バロンズ:米株高、3%成長でも市場関係者は強気になれず

2019年04月29日 11:30

バロンズ誌、今週はカバーでビッグ・マネー・ポールの調査結果を紹介する。年に2回、4月と10月に金融市場関係者を対象に実施する同調査では、S&P500やナスダックが過去最高値を更新する過程でも、1年先の米株相場に「強気」と回答した割合は49%と、前回2018年10月時点の56%から低下し、約3年ぶりの50%割れを迎えた。とはいえ、米株相場を「割高」と判断する回答者は27%だった一方、「適正」と回答した割合は69%と、共に2015年以来の水準となる。当時、米株相場は上げ渋り、S&P500のリターンは1.4%高にとどまっていた。その他、米株市場の予想、2020年大統領選の見通しなど、気になる調査結果は本誌でご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は過去最高値をつける米株相場に物申す。抄訳は、以下の通り。

米株が最高値更新でも、良い知らせばかりではない理由—It’s Not All Good News for This Record-Setting Stock Market.

S&P500とナスダックは、共に最高値を更新して取引を終えた。おかげで、世界の株式市場ので時価総額が年初来で10兆ドルも増加し、ドイツ銀行のトーステン・スロック首席エコノミストによれば、信用市場は2兆ドルも拡大した。

米株のパフォーマンスはその他地域を凌駕し、S&P500種株価指数に連動するSPDR S&P500 ETF投資信託(SPY)のトータルリターンは4月25日までに年初来で16.7%高、ナスダックに連動するインベスコ QQQ トラスト・シリーズ1 投資信託(QQQ)も23.7%高を遂げた。米国とカナダ以外の先進国の大型株、中型株で構成される iシェアーズ MSCI EAFE ETF(EFA)の12.6%高、新興国の大型および中型株式で構成されるiシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF(EEM)の11.9%高を大きく上回る。

米株相場の力強いパフォーマンスは、2018年10〜12月期の急落後に米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内金利据え置きや資産圧縮停止を表明したために起こり、高利回り債市場の沈静化にも役立った。例えば、動画ストリーミング大手ネットフリックスをみてみよう。同社は前週、22億ドルの投機格級の社債を発行(格付け会社ムーディーズはBa3 、S&PはBB-)、気になる利回りはドル建てで5.375%、ユーロ建てでは3.875%に過ぎない。

一方、ダウは最高値を更新できていない。その理由は信用市場より企業業績にあり、半導体大手インテルは見通しを嫌気され26日に9%急落、複合大手3Mは13%も沈み、下落率はブラック・マンデーを迎えた1987年10月19日以来で最大となった。S&Pグローバルのハワード・シルバーブラット氏が、S&P500構成銘柄のうち2019年9月につけた当時の最高値と現時点を比較し半数が上昇、半数が下落していると指摘する通り、銘柄選びが重要ということになる。かつてのようにFANG銘柄が必ず上昇するとも限らず、フェイスブックやアマゾンが最高値更新まで距離を置く一方、マイクロソフトが時価総額1兆ドルを突破するほか、シスコ・システムズやパッカーなど、かつてのスター達が高リターンを達成する状況だ。

今後も上昇は続くのだろうか?「5月に売り逃げろ(Sell In May And Go Away)」は余りにも有名だが、最近では余り当てにならなくなってきた。ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによれば、ダウの50年間に及ぶ11月1日から4月30日までのリターンは7.55%高で、5月1日から10月31日までは0.31%高だ。しかし、過去5年間でみれば後者のリターンは4.31%高である一方、前者は5.48%高とそれほど大きく変わらない。

米1〜3月期実質GDP成長率は前期比年率3.2%増と、予想外の力強さをみせた。ただし、一時的要因が効いたためで、輸出が3.7%増だった半面、輸入が3.7%減となった結果、純輸出が1.03%ポイント押し上げた。ただ、足元の世界貿易の弱さを踏まえると純輸出が今後も寄与するとは考え難い。その他、今回のGDPでは在庫の寄与度も0.65%ポイントと大きく、政府支出も高速道路などの建設を支えに0.4%ポイント押し上げた。モルガン・スタンレーによれば、純輸出、在庫、政府支出の上振れがなければ、成長率は1.3%増にとどまったという。特に在庫は3期連続で成長を支えてきたため、今後縮小する公算が大きい。

成長率は、まさかの3%超え。

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(作成:My Big Apple NY)

GDPの7割を占める個人消費は前期比年率1.2%増と、前期の2.5%増から鈍化した。政府機関の閉鎖や悪天候、逆資産効果が影響したのだろう。企業支出は知的財産が支えた同2.8%増となり、構築物投資はむしろ低下、機器投資は小幅増にとどまった。インフレもPCEコアが1.3%の上昇と、前期の1.7%から減速しており、一部のエコノミストの間では利下げの必要性を説く。

FF先物市場をみると、12月利下げの織り込み度は63.8%、2020年1月でも68.6%となる。確かに米1〜3月期実質GDP成長率は、一時的要因で上振れしたといっても過言ではないが、それでも景気後退入りが視野に入ってる状況でもない。市場の利下げ期待は、過剰と捉えられよう。

——米1〜3月期実質GDP成長率が3%超えとはいえ、個人消費と企業支出がイマイチでしたね。一時的要因を乗り越え、それぞれ回復するかというと、個人消費には3月の新築住宅販売件数や小売売上高などで明るい兆しがみられるものの、企業支出は各連銀の景況感指数や鉱工業生産を見る限り、強含みに転じる気配に乏しい。Fedは4月30日〜5月1日のFOMCで個人消費の景況感を上方修正する程度で、大方の見通し通り利上げや利下げを示唆するような大転換を図ることはなさそう。少なくとも10連休の最中、FOMCを発火点としてマーケットが荒れるリスクは低いでしょう。

(カバー写真:José Juan ‘Potti’ Luna/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年4月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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