「バイキング」と「直撃!シンソウ坂上」尾崎豊さんの時代には?

田中 紀子

昨日4月26日のバイキングでびっくり仰天したのは、話題の赤江さんと大吉さんの芝生デート(?)を取り上げた中で、赤江さんが仕事で色々自信がなくなっている悩みを大吉さんに打ち明け、その中で「ピエール瀧さんのことがあってすごくこれはもうやっていけないかもって思うところがあって」と告白されたそうなんですね。

で、それをまた東国原英夫さんが取り上げ、
「ピエール瀧被告がこういうところでも迷惑かけているんだなと思いましたよね。直接被害者がないという人もいますけど、やっぱ被害者は確実にいるんだなと思いましたね。」
と、またしても東国原さんの薬物事犯重大犯罪人説が飛び出し、これは赤江さんが一番ショックだろうな~と思いました。

こんなこと言い出したら、病欠も休職者も加害者扱いですね。
仕事を休んで同僚に負担をかけたら、罪人扱い。
知事にまでなると、国民は文句を言わず働け!という為政者の考えがしみつくのでしょうか?

しかし東国原さんのしつこさ、徹底的に依存症者とその家族を攻撃してくる姿勢には辟易します。
ホント私が有名人なら、太田さんとぜんじろうさんのように直接対決したいところです。

バイキングの視聴率が落ちているという記事も出ていましたが、本当かうそか分からないですけど、
媚びずに高視聴率の『バイキング』、ピエール瀧報道で失速か
もう、この番組なくなったほうが世のためじゃないか?とまで思うようになってきました。
「媚びない」というのは、「人を傷つけていい」ということではないですからね。

そもそも「媚びない」というのは自分より上の人に向かっていくから、その姿が評価されるのであって、自分より下の人、もしくは弱っている人、困っている人、叩かれている人を叩くのは、単なる「弱い者いじめ」ですから勘違いしないで欲しいですよね。

さて、ピエール瀧さんの事件では、度々その扱いのひどさで炎上しているバイキングですが、バイキングのMCをつとめる坂上忍さんの冠番組「直撃!シンソウ坂上」では、4月25日の命日にちなんで、尾崎豊さんを取り上げ、これがまたよい番組だったんですよね。

私も、もちろん尾崎豊さんはドンズバ世代、年齢も1つしか違わないので、その生き方やあのメッセージに熱狂的に惹かれたものです。

尾崎豊さんの曲を生み出す苦悩。
少年が臭いものに蓋をするような大人の生き方を批判する曲を描いてきたのに、自分が大人になり、そして成功者となっていくにつれ、何をメッセージに伝えていくべきか?迷宮に入っていく姿、そしてその後の覚せい剤の使用。
私たちは尾崎さんの、その繊細なガラスのハートを愛していました。

何より驚いたのは、時代の空気感です。
尾崎さんは覚せい剤で逮捕されたのちに、たった一度だけ拒み続けていたTV出演をされたんですね。
それは逮捕からわずか半年後のことでした。

フジテレビ「直撃!シンソウ坂上」(4月25日放送より)

その時に、MCの柴俊夫さんや、古舘 伊知郎さんが

「世間をお騒がせしてしまった、尾崎豊さんなんですけれども、
社会的にもねずいぶん制裁を受けまして、
いろいろ考えてもやはり天性のものが音楽に関してあるものですから、
その才能を発揮して、そしてこういう場で才能を発揮し続けることが、
一番今後の方向としていいんじゃないかと。

それは番組側ももちろんそうですけども、
本人の意志でもある訳ですよね?」

とおっしゃっているんですね。

尾崎さんにとって本意だったかどうかは分からないですけど、贖罪の気持ちの表れがTV出演だったのか、「ご迷惑をおかけしました」とだけおっしゃられ、拘置所の中で作ったという新曲を発表されたのです。

なんと!これこそ本来のメディアのあるべき姿ではないでしょうか?
失敗は失敗として、けれども判決もおり制裁も受けたのだから、
これからは再起を応援していこうじゃないか!というこの時代の空気感。
余裕のあった80年代には、このようにTVも優しさがあふれていたのだ!と愕然としてしまいました。

SNSの発達から、人々は24時間他人の目を気にし、批判を恐れ、無難な生き方を強いられ汲々となっている、そしてそのはけ口を他人のあらさがしに向けていく・・・

そんな現代の闇、弱者叩き、いじめの構図が生まれ、いつしかお茶の間の気軽な番組であったワイドショーまでもそれに追随していき、バイキングのようなモンスター番組生まれ、どんどん増長していったのではないでしょうか?

それにしても「直撃!シンソウ坂上」では、尾崎豊さんという今も衰えることのない人気を博す、伝説のスターをリスペクトし、その苦悩する姿を余すことなく伝えた良番組となっていました。

そこで何よりも疑問に思ったのは、両番組でMCをつとめる坂上忍さんです。
この人は一体、どういうスタンスで薬物問題を扱っているのでしょうか?
ポリシーもしくはご自身のお考えはどこにあるのでしょうか?

一方では、事件の当事者でも何でもない、石野卓球さんにまで謝罪を求め、ピエール瀧さんや電気グルーヴさんの応援団でもある我々をも小馬鹿にし批判する。

ところが、別の番組では同じく覚せい剤の問題を起こした尾崎豊さんに対し、その苦悩を余すことなく伝え、今も尚ファンから愛される姿を放映する。

私なら、こういったダブスタというか二面性を恥ずかしく思いますが、坂上さんは一体どうお考えなのでしょうか?

一度是非坂上さんが薬物問題にどのくらいの知識をお持ちで、どういうスタンスなのか?ご自身のお考えを述べて頂きたいと思います。
これだけ番組で依存症者とその家族を貶め、傷つけ続けているのですから、その位の義務は当然にあると思っております。


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト