米中バトルの行方、株式市場の行方

米中の激しい交渉はアメリカ東部時間の9日に大きな山場を迎え、最悪の場合、10日の午前0時をもって25%という懲罰的関税が中国に課されることになります。今週月曜日に襲った世界の金融市場の激震は前日にトランプ大統領のツイッターで関税引き上げを実行すると呟いたことがきっかけでした。

トランプ氏Facebookより:編集部

NY市場だけ見ると月曜日はその衝撃で朝は460ドル以上下げたものの終値は60ドル強の下げにとどまり、400ドルもリカバーしましたが、その理由は「ブラフだろう」という見方が強かったためです。つまり楽観視。

ところが火曜日は470ドル余り下げます。理由は「あれは本気だ!」だという市場の解釈が伝わったためです。その引き金はダブル ライン キャピタルのジェフリー ガンドラックCEOが「関税引き上げ確率は50%以上ある」と経済専門チャンネルの番組で述べたことが大きく影響しました。

水曜日は下がり、上がり、そしてまた下がりと落ち着きのない相場つきで強弱感が対立していましたが振れ幅はさほどではなく終値も2ドル高と平静を取り戻してきました。

では本当のところはどうなのでしょうか?あくまでも個人的見解ですが、10日の関税引き上げは回避されるのではないかと見ています。25%への関税引き上げとは戦争でいう原爆を落とすようなものでその影響は中国を締め上げるという偏った結果ではなく、世界経済の歯車のみならず国家間の枠組みをも狂わせ、アメリカはブーメラン効果で自国への影響は計り知れないものになるからです。

トランプ大統領は「これで関税が1000億ドル余計に入ってくる」と呟いたそうですが、株価の下落、消費の低迷、中国によるアメリカへの直接間接投資の減退、中国でのアメリカ製品の販売減などマイナス要因を一切加味してません。その価値はその10倍にもなるでしょう。

ところで日本の株式市場はこのガリバー戦争の間に挟まれ、おののき、リスク回避の動きがみられました。機関投資家や海外投資家を中心に様子見を決め込んでいるように感じました。ところが実はマザースや第二部など新興市場では割と強張って(株式専門用語で「つよばる」と読みます)おり、個人投資家を中心に好業績株を買いあさる傾向が強く出ています。

日本時間の水曜日の引け後にトヨタが日経がいう「質の良い業績」を発表するなど、もともとあまり期待度の高くなかった3月決算において企業により濃淡がある発表が出ています。日経平均でみるとテクニカルには売られ過ぎのシグナルが出ており、12月下旬を底に回復基調にあったトレンドが下に突き抜けるかの瀬戸際にあります。

アメリカの9日の動きは10日の東京市場に世界で最も早く直撃します。このインパクトは10連休のリスク以上の衝撃があると思います。しかし、仮に25%関税をかける場合でも一時的なものか、目先が見えない泥沼になるのかで反応は全く違います。逆に合意できる道筋ができれば5-700円程度の急激な戻りがあり得ます。

トランプ大統領と習近平国家主席においてこの関税問題を解決せずしてお互いにメリットは一つもありません。強硬派のライトハイザー通商代表部代表がかなりトランプ大統領に迫ったのが真相でしょう。それはライトハイザー氏の功績への「援護口撃」であったと私はいまだに見方を変えていません。

米中それぞれ思いはあるし、強硬な考え方もあるでしょうが、今はその引き金を引くときではありません。それぐらいの制御はこの二人にはできるはずです。それ以上に令和になって一度も株価が上がらないのでは士気に影響します!

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年5月9日の記事より転載させていただきました。