あっぱれ!薬師寺みちよ先生 日本の薬物依存の不都合な真実

私、IRカジノ法案とギャンブル等依存症対策基本法で、本当に沢山の政治家の先生方と関わりを持たせて頂きましたけど、マジで業界に媚びへつらうことなく、ご自分の保身でもなく、イデオロギー闘争でもなく、話題のネタにご自分のパフォーマンスのために飛びつくのでもなく、真剣に国民のことを考え、自らも学び奮闘して下さる政治家の先生って、500人超の国会議員のうち5人くらいしかいらっしゃらないな・・・と実感しているんですよね。

依存症ネタって、政治家の先生方にとっては何のメリットもありませんからね。
だからどう向き合って下さるかでその先生の神髄がわかっちゃうんですよね。
で、その数少ない本当に信頼できる政治家の先生のお一人が、無所属の参議院議員 薬師寺みちよ先生です。

参議院インターネット中継より

薬師寺先生は、障害者など社会的弱者に対する法案に真摯に向き合っておられ、薬師寺先生の手話でのご質問に、安倍総理が手話で答弁されたこともあったので「あぁあの先生!」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

で、この度、薬師寺先生が日本の薬物依存問題について厚生労働委員会でご質問に立たれ、それはもう見事に日本の薬物依存の大問題について、厚労省にガンガン切りこんで下さったんです。
といっても先生は私のようにガラが悪くなく、上品で可愛らしい先生なのでご質問も理路整然と、しかし国が全然この問題に本気で取り組んでないってことを浮き彫りにして下さったんです。

参議院インターネット中継

参議院インターネット中継で2019年3月14日 厚生労働委員会の薬師寺みちよ先生のところ、皆さん是非ご覧下さい。

で、薬師寺先生は松本俊彦先生らの科研費でのこの調査をベースにご質問下さったのですが、
全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査
この調査以外、国はろくな調査をしてないんですよ。

でもこれ、要は精神科にかかった人の薬物依存の調査なんで、潜在数はもっと沢山いるわけですよ。
で薬師寺先生のご質問の肝も、
「日本では実際は違法薬物より市販薬依存が多いと思われますけど、厚労省はそのこと把握してますか?」
ってことだったんですよね。

で、それに対して厚労省の医薬製薬医療局長は、この松本先生の調査をとりあげ「こんな調査やってます!」って長々と答えた・・・ギャグでしょこれ(笑)
だってこの調査結果は資料として薬師寺先生が提出してるんですよ!それ読みあげるって・・・

何も答えられないから、質問者が提出した資料を読み上げる!?
これ国会だから誤魔化せますけど、一般企業のプレゼンならマジでクビ飛びますよ!厚労省さん。

で、薬師寺先生も「精神科施設にかかった人しか調査していない」「だから現状はわかってないんです」っておっしゃった。
「この精神科にかかってる人の調査だけでも11.6%の人が市販薬を不適切に使ったことがあると出ています。」

で、調査がないのはわかりましたけど「対策はどう考えてますか?」とご質問なさった。
で、それに対して厚労省のこの局長は、
「リスクの高い1類の薬剤については薬剤師が販売し(中略)既往歴等を聞いて適切な販売を確保する仕組みがあります。」
と、これまた「だから何・・・?」というような答弁なわけですよ。

で薬師寺先生も「いや適切に販売されてないからこういう結果が出てるんですよね?」
「しかもセルフメディテーション政策で自分で買って下さいということを推し進めてますよね?」
とおっしゃるわけです。

更につっこんで「一箱以上買う人には理由を聞く。それが若者であったら年齢や氏名を聞くということが義務付けられています。」
「果たしてこの義務が守られているのか?局長いかがですか?」

でこの局長が、こういった販売が適切に行われているか実態を覆面調査を行った結果を発表されたんですが、これがまた驚くべきことに、乱用等の恐れのある医薬品を複数購入しようとした時にその理由を尋ねたのは店舗においては約61%、インターネットでは約37%にとどまっているんです!

更に「コデインを含む咳止め薬をアメリカは18歳未満は使用禁止にしたのに、何故日本はその動きに追随しなかったのか?」
とお尋ねになります。

これに対しこの局長は、
「日本も12歳未満は禁止した。(中略)日本では12歳~18歳未満での中毒や乱用の報告例がない事(中略)」
ということをおっしゃったんですよね。

え~~~~~~~~?????ってなるじゃないですか。乱用の実態がないってね。
この局長も読みあげ、薬師寺先生が添付した、松本先生が行った科研費の調査に乱用の実態が出てるのに報告がない???いやあるって!この調査10代も含まれてるし!

薬師寺先生もここまで厚労省がしどろもどろだと、ちょっと苦笑されておられて、「いや実態ありますよね!?これ科研費ですよ?」的に突っ込まれるという、ギャグ再びの状況。
これにたいして局長が「乱用のえ~、あ~、う~状況を見たことがないあ~、え~、う~、適切に対応を図りたい」って、目を白黒させて必死に逃げきろうとしているんですね。

そういうやりとりを繰り返して、薬師寺先生おそらく心の中であきれ果て、厚生労働大臣に質問するはずじゃなかったんですけど、根本大臣に「乱用されていた実態もあるのに、実態がないとされ対策が取られていない大臣にもお答え頂きたい。」ということを聞かれるんですけど、大臣は一言「しっかり話を聞きたいと思います」で終わり。

ホントみなさんこのやり取り、是非是非このネットで観て下さい。
私は、こんな面白いギャグ国会は初めて観ました!

問題なのは、つまり日本っていうのは、違法薬物について血祭りにあげる分、処方薬や市販薬の依存症が、覚せい剤と同等もしくはそれ以上あるらしいけど調査も行わなければ、対策もろくにやってないし、やる気もないし、報告があがっても「ない」と言い張るわけですよ。

だから、ピエール瀧さんの時でも、他の有名人の違法薬物の逮捕の時でも「日本は厳罰主義だから薬物依存問題が少ない」って、ワイドショーの無知なコメンテーターが騒いでましたけど、実際はそうじゃなく、捕まらない薬物を使っている人が多いだけ、しかも調査もしないから薬物依存が多いか少ないかも分かんない・・・ってのが現状なんですよね。

そして日本は依存症になるものでも、アルコール、ギャンブルそして処方薬・市販薬さらにはゲームといった、既得権を得る「産業」があるものに関しては、極力対策をやらないというズブズブの関係がありますからね。
こうなってくると国家をあげた売人ですよね。

だって違法薬物は国連を筆頭に世界が非犯罪化に流れているのに、日本は「厳罰主義」を貫いているためにですよ、もっとも発見されにくい捕まらない処方薬・市販薬の依存が多い。
そして合法の処方薬・市販薬はチェック機能が働いていなくても、どんどん規制緩和していく・・・
これヤバい匂いがぷんぷんしますよね。

違法薬物を取り締まる「マトリ」も厚労省、合法薬物の処方薬・市販薬の規制緩和をしてるのも厚労省。
変な話だと思いませんか?

ただただスキャンダラスに、末端の違法薬物を使用した有名人を、ヒステリックに叩いてるワイドショーを横目に、もしかしたら「しめしめ」と、ほくそ笑んでる人達がいるかもしれないですよ。

それにしても薬師寺みちよ先生、あっぱれです!
マジで私も勉強になりました。
ありがとうございました!
引き続きどうぞ宜しくお願い致します。


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト