「一帯一路」に意欲的な玉城知事:自治体外交の危険な暴走

2019年04月28日 18:00

沖縄県の玉城デニー知事が今月16〜19日に訪中した際、中国の胡春華副首相に対して「『一帯一路』に関する日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と提案していたことが明らかになった。これは26日の定例記者会見で知事が述べたもので、発言を伝えた琉球新報の記事を、筆者がツイッターで論評したところ、1日あまりで4000を超えるRTという予想外に反響に少々驚いた。なぜこれだけの波紋を呼ぶのだろうか。

新聞記事は切り取られた発言もあるだろうから、沖縄県の公式YouTubeチャンネルにアップされている記者会見の全録から関連するくだりも一通り確認してみた。

動画を見ると、過去最多だった昨年度の観光客数の発表を終えたあと、日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の訪中団の一員として参加した活動内容を報告。胡副首相との会談の際に、沖縄と中国の観光交流の促進、双方のIT企業間の連携強化とともに、問題の「一帯一路」構想の沖縄活用を持ちかけたと提案したと確かに述べている(4分54秒〜)。玉城氏によれば、胡副首相は提案についてこう述べたという(太字は筆者)。

日本からの積極的な参加を希望するとともに、沖縄を活用することに賛同する

おそらく中国政府はニンマリだったのではないだろうか。また、琉球新報、沖縄タイムスの記事には記述されていないようだが、先日の北京発の共同電にもあったように、記者会見では、玉城氏は習近平国家主席が6月の大阪G20で訪日する際に、沖縄にも立ち寄るように要請したという。

質疑応答では、地元2紙とは対照的に、玉城県政に厳しい論調の産経新聞記者が、外務省との連携状況や、習主席の訪沖が実現した場合にどのようなことをアピールするのか問い詰めている(15分52秒〜)。玉城知事は、習主席が沖縄県と「友好県省」を締結している中国・福建省と“ゆかり”があることを強調。経済交流を加速させたい意向があるなどと説明している。

習主席の略歴を確認すると、確かに福建省廈門市の副市長や省都・福州市の党委員会書記、福建省長(日本の県知事に相当)などを歴任している。習近平の訪沖についてはそれなりの大義名分にはなろう。

記者会見の事実関係のおさらいはここまでとしたい。

中国に4条件を突きつける安倍政権との“温度差”

官邸サイト:編集部

問題はここからだ。ずいぶんと玉城知事が「前のめり」な気がしてしまうのは、「一帯一路」を巡って日本政府との“温度差”があるからに他ならない。

安倍首相は日本政府が一帯一路に協力する条件として、3月25日の参院予算委員会で①適正融資による対象国の財政健全性②プロジェクトの開放性③透明性④経済性の4つを示している(詳細は産経新聞)。

中国側はこれに対して、「一帯一路の建設は中日が互恵の協力を深めるための新たなプラットフォームとなる」などと引き続き秋波を送っているが、4条件が担保されるのか煮え切らない。そこで安倍首相は24日、G7でいち早く一帯一路に参加表明したイタリアのコンテ首相との首脳会談で4条件について改めて説明するなど、中国をけん制する姿勢は崩していない。

だから、冒頭の私のツイートに対し、左派のネット民が「二階幹事長が音頭取りで、安倍自民が積極的に推進している政策ですよ」などと噛み付いてきたのは事実認識がずれている。積極的であるならどうして条件などを付けようか。

いずれにせよ、外交・安保は国家の専権事項であることを考えれば、玉城知事が今の段階で「『一帯一路』構想の沖縄活用」は早計に過ぎるだろう。ましてや尖閣近海に中国の公船が侵入を繰り返し、沖縄近海で中国海軍の活動が活発化していることなどを合わせみれば、緊張感がないのではないか。

自治体外交の是非:舛添都政のケースに見る明と暗

ただ、そういう筆者のような考えに対し、玉城知事を擁護する左派からは、「日中が緊張するからこそ自治体レベルで善隣外交をしておく意義はある」と反論する人もいるかもしれない。

確かに知事が独自にパイプを使って外交することは悪いことばかりではない。2014年7月には、親韓派で知られる舛添要一都知事(当時)が安倍首相の「日韓関係を改善したい」とのメッセージを携え、朴槿恵大統領(当時)と会談している。その後、日韓関係がさらに今ほど悪くなるとは思わなかったが、その時点でも日韓首脳会談が長く開かれないなど十分に冷え込んでいた。国政と連携することで知事が事態打開に一役買うような場合は、自治体外交の意義もあろう。

舛添知事と朴槿恵大統領の会談(NHKより)

しかし、自治体による外交が独善的になると不具合が目立つ。その舛添知事も、新宿区内の都有地を、都民のニーズがある保育所建設より、韓国人学校への貸与を優先させたことは、のちに舛添氏失脚時の遠因になったとも言える。
(参照:柳ヶ瀬都議が当時アゴラに書いた『舛添知事は、韓国人学校より保育所をつくれ!』)

その点、玉城知事の一帯一路発言は、日本政府の動きとの連携や意思疎通は十分なのだろうか。米軍基地問題を巡って安倍政権との対立を深めているだけに懸念が強い。

玉城県政に融和的な琉球新報ですら前述の記事で、「巨額融資によって債務を抱えるリスクも指摘される同構想だが」と書いているように、問題は山積している。まさかとは思うが、港湾などのインフラ開発や米軍基地に隣接する敷地開発などにおいて、いつの間にか中国政府の意を受けた資本による買収や融資が行われていたなどということがないよう、国もしっかり注視すべきだ。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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