LIXILのM&Aを社外取締役は阻止できただろうか?

5月8日、LIXILでは取締役候補者を決定する指名委員会が開催されるようです。半数程度(過半数?)は独立社外取締役が候補者となるようですが、同社で社外取締役が機能するためには、まず会社としてやるべきことが3つあると思っています。

LIXIL本社(Wikipediaより:編集部)

ひとつは2012年に買収したペルマスティリーザ社(LIXILが買収したイタリアの住宅設備会社)とのシナジー効果がなぜ得られなかったのか検証すべきです(いろいろとネットニュースを調べましたがわかりませんでした)。中国の子会社については粉飾が判明した、ということで理解できましたが、こちらのニュース(投資家向けIR)にあるように、ペルマ社を買収した当時の経営判断としてはとても合理的な戦略だったと思われます。

そこで、まずこの伊子会社買収の問題点を冷静に総括する必要がありそうです。なお、私なりにはライバル会社TOTOの代表者のインタビュー記事(東洋経済オンライン)が参考になるように思いました。

そしてふたつめが、LIXILではこれまでも著名な方々が社外取締役として就任されていましたが、「ペルマスティリーザ買収は正しい判断だったかもしれないが、現状の判断として、事業ポートフォリオの見直しが必要ではないか、ペルマは売却すべきではないか」との意見を誰かが出さなかったのか…という点への回答です。もし出せなかったとすれば、その理由は単に「潮田氏に対する遠慮があった」ということでしょうか。

先日の潮田氏の会見内容からすると、このペルマの売却に関連して潮田氏と瀬戸氏との認識の相違があったようです。しかし、遠慮があったとしても、重要な事業戦略の決定方針で潮田氏と瀬戸氏の対立がたびたび生じていたということ(調査報告書より)であるなら、社外取締役が中心になって経営トップの人事を決定すべきではなかったか。まさか社外取締役がトップ二人による話し合いでの解決を期待していた、ということではなかったのか。そうであるならば、遠慮があったのは潮田氏に対してではなく、むしろ会社に対してではなかったのか。

そして最後に「独立社外取締役の行動指針の策定」です。私には会社側、株主側、どちらの推薦する取締役候補者が選任されるのか予想もつきませんが、いずれにしても「この会社の社外取締役は、どのような役割を期待されているのか、期待された役割をどのような方法で果たしていくのか」選任された時点で明らかにしたうえで「LIXIL独立社外取締役行動規範」を策定し、これを開示することが必要だと考えます。

選任指針は多くの上場会社で策定していますが、行動指針まで策定している会社は少ないのが現状です。これまでLIXILがコンプライしてこなかった独立社外取締役だけの定例会議の実施や筆頭社外取締役の選任もしっかり実行して、社外取締役の独立性を高めることが必要だと思います。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。