NHK教育「デキナイヲデキルマン」に見る教育行政の失敗

2019年04月21日 06:00

最初に申しあげますが、NHKの「で~きた」を批判する気持ちは1ミリもありません。むしろ必要な番組だと思います。念のため。

NHK「で~きた」HPより

で、この「で~きた」がすごいのです。

各回のテーマを見ても、「へんじ」「すわる」「ろうかはあるく」「ならぶ」「ありがとう」「ごめんなさい」と幼稚園保育園を経た就学児童には、ちょっとあたりまえすぎるのではという事案ばかりです。

ある回では、順番を並ばなかったために、周りに迷惑をかけることによって、結局自分が不利益を被るので、しっかりルールを守ろう!みたいな構成です。

そこにデキナイマンがテンポよく出てきて、飽きっぽい今どきの児童も十分集中してみていられます。10分だけですが(今の子供は同じ番組を10分と見ることができません。スマホ動画の影響でしょうか)。

で、何が言いたいのかと言いますと、じっさいの教育現場では、この程度のことを教えるために、先生がたは多大なリソースを割いているのです。というか、これに子供がいる時間の85%くらいの労力を注いでいる先生もいるでしょう。これは、高学年でも、中学生でもあんまり変わりません。

つまり、授業中座っているとか、静かに話を聞くとか、もっとひどくなると物を盗んではいけないとか、人を殴ってはいけないとかいったルールが身につかないまま小学校に上がってくる子供があまりに多いので、このような番組が求められているのです。

一方、文科省は、2020年の学習指導要領改訂に向けて、鼻息が荒いです。内容は、それこそもうてんこ盛りです。

グローバル人材だから英語を必修化、AI時代だからプログラミングを必修化、答えのない時代だから総合的な学習の時間も残留、道徳は教科化して日本人のよさを涵養しろ、どの教科でも話し合い中心にしてしかも学習内容の定着を図れ、といった理想主義に燃えています。ていうか燃えすぎだろ。延焼するぞ。

このように、文科省と現場の天の川張りのあまりの乖離ができているという現実がある中で、「で~きた」は絶妙に現場のニーズをくみ取っています。

教育に関心のある方はぜひ、「で~きた」を見てほしいと思います。現場は学習指導の改訂どころではなく、こういったことにリソースのほとんどを集中させているのです。

日本の教育行政は、とても頻繁に施策や制度が変わります。入試制度はもちろん、指導要領も思いつきでどんどん付け足されていきます。何がどこまで続くか、まったく予想できません。なにもかもが適当です。それらは成果が出たかどうかも検証されないまま、改革は次々に立ち現れてきます。

教育改革の様子を、片山杜秀先生は、「現場の人間は事務仕事に振り回されて人生が終わってゆく。ソ連がだめになってゆく過程におけるノルマの話に似ています」と述べています(『新冷戦時代の超克』より)。それに従えない先生は陰湿に退職を迫られているようです。

きっと、そういうことなのでしょう。

中沢 良平

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