもありませでした。しかも開発は遅延しており、F-4の老朽化は進み、FXの早期の調達・戦力化は必要なはずでした。

欲しい玩具が手に入るまで、「脅威は存在しない」というのであれば、それは事実上、新しい戦闘機は大して必要ない、ということになります。そうであれば戦闘機1機で何が買える、福祉に使えという主張は力を持ちます。

本当は必要ない戦闘機ならば1個飛行隊減らして、その分福祉に回せというのはリーズナブルな意見となります。国防費は国防のために使うものであり、軍人や軍オタが喜ぶ玩具を買うために使うものではありません。

F-35を採用したために、無理やりFXの戦力化を先延ばしにしたのは平和ボケもいいところです。

更に申せば、今回の事故の原因がそうだとはいいませんが、単発戦闘機が、想定される主戦場が洋上であろう空自の戦闘機としてふさわしいのか、今一度議論が必要ではないでしょうか。双発機の方が、エンジンが片方止まっても飛行ができますから洋上での生存性は高いまた機体大きいのでより多くの兵装が搭載できる。事実、米空軍ですらミサイルの搭載量を増やしたF-15の近代化型を採用しました。

一般にステルス機に対して信仰に近いものがあるような気がします。ステルス機といって360度どの方向からも同じステルス性能があるわけでもなく、またステルス性能とトレードオフで搭載兵器が限定され、またその搭載量も限定されます。仮にF-35が全機で2機の中国戦闘機を落とせても、相手が数倍であれば航空優勢は確保できません。戦域に持ってこれらるミサイルの数は大きな戦闘の要因です

また現在の空戦は戦闘機だけで戦うわけではなく早期警戒機や、電子戦機、更には空中給油機、地上のレーダーやネットワーク、海自の護衛艦などのシステムで戦うわけです。高価(維持費を含めて)ステルス機だけを揃えて、これらのアセットに手が回らないでは勝てません。戦車だけあれば陸戦で勝てないのと同じです。

F-35は制空権を維持するためというよりも、ステイル・電子戦能力を用いて切り込み隊に使うべき機体だと思います。そうであれば少数でも構わない。

そのような観点から戦闘機の調達を考えるべきでしょう。ですからぼくはFXのときに開発、生産基盤を維持するのであればユーロファイターを導入し、その生産や近代化で生産基盤を維持しつつ、F-35はその後、開発が完了した後に、F-35B型を導入していずもなどを改良した空母や地上の航空基地を利用する形で少数導入すればいい、また航続距離、搭載量の大きいF-15のさらなる近代化も必要だと主張しました。

更にFXの次にF-35Bを導入するのであれば性能の低い、F-2を早期退役させるという手もあるでしょう。F-2の能力はさほど高いものでなく、維持費はF-15Jよりも高い。しかもネットワーク能力も低くて、米軍との共同作戦では戦域に入れてもらえません。つまり戦力外ということです。ですから、調達機数も減らされました。あれは石破大臣の横暴だということを今だに信じている人がいますが、デマです。「高々大臣風情」に戦闘機を減らす権限はありません。実際P-1開発は石破氏の反対を押し切る形に近い形で開発が決定されました。

つまりF-2の削減は空幕の決定とうことであり、それは能力の不足を空幕が実感していたということでしょう。

であれば早期に退役させて新型機に変更するということも
真剣に検討すべきでした。

これらのことを考えるとFXの選定と空自の戦力ポートフォリオ、防衛生産基盤をマトモに考えたとはいい難いといって差し支えないでしょう。

次の戦闘機を選定するのであれば、どんな形になるのであれ、このような過去の選定の見直して、問題点を洗い出す必要があります。そうでなければまた同じ間違いを繰り返します。それは納税者と政治家の努めであります。

記者クラブメディアは当てになりません。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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