バロンズ:奇妙な相場環境でも、フォースと共にあらんことを

2019年05月05日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーにミレニアル世代の支出と連動する可能性が高い5銘柄を取り上げた。ピュー・リサーチ・センターは、1981〜96年生まれ(28〜36歳、2019年時点)をミレニアル世代と定義し、2020年には同世代が小売売上高の25%、1.4兆ドルを担うとされる。そのミレニアル世代のニーズにマッチした商品をそろえるのはどの企業なのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラムのアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は未曾有の時代にどのように投資すべきかを指南する。抄訳は、以下の通り。

奇妙過ぎるほど奇妙な市場との向き合い方—How to Play This Stranger-Than-Strange Market.

経済の歴史は終焉を迎えたのか?金融メディアの一部では、そのように主張する。政治経済学者フランシス・フクヤマ氏が1989年に世に送り出した”歴史の終わり、歴史の終点に立つ最後の人間(The End Of History And The Last Man)”では、冷戦の終結と共に自由経済と民主主義が勝利したと結論づけられたが、それは時期尚早な見方だったようだ。

ブルームバーグが発行する雑誌”ブルームバーグ・ビジネスウィーク”は、最新のトップ・ストーリーで物価上昇は死に絶えたと主張した。物価の急上昇が失業率を2桁に押し上げた1970年代に反し、物価は米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値である2%を下回って推移し、失業率は4%割れを続けている。

平均時給の伸びが力強さを保つ割に、物価は伸び悩み中。

NFP_wage

作成:My Big Apple NY

何より、経済金融チャンネルのCNBCに出演したベンチャー投資家のチャマス・パリハピティヤ氏いわく、景気後退懸念は過去のものとなりつつある。

中央銀行は、さらに経済をコントロールする策を有する——とは、ヘッジファンド大手ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者であるレイ・ダリオ氏の言葉だ。ダリオ氏は、ゼロ金利政策をMP1、量的緩和策をMP2とし、今後はMP3すなわち現代金融理論(MMT)に相当する財政政策と金融政策が協調する仕組みは不可避と見込む。

米経済の拡大が6月に10年の節目を迎え7月に新たな記録を塗り替える一方で、低インフレとリセッション懸念の後退はサマーズ元財務長官が言うところの”長期停滞(secular stagnation)”の再来を連想させる。確かに、足元の景気拡大は最長となるだろうが、成長率は平均で2.3%増と最も低い

それは、20世紀の活況期が終止符を打ったことも意味する1991年4月から2000年12月までの成長率は、平均で3.8%増だった。当時、中銀が短いサイクルで景気後退を招くことで、経済は逆に力強い成長を取り戻していたわけだ。逆にこうした経済循環を回避すると、成長率は低水準にとどまることになる。

金融緩和策が物価上昇を引き起こすとの警告がある裏側で、日本は日経平均が資産バブル下で1989年12月に過去最高値をつけてから、10年以上にわたって物価の低迷に直面した。米欧での物価水準は足元、2%割れの推移のとどまる。高齢化社会にあることを踏まえれば、賃金の伸びと支出は鈍化しかねない

しかし、安定的な物価がなぜ問題になるのか?経済学者アーヴィング・フィッシャー氏によれば、世界恐慌時にデフレに直面した結果、企業は物価下落局面で固定金利での債務返済を強いられ、賃金を引き下げざるを得ず、負のスパイラルに落ち込んでしまったという。足元、日欧ではマイナス金利の影響で、銀行の利益が損なわれている。だからこそ、前述のダリオ氏はMMTの可能性を説く。

このような状況下、ベンチャー投資家のパリハピティヤ氏は、デフレ下でも強みのある、テクノロジー関連株のような銘柄を選好すべきと指摘する。その他、ボラティリティの低い銘柄も、安定的な配当を生み出す面で投資妙味が高いという。

VIX指数の先物ショート・ポジションは、もはや安定した利益を生み出すものとは想定されていない。2018年2月の米株安は、VIX指数の急上昇に伴い同指数のショートに絡んだポジションが炙り出され、一段安を招いた。今後、どんなポジションが有益となるのかは、バロンズ誌が教えてくれるだろう。


低ボラティリティのレンジ相場では、大手銀行からヘッジファンドまでトレーディング収入を傷つける公算が大きい。米銀大手では利益に対しトレーディング収入の比率が高いゴールドマン・サックスが5四半期ぶりの減益決算を計上、消費者部門として規模の大きなJPモルガン・チェースなどと水を開けられたことが思い出されます。金融と言えば、米国GDPの産業別で2割を占める屋台骨。ここが立ちいかなくなれば、米国経済そのものへの打撃は必至であり、”長期停滞”論があらためて脚光を浴びてもおかしくなりません。果たして、その時期が2020年の米大統領選と被るのか、政治に与える影響も加味しておくべきでしょう。

(カバー写真:V Threepio/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年5月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑