孫正義帝国の行方

2019年05月02日 14:00

孫正義氏の名前を聞いただけで拒否反応する方もいると思いますが、彼の作り出すビジネスへの影響力は破壊的存在になりつつあり、今や、好き嫌いで語れないものがあります。客観的に見れば世界で最も注目される投資家の一人でしょう。日本での評価とギャップはあると思います。そんな孫正義帝国を今日は覗いてみます。

Wikipediaより:編集部

時価総額ではトヨタの22.5兆円に次いで12.7兆円の日本第2位をつけておりますが、個人的には今後、この差はかなり詰まり、さほど遠くない将来に抜き去るとみています。それは孫氏の投資してきている企業群が春を迎え、一斉に花を咲かせるような時期にありそうだからです。

同氏の事業はソフトバンクグループ株式会社(SBG)を通じて行われています。通信事業をするソフトバンク(SB)は3分の2の株式を持つ子会社という関係になります。SBの上場に伴いSBGが3分の1の株式を市場に放出し、2.3兆円がSBGに転がり込んでいます。桁が違います。

SBGは事業会社から投資会社に変貌しており、その中身はいつくかのセグメントに分かれています。ソフトバンク事業、スプリント事業、アーム事業、ヤフー事業、そしてファンド事業などであります。その中でも巨大な事業に育っているのがファンド事業でしょう。そのファンド事業は投資の芽が育ってきていることもあり1年で3倍以上の規模になりつつあり、今後これらの投資先から上場予定のウーバーやウイワーク、スラック、オラ、グラブを含む企業群が続々と表れることからその成長は加速度的になるとみています。

2つのファンドのうちビジョンファンドと称する11兆円のファンドは8割方の投資の確定がなされており、現在ビジョンファンド第2号の設立準備にかかっています。規模は同じ程度の10兆円規模になるだろうとみられています。

なぜ世界がこの投資ファンドに恐れをなしているかといえばその圧倒的資金力であります。第1号ビジョンファンドの未投資資金の数兆円だけでもベンチャービジネス向け投資ファンドの2位以下に4倍以上の差をつけているとされており、同規模の第2号ファンドが出来れば新た生まれるであろう世界で可能性あるビジネスは根こそぎ孫正義氏の傘下になってしまうことすらありえるのです。

もちろん、すべてがこのシナリオ通りに行くわけではありません。しかし、ベンチャー投資は上場した時点で価値が急激に上昇する傾向が強く、その後は上場会社として一定のガバナンスの元、経営のかじ取りが各々の会社で行われていきます。それはアリババでもエヌビーダでもヤフーでもソフトバンクでもそうであります。その点においてあくまでも可能性ですが、私はウォーレンバフェット氏率いるバークシャーハサウェイのテクノロジー版をイメージしています。

一般に未上場会社への投資はリスクが高く、場合によっては10分の1ぐらいの成功確率とも言われている中でなぜ孫氏はこれら時代の要請とも思われる会社を手にできるのでしょうか?一つには投資に対する才能と投資先の将来を見抜く目、もう一つは圧倒的な資金力と信用力だろうと思います。事業家側からすれば孫さんに見込まれたというだけでうれしくなる土壌、つまり、成功と上場への早道切符という期待がそこにあるのだろうと思います。その相思相愛の相乗効果が今のファンド事業を支えているとみてよいでしょう。

弱点は孫氏の判断力が絶大なる権力となっており、孫氏一人の力では支配しきれないほど巨大な帝国と化しつつある点でしょうか?その点においては対外投資だけではなく、世界中の有能な人材を採用し、孫氏の周りを固めていることから内部体制づくりも進んでいるとみています。

同社の株は私も北米市場を通じて取引できます。アメリカのOTCピンク市場で売買することが可能なのです。OTCピンクは日本の方にはなじみがないと思いますが、非上場株などの気配値を扱うカテゴリー的には最も低い市場です。同社株はそれでも直近一日平均26万株程度取引され、5月1日も最高値圏で取引されています。

氏の事業は投資なのでアップダウンは当然あります。しかし、例えばエヌビーダへの投資をめぐっては株価が下落し投資評価損が発生したのに対してリスクヘッジとして同社株のデリバティブで巨額の利益を上げ、評価損を打ち消すなど対応は怠っていません。

孫氏の事業スタイルを見ていると、こういう積極的な攻め方をする経営者は日本には極めて少ない気がします。ニッポン株式会社の新陳代謝と活性化が進みにくい背景の一つなのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年5月2日の記事より転載させていただきました。

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